YASHICA 8 : 8mmフィルム シネカメラ をデジタル化、WEBカメラにする。8mm film cine camera to be digitized and used as a web camera.


1950年代の8mmシネカメラは、ズームレンズの普及前なので単焦点レンズがついている。レンズは、ターレットで回転交換できる独特の形をしていた。

8mmフィルムはフォーマットサイズが3.3×4.5mmの極小サイズ。レンズも6.5mm  13mm   38mm と小さく、標準的なものでもf1.9~f1.4で、明るく高性能だ。


そのたたずまいの面白さと高性能なレンズを活用するために、デジタル改造したい。手軽な改造として、WEBカメラの中身を移植することにした。

WEBカメラで一般的な1/3インチセンサーは3.6×4.8mm。8mmフィルムとほとんど同じサイズである。


今回ロジクール(Logitech )のC600を使った。2009年発売の200万画素CMOSセンサーモデルだ。ボディがコンパクトなので基板も小さく、縦長の8mmカメラに収まるかもしれない。

スマホ外付けカメラとして改造したモノの再改造になる。



球体のWEBカメラ、C600から基板を外す。基板についていたレンズを外すとCMOSセンサーに赤外線センサーがついている。フィルターがセンサーについていると改造が楽だ。


もともと角を落としたミニマムな基板だが、8mmカメラに収めるにはサイズがギリギリなのでさらに落とせるところを落とす。

一方、ジャンクで買ったYashica-8からはシャッターとフィルム送りの機構を外す。フィルムがあったちょうどよい場所にセンサー基板を置けばWEBカメラになる。




ちょっとだけボディ内に収まらなかったので、3Dプリンターでカバーを作る。



Yashica 8は1957年発売。8mmシネカメラ初期の規格で、たくさん売れたのだろう、オークションでも最もよく見る機種の一つである。今回の改造で雰囲気のあるWEBカメラになった。Dマウントなので、好きなオールド シネレンズが交換しながら使える。

通常のWEBカメラは広角レンズがついているが、8mmフィルムカメラでは6.5mmでも標準画角、13mmは中望遠の画角になる。昔のシネ撮影は画角が狭かった。



YASHICA Claston 6.5mm f1.4
明るいレンズだが固定焦点。近距離を撮る時はマウントを緩めてフォーカスすることになる。

センサーサイズは小さく高感度は得意ではない。Webカメラは室内撮影なので、なるべく明るいレンズが良い。私の環境だとf1.9は暗く、f1.4が欲しくなる。


Dマウントの6.5mmは最も広角のレンズで、レトロフォーカスのレンズ構成。開放f1.4だとフレアがかった少し甘い描写になる。もっともWeb会議で自分をアップで撮る分には、ちょうど良いくらいだ。


ひとつ絞ってf2、フレアは消えてシャープになった。モノ撮りするなら少し絞った方が良い。

WEBカメラのセンサーは、簡単に白飛びしますね。



YASHICA Claston 13mm f1.4
カメラは被写体で、今回のレンズとは関係ない。DiMAGE7 かっこよかったな。今持つとデザインに気合が入りすぎていて、気恥ずかしい気もする。

8mmでは標準と言われる13mmだが、中望遠の画角で室内には狭い。開放f1.4から描写は悪くない。背景もボケる。


少し絞ると描写は良くなる。


開放f1.4 ボケのフレアーは良いが、白飛びしすぎ。


f2 少し絞ればフレアーは消える。
赤もつぶれやすい。WEBカメラのセンサーはコントラストの小さい屋内用ですね。



今回の改造の目的は、味気ないWEBカメラの外観と描写を、エモーションあふれるものにすることです。

仕事環境に「クラシックカメラ改造WEBカメラ」を置くと、気分が盛り上がります。ターレットでレンズ交換もたのしい(実用的には、中望遠画角の13mmはほとんど使わない)

