TARON VR/TARONAR 45mm f2 よく写るTARONARのなぞ  The Mystery of TARONAR's Excellent Image Quality

 



およそ70年前のレンズ固定のカメラ、TARON 35シリーズは、一流メーカーではなかったが写りの良さは評価されていた。レンズは自社のTARONAR銘だが、製造は他社によるOEMである。そのレンズの素性を探る。


1958年製 TARON 35 III のレンズ、TARONAR C 4.5cm f1.9はZUNOW製であった。

(こちらで解明しています)



TARON35シリーズとそのレンズ ( f2.8 レンズを除く)


1955      TARON 35/ Tomioka Lausar 4.5cm f2.8 (富岡光学)
1957        TARON 35 II /TAMRON 4.2cm f1.9 (タムロン/泰成光学)


1958 
       TARON 35 III /TARONAR C 4.2cm f1.9 (銘板デザイン変更 ¥18,000)
                       (タムロン/泰成光学?)

       9月?       TARON 35 III (後期型)/  TARONAR C 4.5cm f1.9 
                                                                                           (銘板デザイン変更 ズノー製)

1959
         1月     TARON VR /TARONAR F.C 45mm f2 (銘板デザイン変更 ¥16,800)
       10月?    TARON V18 /TARONAR F.C 45mm f1.8 
                         TARON VL /TARONAR F.C 45mm f1.8 (露出計搭載 ¥19,300)
       11月        日本光測機からタロンに社名変更


1960 
       11月      TARON Eye /TARONAR F.C 45mm f1.8 (¥18,200)


1961     (1月 ズノー 倒産)
                      TARON Eyemax /TARONAR 45mm f1.8 (銘板デザイン変更)
1962       TARON MARQUIS /TARONAR 45mm f1.8 (¥15,900)

1963       TARON AUTO EE / TARONAR 45mm f1.8(自動露出 ¥18,000)





今回のレンズは、1959年1月に発売された 
TARON VR  /TARONAR   F.C 45mm f2 
前年9月に発売されたばかりのTARON III /TARONAR   F.C 45mm f1.9 に対して、わずか5か月後に f2 レンズを出した理由はなんだろう。

ジャンクのTARON VRを手に入れた。
よく売れたのだろう、中古は多くある。造りは悪くないと思うのだが、カチッとした精度感は感じない。不動のジャンクだからか。




分解してレンズの素性はすぐに分かった。ZUNOWである。


ひとつ前のモデルTARONAR 4.5㎝ f1.9 (ZUNOW製) と全く同じレンズなのだ。

シャッターが変更になっているが、レンズユニットは全く同じである

はずした後群ユニットも同じ。

絞りはf2までしか開かないようにしてある。シャッターユニットは違うが、レンズは同じ。
f1.9のレンズと改造方法も同じ。同じように改造レンズができた。


TARONARの絞りユニットは円形に近い贅沢な10枚絞りだが、今回のレンズは絞りが一枚不調で、歪な9角形になりやすい。でも、大好きなズノーだ。さあ撮影。


f2 開放 フレアがかかって柔らかい描写。隅まで線細く解像している。

これも開放 f2 距離によって、背景ボケがグルグルする。鎖にはわずかに色収差。
TARON 35IIIのf1.9レンズと同じである。


f2 開放 撮影距離は0.5mくらいで、設計値よりも近いが、しっかりと解像していて立体感もある。背景はグルグルボケにフレアが纏う。

f2.8 一つ絞ると、ボケは落ち着く。


色気のある立体感。やっぱりズノーは良いなあ。

開放 f2 ではグルグルボケが発生しやすいが、フレアをまとって主張しすぎない。フォーカスしたところも優しい描写だが立体感があって浮き上がる。









ZUNOW製 TARONAR 45mm f2、立体感があって、艶めかしい色気が魅力的な描写です。
フォーカスしたところの線は細めで充分にシャープ、柔らかい背景ボケから被写体が浮き上がります。
開放 f2 では背景ボケがグルグルと回りやすく、フレアをまとった柔らかいボケです。f2.8に絞るとボケは落ち着きます。

開放の f1.9 と f2 の違いは、撮り比べましたが誤差のようなものですね。差はあるかないかで、露出もほとんど変わりません。




さてTARONAR 45mm f2、せっかくの f1.9 レンズをなんでスペックを落としたのだろうか。

1955年から始まったカメラブームは、1950年代後半になると供給過剰で、カメラは売れなくなってきたらしい。TARON 35 IIIも売れ行きが悪くなって、より低価格のTARON VRを販売したのだろう。

前モデルのTARON 35 III  /TARONAR 4.5㎝ f1.9 も売れ残っていて販売中だから、値段を下げたTARON VRとスペック差をつけたい。そういう理由で「f2」 にレンズスペックを下げたのではないだろうか。

そして9か月後、1959年10月?に TARON V18 /TARONAR  F.C 45mm  f1.8が発売になる。
今度は f1.8 にスペックがあがった。次はこのレンズの素性を調べたい。










