タロン35III (MX) タムロン - ソニー - ズノーとの関係   / The Relationship Between TARON 35III - TAMRON - SONY - ZUNOW


 2026年7月30日 

タムロンは、大株主のソニーから子会社化提案を受けた。

タムロンは高倍率ズームレンズの設計製造に強みを持つレンズメーカーで、ソニーやニコンなどの純正レンズも製造している。ソニーによるタムロンの子会社化は、映像システムの強化を狙った動きなのだろう。はたしてどうなるか。



さて、今回のテーマはタムロンではなく「タロン」である。

始まりは第二次世界大戦中の1943年発売された2眼レフTAROFLEXで、評価の高いカメラだった。ブランド名TAROは「太郎」由来だろうか。

戦後になると「太郎?」の子供たちが日本光測器工業 (1959年にタロンに社名変更  ) を起こし、カメラ用のシャッターを製造した。製品のNKSシャッターは、当時多くのカメラに組み込まれた。

1955年 TARON 35 発売。カメラ製造に軸足を移す。1955年は35mmフィルムカメラが数多く生まれた年であった。

TARONシリーズのモデル名と搭載するレンズをまとめてみる。


1955 TARON 35        Tomioka Lausar 4.5cm f2.8  (富岡光学)

1957   TARON 35 II     TAMRON    4.2cm   f1.9        (タムロン/泰成光学)

1958   TARON 35 III    TARONAR C  4.2cm   f1.9    (銘板デザイン変更)


   (1958  9月?にレンズ変更) TARONAR C  4.5cm   f1.9    (銘板デザイン変更)

                                          TARONAR C  4.5cm   f2.8      (同上)


1959    TARON 35 V    (VR,VRゼブラ,VR-II,V18,VL )    

                                            TARONAR  F.C 45mm   f1.8   (銘板デザイン変更)

                                            TARONAR  F.C 45mm   f2     (同上)

                                            TARONAR  F.C 45mm   f2.8   (同上)


TARON35シリーズ5世代と、そのレンズである。

1957年の TARON 35 II のレンズは「TAMRON」、タムロン/泰成光学製だ。

タムロン(泰成光学)は1950年に創業、レンズ研磨の下請けから始まった。当時、タロンとの関係は深かったようで、「タムロン」の由来は、設計者:田村右兵衛 氏の「タムラ」+「タロン」らしい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%A0%E3%83%AD%E3%83%B3 

タムロンの歴史では、TAMRONレンズは一眼レフ用交換レンズからになっていて、TARON35 II のレンズTAMRON 4.2㎝ f1.9 は登場しない。でもこれが最初のタムロンレンズだと思う。

名前の由来も含めて、隠したい歴史なのかもしれない。

 

1958年のTARON35III ではレンズがTARONAR銘に変わる。レンズは同じく4.2cm f1.9だったが1958年途中でモデルチェンジ、名前はIII型のまま4.5cm f1.9とf2.8になっている。

次のV型(1959年)はレンズが3種、ボディも多くのバリエーションが存在する。

銘板デザインがモデル世代ごとに違うので、レンズ製造メーカーが気になる。


タロンは、多くのカメラを産み出しながら多角経営化も進めた。1960年代後半にカメラ製造から撤退しながらも、ソニーのテープレコーダー等の生産も行うことで生き残る。

1972年にソニーの子会社化、開発製造部門は吸収された。

(吸収されなかった部分も「柳原コーポレーション」として現在まで存続している。その事業経歴を参考にした)


1958年製 TARON 35 III  モデルチェンジ(レンズ変更)後

故障したジャンクを手に入れる。

レンズのTARONAR 4.5cm f1.9が気になっていた。

TARON35 II のTAMRONレンズからTARONARに変更になっていて、製造元はどこだろう?


