Fujifilm nexia Q1 ZOOM (2004年発売)
末期に登場した最後のAPSフィルムカメラ
このモデルのベースとなったFujifilm nexia Q1は、2001年APSフィルムの衰退期に遅れて登場したにもかかわらず、シンプルな気軽さが受けてヒットした。このnexia Q1 ZOOMは、nexia Q1のヒットを受けて、APSフィルム末期2004年に登場したズームレンズ高機能版である。
時代はすでにデジタルカメラであり、そんな中でベースとなったnexia Q1がヒットしたのは、シンプルで軽く良く写って安価というバランスだった。デジカメの価格が下がる中での、高機能高価格のバリエーションモデルを追加するのは、かなり無理のある企画だったと思う。
結果ほとんど売れなかったのではないか。売れずに残っているうちにAPSフィルムの販売が終了してしまった。オークション購入したのも未開封箱入りである。
ベースモデルのnexia Q1 は、固定露出固定焦点の極めてシンプルな構造ながら、フラッシュの自動調光と近距離オートフォーカスを組み合わせてそこそこよく写るカメラだっだ。レンズは極めてミニマムな広角22mm f8 2群2枚のプラスチック非球面レンズを搭載していた。
この高機能nexia Q1 ZOOM もシンプル構造のコンセプトはキープはしている。レンズはズームにアップグレードして、広角22mmから望遠44mmまでの2倍ズームとなったが、その構成がなんと2群2枚というのだ。
わずかレンズ2枚の2倍ズームレンズ
懐中電灯じゃあるまいしそんなことがありうるのだろうか。ズームレンズには主に4群ズームと2群ズームの構造があり、シンプルな2群ズームでも、6群6枚が最も少ない構成枚数だと、ニコンレンズ千夜一夜にも書いてある気がする。
それがなんと2枚というのだ。f8-12と暗いとはいえ成り立つのか?それはどんな写りなのだろうか。こんな画期的なレンズなのにカメラがまったく売れなかったので、ほとんど誰も撮っていない (言い過ぎ)。だからネット情報ではまったく分からない。
さらにメーカー作例すら存在していない。(多分)
いつものジャンクではない箱入り新品カメラだが(APSフィルムはもうない)レンズ改造してみよう。
分解するとミニマムなカメラとはいえそれなりに複雑だ。分解してレンズ/カムユニットを取り出す。見てみると、ホントにレンズ2枚で構成されている!
レンズ構成は、こんな感じである。今回、レンズの厚みを測らなかったので、厚さはてきとう。径の割に薄く軽量なレンズだ。プラスチック製の非球面レンズで曲率は複雑、描きにくいのでこれもてきとうである。ビハインド配置の固定絞りに合わせて、2枚とも同じ向きのメニスカスレンズだ。
2群2枚ズームはカムで駆動するが、不思議な動き。見たところズームとフォーカスを兼ねているようだ。小さなカム機構の中に小さなシャッターが入っている。カム構造は安全に分解再組み立てする自信がないのでそのまま分解しない。そのため、レンズの厚さは測れなかった。
さて、このレンズをデジタル用にしてみよう。同じAPSサイズのソニー製のデジタルカメラ、Eマウントに改造する。
レンズのバックフォーカスは充分あるがカムは後ろに伸びていてミラーレスデジカメの内部構造に干渉する。カムの構造を分析する。カムは4段階、収納用の沈胴、広角、標準、望遠になっているようだ。沈胴機構を諦めれば、カットしてギリギリEマウント化できるかも。
カメラ内部干渉に注意しながらギリギリにレンズカムをカットする (あまりおすすめする作業ではない)
カットしたところ、広角域はギリいけそうだ。直進キーは、カムと一緒に切り落としたのでレンズ前側に移設する必要がある。バックフォーカスを確認しながら鏡胴を設計した。鏡胴は3Dプリンターで造る。
さて、Eマウント化が完成。たった2枚レンズのズームとはいかに。フォーカスとズームを兼ねる操作とは、どんな感じか。最後のAPSフィルムカメラの未体験ゾーンにいってみよう。
写りは「凄い」と「酷い」
比較してみると、写る範囲が違う。広角22mm時は狭く実質24mmくらい、望遠44mmの時は広く実質40mmくらいしかない。
絞りと球面収差を活かして、被写界深度を深くしていると思うが、周辺減光も色収差も歪曲も目立たない。良いバランスに収めていて、結構良いレンズなのだ。
Fujifilm nexia Q1 ZOOMは、2つの世界タイトルを持つカメラだ。(ギネス?)
APSフィルム末期に登場した最後のAPSフィルム用カメラ
でもその最少2枚レンズを感じさせないバランスの良い描写を持っている。
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