前に改造したモノよりも、センサーサイズが気持ち大きく、高感度も強いので使いやすくなりました。(以前の改造。基板が大きくはみ出している)

カメラのファインダーも使えるのですが、フォーカスを見るにはPC画面が必要で、撮影の機動性は悪いです。結果、一般撮影は難しくWEBカメラ専用になっています。

描写は、PC内蔵の広角レンズに比べて背景もボケます。6.5mmよりも13mmのほうがシャープでメリハリがあってよいのですが、画角が狭くあまり実用には適しません。

13mmを標準にするにはセンサーサイズ1/2インチくらいのWEBカメラがよさそうです。(レンズのイメージサークルが充分に大きければ、ですが)
そんなWEBカメラが手に入ったらまた改造しましょう。




















PENTAX-110 50mm f2.8 コンパクトできれいに写る、お散歩用の中望遠レンズ。Compact and beautiful, medium telephoto lens for walking around.



小さな110フィルムの名機ペンタックス オート110。その交換レンズのなかで、中望遠の50mm f2.8はかなり気に入っているレンズだ。

とてもコンパクトなサイズで、レンズ構成は5群5枚のクセノタータイプ。



通常はレンズ構成の中心に絞りをレイアウトするが、小さなペンタックス オート110では、システムの簡略化のために、シャッター兼用の絞りが後ろのカメラ内に設定されていた。

光束は、後ろ絞りだとレンズ前方に向かって広がるので、前群は大きなレンズが必要になる。構成図をみると、前群は厚みもあるレンズで、なんだかよく写りそうだ。

今回もマウントアダプターによるデジタル撮影。110フィルムよりも、画像サイズが一回り大きなAPSデジタルで撮影する。

レンズのイメージサークルは大きく、APSをしっかりカバーしている。自作したマウントアダプターは、開放f2.8のほかにf5.6の絞りをつけた。(アダプターについて)

ビハインド絞りの影響で、絞ると周辺が減光する。






最短撮影距離は0.9mと、遠いので、近距離ヘリコイド付きのアダプターが使いやすい。最短撮影距離より寄っても、描写は良いようだ。
花はペンタックスらしい鮮やかな発色。背景はバブルボケで、2線ボケ。気をつけないとうるさくなる。







背景は2線ボケだが、前景ボケはスムーズだ。
球面収差が過剰補正のレンズ特性で、その分描写はシャープになる。






本来の110フィルムでは100mm相当になる中望遠レンズですが、ひとまわり大きなAPSデジタルでも75mm相当として使えるイメージサークルがあります。
お散歩スナップにはこのくらいが使いやすい。

装着にはマウントアダプターを使います。ただし絞りが無く開放による撮影になること、望遠レンズでは最短撮影距離が遠いという欠点があります。
私は、絞りf5.6切り替え、近接ヘリコイド内臓のマウントアダプターを自作して対応しています。(詳しくこちら)

色鮮やかでシャープな描写が気持ちの良いレンズです。
明るいレンズの多い50mmですが、開放でf2.8。けっして明るくないレンズですが、被写体に寄れれば、背景を大きくぼかすことができます。
ボケは個性的です。ボケのエッジが強調されて、点光源はシャボンのようなバブルボケになります。いわゆる2線ボケになりやすく、撮影では背景に気を使いました。
ボケはざわつきやすいですが、フォーカスの合った被写体はシャープに浮き上がるので、欠点というより個性かな、と思います。そんな描写を活かして使いこなしたいレンズでした。















(たぶん) セディック製テッサーは優しくて良い感じ。POCKET FUJICA AW / FUJINON 20mm f4 : Sedic (maybe) made tessar lens is nice and gentle.