レンズを外してデジタル用にEマウント改造する。

レンズユニットを分解するが、前群ユニットがどうやっても外れない。誰かが接着剤で固着させたみたいだ。

分解できないとレンズシャッターの開放化ができない。仕方がない。バルブシャッターで開いたままになるように、3Dプリンターでパーツを作る。果たしてずっと開いていてくれるか?どこかでストッパーが外れて閉じそう。

オリジナルのヘリコイドは外して、ヘリコイド中間リングを使う。この方が簡単で最短撮影距離も短い。

絞りは10枚で、円形絞りになる。高級だ。

Eマウント化して初代a7に装着。

TARONはソニーに吸収されたから関係がつながっている。世代を超えたマッチアップだ。



f1.9開放の描写。中心部はシャープ。周辺になるとフレアがでるが解像はしている。

派手ではないが、立体感のある良い描写をするレンズだ。

色収差で鎖に色が着く。ボケは少しグルグル廻る。

像面湾曲があるが、デジタルセンサーとの相性が原因かな?

f5.6に絞る。十分にシャープな描写。

開放f1.9のボケは、距離によって回転するクセがでる。





前ボケはとろけるように、後ろボケも(暴れる距離もあるが)フレアできれいに滲む。


TARONAR 4.5cm f1.9
ちょっと地味だけど繊細で立体感のある描写をする。
ボケもきれいな良いレンズだ。

そんなタロンTARONARのレンズ製造メーカーを推測する。

この一つ前のモデル、1958年製 TARON 35 III / TARONAR C  4.2cm  f1.9 は、TARON 35 II型と同じタムロン(泰成光学)製だと思う。42mmでf1.9の明るさは、他社にない頑張ったスペックであり、旧型のキャリーオーバーな気がする。

半年ちょっとでモデルチェンジしていて、それは4.2cmレンズの在庫がなくなったところで4.5cmレンズに切り替えたと想像。


そして今回のTARONAR 4.5cm f1.9は、ズノー製だ。

なぜ言い切れるかというと、ヤシカLYNX1000 (およびYASHICA 35 YL)のレンズ:ズノー製 YASHINON 4.5cm f1.8と、レンズ曲率/内部構成の反射/鏡胴の作りが全く同じなのだ。(明るさの違いで径がわずかに違う、あと単層コーティングが違うところがある)


左: TARONAR 4.5cm f1.9  右: ズノー製 YASHINON 4.5cm f1.8 同じ構成で兄弟である。

1958年製TARON35 IIIのレンズ、TARONAR 4.5cm f1.9 はズノー製だ。(この時期のタムロンは、ズノーのOEMをしていたという話もあり、タムロン製造の可能性もある)

右のYASHINON 4.5cm f1.8は、翌1959年からYASHICA 35 YL、1960年 YASHICA LYNX1000に搭載された。 

タロンも1959年になるとTARON 35 Vシリーズになりレンズ銘板デザインがまた変わる。レンズ製造メーカーは、さて、どうなのだろうか?これもそのうち手に入れて調べてみよう。






#オールドレンズ #オールドカメラ #レンズ改造 #改造レンズ #ZUNOW

ゾナー構成レンズの上品な描写を楽しむ。WALZ 35 S-III / S-KOMINAR 4.8cm f1.9 Enjoy the refined image quality of a Sonnar-type lens.

 

1950年代、明るい高級レンズの構成は、ガウスとゾナータイプ2種類あった。

ゾナーは張り合わせレンズを多用してレンズをまとめ、わずか3群構成にすることで、コーティングが弱い時代でも表面反射を低減した。それによって抜けの良い、コントラストがある描写が特徴だ。

ライバル?のガウスタイプは、前後対象の構成が特徴で、収差をバランス良く補正して距離変化にも強い。ガラス素材とコーティングの技術進化が効いて、性能が大きく向上、レンズ構成の主流になった。

1950年代後半のレンズ固定レンジファインダーカメラ全盛期では、f2を超える大口径レンズのほとんどはガウスタイプになっている。

ほとんどであって全部ではない。

ひとつだけゾナー構成のレンズがあった。


WALZ 35 S-III / S-KOMINAR  4.8cm f1.9 1957年製

WALZ 35シリーズ に搭載された 日東光学製 S-KOMINAR 4.8㎝ f1.9  である。
その構成は3枚張り合わせを2群も使った、贅沢な正統派ゾナー構成であった。




WALZは1930年代からあるブランドで、1955年から倒産する1961年までレンズ固定の35mmレンジファインダーカメラを製品化している。レンズは廉価版のf2.8と高級なf1.9の2機種あったが、
そのf1.9レンズは、1機種を除いてすべて同じゾナー構成レンズだ。
WALZというブランドがいかにゾナー構成レンズにこだわっていたかがわかる。

黄色で示した例外がWALZ 35-SVでズノー製?ガウス構成レンズである。(レビュー)

描写もよいレンズなのだが、ゾナーとはたたずまいが違う。
(左が WALZ35 S-III ゾナー構成レンズ、右がWALZ35 S-V ガウス構成レンズ)

