HANIMEX 35DL ターレット交換レンズ /The Turret Replacement Lenses.

 Hanimexはオーストラリアの写真用品メーカーだった。

1947年に起業。カメラも多く販売していたがOEMであり、日本製が多かった。SEDICやリコーなどがOEM先だ。1989年からM&Aの波にのまれ、最終的にはフジフィルムに飲み込まれた。 


HANIMEX 35DL は、1988年、M&Aにのまれる寸前の発売。
レンズにJapan lens と書いてある。ということは、逆にカメラは日本製ではなさそうだ。ボディに記入はないが、製造は香港だったようである。

特徴は、見ればわかるが、レンズが2本ついている!
昔のムービーカメラのように、回転ターレットを回してレンズ交換ができる構造だ。
なんともワクワクする仕掛けだ。安いものをオークションで買ってみた。

2本のレンズは、広角の34mm f5.6と標準の44mm f8
じっさいに触ってみると、レンズが暗く、2本の焦点距離の差が微妙で突っ込みどころは結構ある。

デザインは結構しっかりしていて、それなりのカメラに見える。でも中身はチープだ。フォーカスは固定焦点。被写体深度を稼ぐしかないので、レンズが暗いわけだ。
露出もシャッターは定速、絞りは2段階。ただし自動ではなく、フラッシュ使用時が開放、それ以外は絞った状態で固定だ。

しっかりしたデザインだけど、中身はトイカメラである。
さて、売りのデュアルレンズである。

レンズはユニットから分解していないので内側は想像だが、LEDを反射させて見るとこんな構成だ。




広角34mmはプラスチックレンズの3群3枚トリプレット構成。

標準44mmもプラスチックレンズで2群2枚。テレフォト気味の構成のようだ。

せっかくのデュアルレンズ、なんで焦点距離の差をもっとつけないのだろうか。


標準側はテレフォト構成気味にして、カメラサイズの可能な限り長いレンズにしようとはしている。反射鏡など使わないシンプルな構成では限界か?

広角は34mmだが、ちゃんとしたトリプレット構成。流用できる中で最も広角なレンズだったのかもしれない。

34mmと44mm、切り替え式なのになぜ差が少ない?と思ったが、ターレット式の構造ではこうなるしかなかった、ということだろう。


このターレットをそのまま使ってEマウントにしよう。

ターレットはそのまま使うとして、せっかく改造するのでフォーカスは合わせたい。フォーカス用ヘリコイドは欲しい。

コンパクトカメラなのでバックフォーカスは短く、ターレット構造を活かすと汎用ヘリコイドは使えない。簡単な回転ヘリコイドをオリジナルで作ることにした。

絞りもそのまま使いたい。オリジナルではフラッシュスイッチと連動していたが、絞りリングに改造しよう。


ターレットの受け、絞り操作、ヘリコイドを3Dプリントする。今まで作ったことのないメカ(ターレット構造)なので、プリント→調整→再プリント→調整→再々プリントと、繰り返すことになった。

作って試写してみると、像が二重だ。横のレンズからの映像が混入している。

別像の混入防止対策をする。マウント部にフレアカッターを設置した。



ターレットなので円筒がずれて見える。オリジナルは横配置だったが持ちにくいので縦配置にした。
一番前側のターレットを回すとレンズ切り替え。その根元には絞りリング(2段階)で、もともとついていた絞りを活かしている。
絞り値をみてみると
34mm f5.6は実際はf6.7くらいだ。絞ってf11
44mm f8は、実際もf8。絞ってf13くらいだった。

フォーカスはレンズ全体を回す回転ヘリコロイド。スペースが短かったので1/4回転ほどで最短撮影距離は1mくらいになった。もともとパンフォーカスなレンズなので、ゾーンフォーカス的な適当さで撮りましょう。



34mm f11と44mm f13。実際、撮ってみると2本のレンズは違う。
使い分けできるのは、おもしろい。
どちらも逆光には弱いが、特に34mmはちょっとの逆光でコントラストが低下し、「ハレ切り」が必要になる。


34mmの開放f5.6 (上)とf11(下)
逆光でなければコントラストはある。この距離なら立体感もあるしハイライトの滲みは面白い。でもシャープさはもう少し欲しい。


44mmの開放 f8 (上)と f13(下)
これもハイライトの滲みがおもしろい。開放だと甘い描写だが、34mmよりもシャープだ。被写体が浮き立つ感じもある。



34mmのトリプレット構成レンズは歪曲収差はほとんどないが、44mmのテレフォト構成レンズには糸巻きの歪曲収差がある。
やはり34mmの描写はあまり良くない。絞っても細部はぼやけて、どこにもフォーカスが無い感じだ。
44mmは絞ればシャープに写る。ただしミニマムなレンズ構成なので色収差はけっこうある。




34mm f11 中距離ならばそこそこ写る。

でも撮って楽しいのは44mmだ。f13
この後はぜんぶ44mm




最後は開放で。44mm f8



34mmと44mm。焦点距離の差は僅かですが、個性のある単焦点レンズなので充分楽しめます。

34mmが3群3枚のレンズ。ちゃんとしたトリプレット構成。

44mmは2群2枚のおもちゃみたいなレンズ構成。でも撮っていて楽しく、よく写ったのは44mmのほうでした。


44mmは、ほとんどトイレンズなので、もちろん収差はあります。大きな糸巻き型の歪曲収差。色収差。球面収差と思われるハイライトの滲み。しかも逆光に弱い。

でもハレ切りすればコントラストはあり、中心部ならばけっこうシャープで立体感のある描写。44mmと、トイレンズにしては長めの焦点距離なこともあり、周辺まで像は崩れずいい感じな画になります。

チープなHANIMEX 35DL 、44mmはおすすめで楽しめます。










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