#オールドレンズ #オールドカメラ #レンズ改造 #改造レンズ #ZUNOW

絞りが効いてコンパクト、楽しめるレンズ F.Zuiko 32mm f1.9 (OLYMPUS PEN D2 ) : A compact lens that lets you enjoy the effects of aperture

 



35mmフィルムのハーフサイズカメラは、1959年、オリンパスPENが最初に大ヒットした。大ヒットをうけてモデルも追加されていく。

当時は自動露出が普及し始めた時代でもあり、自動露出のPEN  EEが1961年に追加。そして、1962年にはデラックスな高級機、PEN  Dが追加された。

オリンパスの考えた高級機は自動露出ではなく、大口径レンズを持ったフルマニュアル露出機であった。


他社もライバル機を展開したが、高級機は高機能機であり、自動露出を搭載している。でもオリンパスはD、D2、D3の3世代にわたって、1967年のEEDになるまで、フルマニュアルを通した。

フルマニュアルだと、レンズの絞りが違うのだ。自動露出機は簡易的な2枚絞りになることが多いが、マニュアル機ならば、ちゃんとした絞りが使える。(Dシリーズは5枚絞り)

簡易的な2枚絞りでは、開放以外は、壊滅的に酷いボケになってしまう。
オリンパス Pen Dシリーズは、写りにこだわった手ごろな高級機だった。



OLYMPUS PEN D2 
1964年発売の2代目。レンズは1代目と同じF.Zuiko 32mm f1.9 
ダブルガウス4群6枚構成。構成図は雑誌広告からトレース。

ジャンクカメラからレンズを分離、Eマウント化した。最短撮影距離もストッパーの加工で短縮できて、0.4mくらいまで寄れるようになった。
これが大口径ハーフサイズレンズでは唯一無二?のキチンとした5枚絞り (一眼レフのPEN Fのレンズは除いて) 
大口径のボケを活かすには重要なポイントだ。

今回は、こんな出で立ちで撮影している。
2011年発売のNEX-C3
小さくて軽く中古も安い。ハーフカメラのレンズにピッタリ。
私にはグリップが小さく持ちにくかったので、3Dプリンターで新作した。車のノーズブラ風でイメージ一新。
悪くないカメラだけど、コントロール用十字キーの不調は持病のようだ。(いわゆるソニータイマーか)


開放 f1.9 線の細い繊細な写り。全体にフレアがかかって甘く見える。

クサリは色収差が出やすいが、良く修正されているほうだろう。背景のボケも崩れないで、何とか耐えている。


立体感ある写りはいい感じ。




f2.8 5枚絞りの形が背景に見える。2枚絞りのレンズではこんな写真は撮れない。

















F.Zuiko 32mm f1.9 は、開放f1.9ではフレアがかった柔らかい写り。立体感のある写りです。そしてちょっと絞ればシャープになります。シャープさとボケのバランスが良いf2.8をけっこう使いました。

オールドレンズは、レンズ個性が明確にでる絞り開放で撮影しがちですが、絞り効果を楽しむのも乙なものです。

コンパクトなAPSデジタルカメラにマッチした、絞りの効くオールドレンズは以外と少ないです。OLYMPUS PEN Dシリーズの改造レンズは装着しても小さく、写りも良いので楽しめます。私の中ではお気に入りの一本です。













#オールドレンズ #オールドカメラ #レンズ改造 #改造レンズ

タロン35III (MX) タムロン - ソニー - ズノーとの関係   / The Relationship Between TARON 35III - TAMRON - SONY - ZUNOW


 2026年7月30日 

タムロンは、大株主のソニーから子会社化提案を受けた。

タムロンは高倍率ズームレンズの設計製造に強みを持つレンズメーカーで、ソニーやニコンなどの純正レンズも製造している。ソニーによるタムロンの子会社化は、映像システムの強化を狙った動きなのだろう。はたしてどうなるか。



さて、今回のテーマはタムロンではなく「タロン」である。

始まりは第二次世界大戦中の1943年発売された2眼レフTAROFLEXで、評価の高いカメラだった。ブランド名TAROは「太郎」由来だろうか。

戦後になると「太郎?」の子供たちが日本光測器工業 (1959年にタロンに社名変更  ) を起こし、カメラ用のシャッターを製造した。製品のNKSシャッターは、当時多くのカメラに組み込まれた。

1955年 TARON 35 発売。カメラ製造に軸足を移す。1955年は35mmフィルムカメラが数多く生まれた年であった。

TARONシリーズのモデル名と搭載するレンズをまとめてみる。


1955 TARON 35        Tomioka Lausar 4.5cm f2.8  (富岡光学)

1957   TARON 35 II     TAMRON    4.2cm   f1.9        (タムロン/泰成光学)

1958   TARON 35 III    TARONAR C  4.2cm   f1.9    (銘板デザイン変更)


   (1958  9月?にレンズ変更) TARONAR C  4.5cm   f1.9    (銘板デザイン変更)

                                          TARONAR C  4.5cm   f2.8      (同上)


1959    TARON 35 V    (VR,VRゼブラ,VR-II,V18,VL )    

                                            TARONAR  F.C 45mm   f1.8   (銘板デザイン変更)