左のゾナー構成のほうが小さい。ゾナーは前群の凸レンズパワーが強く、焦点距離に対してコンパクトになる。

このコンパクトさがゾナーの特徴であり、欠点でもある。

小さいことはいいことなのだけど、レンズ後面から像面までのバックフォーカスも短い。ミラーのある一眼レフでは致命的であり、ミラーレス対応のレンズ改造でも難しくなる。


WALZ35シリーズのゾナーレンズは同じものと思われるので、なるべくジャンクなカメラを購入。ジャンクカメラからとレンズを分離して、レンズ改造を行う。

ヘリコイド付きでは、Eマウントでは無限遠がでない。バックフォーカスが足りないのだ。
ヘリコイドを外してヘリコイド中間リングを使うのはよくやる手だが、一番短い10-15mmのヘリコイド+1mmのEマウントアダプターでも、無限遠はでなかった。(フランジバックが2mm短いZマウントなら大丈夫だろう)

無いものは作る。3Dプリンターで、直進ヘリコイド付きのアダプターを自作した。
3Dプリンターでは、ヘリコイドのしっとりした動きが出せるほどの精度はでない。
ヘリコイドを組み合わせて、水をかけながら「すり合わせ」をして精度をだした。
なかなか疲れる工作でした。

オリジナルのヘリコイドは50㎝くらいまで寄れる。レンズのシルバーの質感が良く、気持ちが良い。
実際の撮影では、どう写るのか。


開放f1.9 点光源はバブルボケになる。

f1.9開放では、描写にはフレアがかかり優しい。


開放f1.9のボケは、クセなく安定している。描写は、フォーカス面だけでなく背景ボケもクリアで立体感がある。









f5.6に絞っている。少し絞るとかっちり写る。



使った感想は、優しく上品な描写と、クリアで立体感のある描写が両立していること。

オールドレンズだとボケや周辺が暴れやすいガウス構成に対して、画面全体の落ち着いた描写はゾナー構成らしいと思った。ちょっと地味だけど上品な描写で、WALZがこだわったのもわかる気がする。

ただ現実的には、製作の難しい3枚張り合わせレンズを2群も使う構成は、「コスパの良い」日東光学にしても高コストだったと思う。
1961年のWALZの倒産とともにゾナー構成レンズはコンパクトカメラから消えた。
大口径のゾナーがコンパクトカメラに再び乗るのは、2012年からのソニーRX1シリーズであり、それが唯一のモデルでもあるようだ。













 #オールドカメラ #レンズ改造 #改造レンズ #ゾナー構成 #ENVOY #review

WALZ 35 SV / WALZER 4.5cm f1.9 はZUNOW製 なのか? Is the WALZER 4.5cm f1.9 made by ZUNOW?

ワルツ商会は、1930年代から続く日本商会を引き継ぐ形で、第二次世界大戦後、太田俊夫氏によって起こされた写真用品商社である。

1955年に35mmフィルムカメラ「WALZ 35」を発売し、その後1961年に倒産するまで毎年モデルチェンジし続けた。

WALZ35のレンズは日東光学KOMINARを中心に、特に上位機種では高級な3群7枚ゾナー構成を持つS-KOMINAR 4.8cm f1.9を使用した。

S-KOMINAR 4.8cm 




1958  WALZ 35 SV

ところが1958年だけが例外で、WALZ 35-SV WALZER 4.5cm f1.9 が異彩を放っている。
カメラが毎年モデルチェンジするといっても基本骨格は同一のマイナーチェンジもある。
WALZ 35-SVはボディの基本骨格からフルモデルチェンジしていて、レンズも新作だ。
でも、次のモデルチェンジでは旧作のS-KOMINARゾナー構成に戻っている。

なにがあったのだろうか?

モデルチェンジした生産の立ち上がりは不安定になりやすく、計画通りは難しい。そのため旧型の35-SIIIと並行して生産したのではないかと想像した。それで手のかかるS-KOMINARの供給に問題が生じて、新レンズをOEMしたのではないか?
生産の移行が済んだ1959年モデルからは、それ以前のS-KOMINARに戻っている。

この中継ぎのWALZER 4.5㎝ f1.9 はどんなレンズなのだろう。趣味性にこだわったWALZだからこだわりがある気がする。
調べても資料は見つからなかったが、気になる。

ジャンクのWALZ 35-SVを購入。レンズ前面には拭き傷がある。とりあえずフードは付けるが、どのくらい影響するか。
このレンズを分解して、デジタル用に改造する。

