キヤノネット初代の幻想的なグルグルボケ CANON CANONET 45mm f1.9 A lens for the first-generation “Canonet,” characterized by its dreamlike, swirling bokeh

 1961年、キヤノンのコンパクトカメラ普及機、キヤノネットが発売された。

高級機メーカーのキヤノンが製造し、当時先端の自動露出、明るいf1.9レンズという高機能スペックでありながら、他メーカーのf2.8レンズ機種よりも安い¥18,800-という価格だった。

高級機メーカーによる価格破壊は、キヤノネット・ショックと呼ばれた。これ以降カメラは趣味性よりも価格競争になり、低価格に対応できないメーカーは淘汰された。


そんな初代キヤノネットは、価格がセンセーショナルだったが、カメラ自体もユニークなつくりになっている。

セレン光電池の微弱な発電量で自動露出を実現するため、シャッターストロークで絞りをコントロールする。結果、長くて重いシャッターボタンになっている。

上面はフラットでシンプルデザイン。フィルム巻き上げ関係は底面にレイアウト、フィルムも通常の逆向きで右から左に送る。ボディ上側には、距離計付きファインダーと自動露出のためのメカが配置されるため、上下逆にした合理的なレイアウトなのだろう。操作性は悪くないが、カメラ保護に一般的だったカメラケースが成り立たない。


明るいf1.9のレンズもユニークだ。通常このクラスは、レンズ6枚によるガウス構成が一般的だが、1枚少ない5枚構成。コストダウンしたレンズがどのように写るのか興味がでてきた。

キヤノネットは社会現象になるくらい売れたカメラなので中古もジャンクも多い。中古ジャンクボックスで購入。このレンズをソニーa用の交換レンズに改造する。

合理的なカメラ構造で分解もしやすい。貼り革を剥がしてレンズボードごとレンズを外す。

レンズボード後ろから後部レンズユニットを外してから、ヘリコイドユニットを外す。

前から分解してシャッターの開放化と清掃。レンズのカビ取り。レンズ構成を見るとこんな感じだ。

4群5枚クセノター構成で、かなり頑張ったf1.9の明るさを持つ。どんな写りになるだろうか。

3dプリンターでパーツを作り、フォーカス用のM42ヘリコイド中間リングと組みあわせて交換レンズにする。



a7用の標準レンズができた。さあ、いつものお散歩撮影。

中距離なら開放でもそこそこシャープ。色収差は少しあるけど軽い。


開放f1.9で撮影。近距離になるとボケがグルグルする。
改造レンズは0.4mくらいまで寄れる。元々の最短撮影距離は0.8mなので設計値より寄っている。



開放、ボケは暴れやすいが、同時にフワッとして、幻想的な世界観になる。


これは開放f1.9とf5.6
開放だとフワッとした描写。絞るとぐっとシャープになる。雰囲気が大きく変わり、まるっきり違う写真になる。










絞れば、シャープな描写で鮮やかに写る。キヤノンらしい鮮やかな綺麗な描写。


一世を風靡した初代キヤノネットのレンズは、f1.9の明るさで 通常よりも1枚少ない 5枚構成レンズが特徴です。
1枚少ないコストダウンの描写ですが、通常時はあまり影響なく、よく写ります。
絞り開放で近距離で撮ると、グルグルと暴れながらフワッとボケて、幻想的な描写になります。これは面白い。

描写はキヤノンらしく色鮮やかです。その分(?)立体感は少なめですので、暴れるボケをうまく活用して被写体を背景から浮き立たせるのが、「撮影のキモになる」と考えながら撮影しました。

キヤノネットはシャッター優先の自動露出でしたので、絞り開放で撮ることは少なく、フィルムで撮れば「グルグルボケ」は気にならなかったでしょう。レンズ改造してデジカメで撮影、絞り開放を多用して初めて目立った特徴です。
昔は欠点だったことが、結果の見えるミラーレスなら面白い個性になるというのも興味深いポイントでした。