110フィルム は、小さな映画用16mmフィルムをベースに開発され、巻取りまで一体のカートリッジになっている。

フィルムに半分カメラが付いているようなものだから、110フィルムカメラの構造は簡単だ。簡単だからメーカーが参入しやすいが、製品の特徴が弱いと価格競争になって利益が得にくくもなる。

 

セディック はそんな110フィルム用カメラを得意としたメーカーだ。小回りのきく設計を活かして、さまざまなトイカメラや、相手先にあわせてデザインしたOEM生産を得意にしていた。

調べてみると、コダックが初めて110フィルムを発明・販売した1972年には110カメラを発売してる。

https://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?no=103310371322&c=&y1=&y2=&id=&pref=&city=&org=&word=&p=655

OEM先はHANIMEXフジフィルムが多く、同じ基本設計のカメラが結構ある。35mmフィルムになるが独創アイデア満載の簡易一眼レフFUJICA ST-Fもその一つだ。


1980年代になると35mmフィルムカメラの自動化小型化が進んで、110カメラは競争力がなくなってくる。

残された「簡単な構造」を武器にして、1986年にはカメラ付きフィルム「写ルンです」がヒット。初代モデルは110フィルム使用でこれもセディックが開発したようだ。

http://oboegaki-no-oboegaki.blogspot.com/2020/05/blog-post.html

ところがニーズがあると分かったところで「写ルンです」はすぐにフジフイルム内製にシフト、翌1987年には写りの良い35mmフィルム化した。

結局、「写ルンです」の新型が出るまでが最後の110フィルムのヒットカメラで、その後ニーズは無くなってしまう。このタイミングでセディックは倒産してしまったようである。


今回の POCKET FUJICA AW は1979年製。

セディックのOEM製品だ。

レンズは少し広角の20mm。たぶん同じ中身のセディック版では20.5mmとなっていて、35mmフィルム換算で準標準41mmくらいである。

カートリッジ・フィルムなので、フィルム室を遮光設計する必要がない。簡単なつくりだ。


FUJINON 20mm f4

3群4枚のテッサータイプ。今回は以前改造したモノのリニューアルを行う。以前のものは鏡胴設計に欠点があって壊れてしまったのだ。


分解して取り出したレンズに、3Dプリンターで製作した鏡胴を組み合わせる。フォーカスヘリコイドも組み込んである。今回は前よりもスマートにできた。

110フィルムとマイクロフォーサーズは、画像サイズがほぼ同じになるので、レンズ改造の相性が良い。カメラのサイズ感もほぼ同じだが、大柄のFUJICAに対してクラス最小のGM1のほうがかえって小さい。

小さいので気軽に持ち運べる。開放だと周辺画質が苦しいレンズなのでf5.6に絞ってある。被写界深度も深いので、フォーカスも適当に気軽に撮れる。


絞りf5.6でも、クローズアップすれば背景はボケる。均質にはボケないでザワザワする感じだ。



オリジナルのフォーカスヘリコイドで、20㎝くらいまで寄れるようになった。テッサーは距離変動に強いレンズ構成なこともあり、結構ちゃんと写る。













概算40mm相当の準広角レンズは、気軽なストリートスナップで気持ち良く撮れる。
逆光には弱く、画面全体がフレアになりやすい。クリアに撮るにはフードはあった方が良さそうだ。


テッサー構成のレンズは、コントラストが強くなりやすいが、このセディック製テッサーは優しい描写。それほどシャープではないけど良い感じに写る。

今回の改造では、周辺部の画質向上のために、開放f4のレンズにf5.6の固定絞りをつけた。
これでも微妙に背景をぼかせるのだが、フォーカスの合っていないところはザワザワとしているのが欠点。パンフォーカスにするために、可変で絞れる機構が欲しくなった。


あまり評価されないレンズですが、マイクロフォーサーズのデジカメと組み合わせると、コンパクトで気持ち良く撮れます。Fujica ST-Fも良いレンズでしたので、セディックは3群4枚構成のテッサータイプのレンズを得意にしていたのでしょう。
余談ですがOEM元のフジフイルムは、テッサー構成をあまり採用せず、レンズは貼り合わせのない4群4枚の独自構成を多用していました。スペックチェックも面白いものです。