レンズを外して、シャッターを開放化。フォーカスヘリコイドを外して、3Dプリンターパーツを使ってM42マウントをつける。フォーカスはヘリコイド中間リングで行う。


反射から分かったことは、レンズは4群6枚ガウス構成であること。
さあ、撮影してみよう。

 WALZER 4.5cm f1.9 の描写


f1.9 絞り開放の描写。周辺までしっかりと解像。全体にフレアがある描写。

ハイライトがフレアで滲む。色収差でクサリに色がつく。ボケは画面全体で安定している。





ボケが魅力的だ。特に近距離での撮影では、画面全体で安定して、大きくきれいにボケる。


点光源では、エッジの強調されたボケが見える。でも2線ボケにはならないで、きれいに滲んだボケになるのが特徴。




描写はなかなかよく、立体感もあり、背景からも浮き立つ。



逆光は弱く全体に白っぽくなった。拭き傷があり、コーティングも未熟だ。仕方がないのだろう。






これも開放f1.9 画面周辺を見ると、大きなコマフレア。開放の滲みの原因だろう。

左下隅の拡大。大きなコマフレアは、羽を広げて一斉に飛び立とうとしている。




WALZER 4.5cm f1.9  はよく写るレンズだ。この1950年代後半はライバルも良いレンズが多く、良い時代だったと思う。

特徴は、背景ボケの魅力にあるだろう。
変にグルグルせず、画面全体に安定している。点光源で見るとエッジが強く2線ボケになりそうだが、フレアで綺麗に溶けている。
全体として描写は軟調でクラシックな印象になる。

逆光には弱く画面全体が白っぽくなりやすい。レンズ表面の拭き傷と、時代的に未熟なコーティングが原因だと思われる。
順光ならばコントラストは充分あって、立体感ある描写で臨場感もある。



さて、このWALZER 4.5㎝ f1.9の素性はどうなのだろう。
WALZはレンズ製造していない。

多くのWALZ製品のレンズは日東光学KOMINARだが、いくつか例外がある。
1959年の2眼レフAutomat 44のレンズは、ZUNOW製だ。
今回のように、オリジナルのWALZER銘のものも何本かある。それは日東光学製もあるようだが、WALZが企画したからWALZERなのか?

1958年のWALZER4.5㎝ f1.9、製造はどこだろう。
日東光学かZUNOW製の可能性が高いが…
 




銘板がZUNOWっぽい、と思っていたので1959年製のZUNOW製YASHINONと比較してみる。



左がZUNOW製YASHINON、右がWALZER
ともに4群6枚ガウス構成だが、明るさが違う。レンズ曲率が違う別物。
銘板のシリアル番号の大きさは違うが、フォントとデザインは同じに見える。

そしてKOMINARとは違う。





WALZERの分解した後ろ側の絞りユニットと検印。

ZUNOW製YASHINONもおなじ絞りユニット。ただこのユニットは富岡光学製のYASHINONも同じだ。
ここもKOMINARは違う絞りユニットだ。


さて、製造はどこだろう。
日東光学はレンズの造りから見ると、違うと思う。
WALZER 4.5cm f1.9 は ZUNOW製かな?
実際、「ボケのきれいなクラシックな描写」も、ZUNOWレンズの印象がある。

今回のZUNOW?製WALZER 4.5cm f1.9は、WALZ内の評価も良かったのだろう。

翌年1959年の WALZ オートマット44のレンズはZUNOW製になった。



しかしWALZ35 のレンズは、翌1959年からこだわりのゾナー構成S -KOMINARに戻している。
こだわったのは、高級なゾナー構成の描写もあるが、コンパクトなことも大きかったのではないか。

S-KOMINARとWALZER、同じ改造Eマウント仕様で比較してみる。

左のS -KOMINARは4.8cmと焦点距離が長いのに、レンズ全長は1cm以上も短い。

ゾナー構成はテレフォト構成なので、対象型のガウス構成よりレンズ全長が短くできる。



WALZは1950年代のカメラブームに乗って趣味性の高いカメラを生み出した。

しかし、1961年キヤノネットの「高性能でありながら圧倒的低価格」に負けて倒産した。その過程で「汚いビジネス体験」を受けたりしたのだが、社長の太田俊夫氏は、作家になって架空の小説で復讐するという、やはり相当の趣味人であった。







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