#オールドレンズ #レンズ改造 #改造レンズ #キヤノネット

Tokina RMC 500mm f8 (TM500) レフレックスレンズ、トキナーとタムロン Reflex Lenses: Tokina and Tamron




1980年代に反射鏡を使ったレフレックスレンズが流行した。超望遠ながら超小型軽量で価格も手頃だった。その一方、レンズ構成の柔軟性に欠点があった。絞り、ズームレンズ化、オートフォーカスといったニーズに対して、レフレックスレンズは充分な対応ができずに、1990年代には売れなくなった。

 当時は数多く売れたので、現在では中古品(持病のカビの生えたジャンク品)が多く流通している。いろいろ難しいけど、小型軽量で超望遠スナップを可能にしてくれる面白いレンズだ。


Tokina RMC 500mm F8  (TM500) 

1980年発売のレフレックスレンズ。重さは500gちょっとで小型軽量。画期的に小型軽量だったTAMRON SP 500mm f8(1979年発売)よりも、さらに小型軽量。なかなかすごい設計だ。どうやってさらに小型軽量にすることができたのか。




TOKINA RMC 500mm f8       


タムロンとトキナー、レンズ構成はすこし似ている。

まず外観から分かることがある。トキナーはレンズ口径が小さいのだ。同じf8なのにタムロン(写真左)のレンズ口径76mmに対してトキナー(右)は口径70mmしかない。

インチキかっていうと、これが単純ではない。レフレックスレンズのfの表記は口径比ではなく、レンズ中央にある副鏡のロスを除いた実効値になっている。タムロンの口径比はおよそf6.6  これで実効f8なのだろう。それに対して口径70mmのトキナーは、f7.14くらいだがもう一つ裏技を使っていて、トキナーの方が少し実焦点距離が短い(スペックの誤差は5%まで許容されている)。タムロンに対して98%くらいなので、口径比f7になる。

実写比較すると微妙に短くて暗いが、気になるほどでは無い。



今回、購入したトキナーは、カビの生えたジャンクだった。レフレックスレンズには持病があって、内部空間にカビが生えやすい。

カビの除去は、カニ目リングで固定された前玉を外すのが最大のミッションになる。レンズに近く、キズつけやすいのだ。同様にカビ玉だったタムロンは「テーブル用の脚ゴム」で回せたが、トキナーは緩み留めしてあって回らない。これを安全に回すのが難問だ。


困った時は工具を作る。

専用カニ目回しを作る。DIYでちょうどよい直径70mmくらいの円柱を探す。

塩ビ水道管に小穴を開けて、クリップの針金でカニ目回しにする。円筒が上手く収まり、安定して作業できた。

カビはアルコールで除去。気分よく撮影だ。


超望遠でストリートスナップ。目が500mmに慣れていないので、なかなか被写体が見つからない。ボケがうるさくなるならないように、背景に気をつかう。


やはりトリやすいのは鳥だな。












トリ撮りスナップが楽しい。

タムロンとの比較でいうと、
・トキナーのほうが小型軽量だけど、差は大きくない。
・タムロンのほうがシャープで解像もする。比較するとトキナーはシャープさは少し落ちて、ピーキングがでにくい。背景からの浮き上がりも弱い。
私のタムロンはバルサムが切れかかっているのに、それでもタムロンのほうが描写する。
タムロンのほうが良いレンズかな。

でも、レフレックスレンズの強みは、なによりも小型軽量なことだ。だからその強みにこだわったトキナーの戦略は間違えていない。
1980年代のブームが去った後、ほぼ絶滅したレフレックスレンズだが、トキナーはまだ生きている。なんと、さらに小型軽量化されて現代でも後継機が発売されているのだ。

TAMRON SP 500mm f8 (55B) レフレックスレンズの得意なこと / Advantages of Reflex Lens

 



レフレックスレンズは1970〜1980年代に流行した反射鏡を使った望遠レンズだ。2枚の鏡で光路が往復、結果、鏡胴が画期的に短くなる。

天体望遠鏡では反射望遠鏡が多く使われる。理由は、鏡胴が短いこともあるが、屈折レンズよりも軽く(ガラスの塊なので製造に大きさの限界がある)、色収差がないことだ。その反射望遠鏡をカメラ用にしたのが、1936年のベルリンオリンピック記録映画だった。そのカメラ用レフレックスレンズは日本でもその後すぐに開発された。(ミヤニ式、フジナミ式)