                                            TARONAR  F.C 45mm   f2     (同上)

                                            TARONAR  F.C 45mm   f2.8   (同上)


TARON35シリーズ5世代と、そのレンズである。

1957年の TARON 35 II のレンズは「TAMRON」、タムロン/泰成光学製だ。

タムロン(泰成光学)は1950年に創業、レンズ研磨の下請けから始まった。当時、タロンとの関係は深かったようで、「タムロン」の由来は、設計者:田村右兵衛 氏の「タムラ」+「タロン」らしい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%A0%E3%83%AD%E3%83%B3 

タムロンの歴史では、TAMRONレンズは一眼レフ用交換レンズからになっていて、TARON35 II のレンズTAMRON 4.2㎝ f1.9 は登場しない。でもこれが最初のタムロンレンズだと思う。

名前の由来も含めて、隠したい歴史なのかもしれない。

 

1958年のTARON35III ではレンズがTARONAR銘に変わる。レンズは同じく4.2cm f1.9だったが1958年途中でモデルチェンジ、名前はIII型のまま4.5cm f1.9とf2.8になっている。

次のV型(1959年)はレンズが3種、ボディも多くのバリエーションが存在する。

銘板デザインがモデル世代ごとに違うので、レンズ製造メーカーが気になる。


タロンは、多くのカメラを産み出しながら多角経営化も進めた。1960年代後半にカメラ製造から撤退しながらも、ソニーのテープレコーダー等の生産も行うことで生き残る。

1972年にソニーの子会社化、開発製造部門は吸収された。

(吸収されなかった部分も「柳原コーポレーション」として現在まで存続している。その事業経歴を参考にした)


1958年製 TARON 35 III  モデルチェンジ(レンズ変更)後

故障したジャンクを手に入れる。

レンズのTARONAR 4.5cm f1.9が気になっていた。

TARON35 II のTAMRONレンズからTARONARに変更になっていて、製造元はどこだろう?


レンズを外してデジタル用にEマウント改造する。

レンズユニットを分解するが、前群ユニットがどうやっても外れない。誰かが接着剤で固着させたみたいだ。

分解できないとレンズシャッターの開放化ができない。仕方がない。バルブシャッターで開いたままになるように、3Dプリンターでパーツを作る。果たしてずっと開いていてくれるか?どこかでストッパーが外れて閉じそう。

オリジナルのヘリコイドは外して、ヘリコイド中間リングを使う。この方が簡単で最短撮影距離も短い。

絞りは10枚で、円形絞りになる。高級だ。

Eマウント化して初代a7に装着。

TARONはソニーに吸収されたから関係がつながっている。世代を超えたマッチアップだ。



f1.9開放の描写。中心部はシャープ。周辺になるとフレアがでるが解像はしている。

派手ではないが、立体感のある良い描写をするレンズだ。

色収差で鎖に色が着く。ボケは少しグルグル廻る。

像面湾曲があるが、デジタルセンサーとの相性が原因かな?

f5.6に絞る。十分にシャープな描写。

開放f1.9のボケは、距離によって回転するクセがでる。





前ボケはとろけるように、後ろボケも(暴れる距離もあるが)フレアできれいに滲む。


TARONAR 4.5cm f1.9
ちょっと地味だけど繊細で立体感のある描写をする。
ボケもきれいな良いレンズだ。

そんなタロンTARONARのレンズ製造メーカーを推測する。

この一つ前のモデル、1958年製 TARON 35 III / TARONAR C  4.2cm  f1.9 は、TARON 35 II型と同じタムロン(泰成光学)製だと思う。42mmでf1.9の明るさは、他社にない頑張ったスペックであり、旧型のキャリーオーバーな気がする。

半年ちょっとでモデルチェンジしていて、それは4.2cmレンズの在庫がなくなったところで4.5cmレンズに切り替えたと想像。


そして今回のTARONAR 4.5cm f1.9は、ズノー製だ。

なぜ言い切れるかというと、ヤシカLYNX1000 (およびYASHICA 35 YL)のレンズ:ズノー製 YASHINON 4.5cm f1.8と、レンズ曲率/内部構成の反射/鏡胴の作りが全く同じなのだ。(明るさの違いで径がわずかに違う、あと単層コーティングが違うところがある)


左: TARONAR 4.5cm f1.9  右: ズノー製 YASHINON 4.5cm f1.8 同じ構成で兄弟である。

1958年製TARON35 IIIのレンズ、TARONAR 4.5cm f1.9 はズノー製だ。(この時期のタムロンは、ズノーのOEMをしていたという話もあり、タムロン製造の可能性もある)

右のYASHINON 4.5cm f1.8は、翌1959年からYASHICA 35 YL、1960年 YASHICA LYNX1000に搭載された。 

タロンも1959年になるとTARON 35 Vシリーズになりレンズ銘板デザインがまた変わる。レンズ製造メーカーは、さて、どうなのだろうか?これもそのうち手に入れて調べてみよう。






#オールドレンズ #オールドカメラ #レンズ改造 #改造レンズ #ZUNOW