レフレックスレンズは、望遠レンズの最大の敵: 色収差がないのが魅力だが、それ以外の収差補正は難しい。高性能な天体望遠鏡では、高精度の非球面鏡をつかうが、高価になりすぎる。

コストを考えると球面鏡で、球面・コマ収差や像面湾曲を補正する屈折レンズと組み合わせる。収差補正にはそれなりの大きさが必要で、手軽に持ち歩く大きさにはならなかった。

(1969年に発売されたReflex-NIKKOR 500mm F8は重さ1㎏ある)

そんなレフレックスレンズを、一気に変えたのが1979年発売のTAMRON SP 500mm f8  (55B) だ。収差補正レンズの裏面を反射鏡にするなど、屈折レンズ設計の工夫で、重さ、サイズともに従来の2/3まで小さくした。長さ100mm重さ600g以下の小ささは魅力的で、手軽な超望遠ニーズにマッチした。

TAMRON SP 500mm f8  (55B) は、描写もよくヒットした。途中マイナーチェンジ (55BB)  しながら2006年まで生産され、現在でも中古品が多く流通している。


購入したのはカビ、バルサム切れのジャンク品。レンズ構成は、大きなレンズの中心部に小さなレンズが貼り付けられている。そのレンズ用接着剤(バルサム)がはがれてくるのは持病のようだ。まだなんとかレンズは張り付いているが、そのうち「ガチャン」とレンズ鏡胴内で崩落するのだろうか?


レフレックスレンズの特徴は往復する光路にあるが、それゆえに迷光によるフレアが問題になる。このレンズはバルサムが切れかかっていることもあって、できるだけ大きなフードが欲しい。購入時にフードがついてこなかったので、すっぽりとかぶさる大きさのものを自作した。本当は黒色のほうがいいとは思います。

カビが生えやすいのもレフレックスレンズの特徴だが、裏面鏡でカビはガラス面になるので除去しやすい。カビはカビキラーで除去して、さあ撮影だ。



レフレックスレンズの撮影は難しい。被写界深度が極端に浅くフォーカスが合わない。

口径比はf8となっているが、実は違う。口径76mmなのでf6.6くらいだ。f8というのは、レンズ中心部が副鏡で使えないので、その分を割り引いた実効値がf8相当という意味だ。

だから被写界深度はf6.6同等で、フォーカス面はとにかく薄い。

手振れ防止のない超望遠500mmもキツイ。画面が揺れるので拡大フォーカスはできない。ピーキングを頼りに、シャッターを数打つスタイルになる。





レフレックスレンズはドーナツ型のボケになる。中心付近はドーナツだが、周辺になると口径食で「C」型になる。

背景は2線ボケだ。細かいととてもうるさくなるが、シンプルな背景だと、絵画的になっておもしろい。


中から近距離で撮ると、背景も大きくボケて被写体が引き立つ。コントラストもよくシャープに見える。


距離が離れると、コントラストも落ちた感じで、あまりシャープにみえない。背景のボケがうるさく被写体が浮き上がらない。








当たり前なんですが、超望遠500mmは、見たいものを拡大して切り取ります。普段のストリートスナップとは違いました。

近所の公園での鳥スナップが手軽な超望遠ならではで、面白く撮れました。鳥は顔に表情がない(顔の筋肉がない)ということですが、サギを見ていると真剣なハンティングとのんびりリラックス、身体全体に表情があってなかなか可愛いです。


レフレックスレンズ全般に言えることかもしれませんが、TAMRON SP 500mmは中近距離が得意な印象でした。その距離ならコントラストもよく、背景も大きくボケて被写体が浮き上がります。

いっぽう、遠距離は苦手かもしれません。被写界深度が浅いので、背景はパンフォーカスにはなりにくく、中途半端にボケます。ガサガサとうるさくなりがちで被写体も浮き上がりません。

オートフォーカスも手振れ補正もない超望遠オールドレンズですが、小型軽量なので気軽にお散歩に持っていけます。撮影はピーキーですが、ツボにはまればよい画が得られます。フィルム時代とは違って、デジタルなら感度オートで連写できるようにもなりました。手軽なお散歩での鳥スナップ撮影は、けっこう楽しめました。







#オールドレンズ #ミラーレンズ #レフレックスレンズ