TAMRON SP 500mm f8 (55B) レフレックスレンズの得意なこと / Advantages of Reflex Lens

 



レフレックスレンズは1970〜1980年代に流行した反射鏡を使った望遠レンズだ。2枚の鏡で光路が往復、結果、鏡胴が画期的に短くなる。

天体望遠鏡では反射望遠鏡が多く使われる。理由は、鏡胴が短いこともあるが、屈折レンズよりも軽く(ガラスの塊なので製造に大きさの限界がある)、色収差がないことだ。その反射望遠鏡をカメラ用にしたのが、1936年のベルリンオリンピック記録映画だった。そのカメラ用レフレックスレンズは日本でもその後すぐに開発された。(ミヤニ式、フジナミ式)


レフレックスレンズは、望遠レンズの最大の敵: 色収差がないのが魅力だが、それ以外の収差補正は難しい。高性能な天体望遠鏡では、高精度の非球面鏡をつかうが、高価になりすぎる。

コストを考えると球面鏡で、球面・コマ収差や像面湾曲を補正する屈折レンズと組み合わせる。収差補正にはそれなりの大きさが必要で、手軽に持ち歩く大きさにはならなかった。

(1969年に発売されたReflex-NIKKOR 500mm F8は重さ1㎏ある)

そんなレフレックスレンズを、一気に変えたのが1979年発売のTAMRON SP 500mm f8  (55B) だ。収差補正レンズの裏面を反射鏡にするなど、屈折レンズ設計の工夫で、重さ、サイズともに従来の2/3まで小さくした。長さ100mm重さ600g以下の小ささは魅力的で、手軽な超望遠ニーズにマッチした。

TAMRON SP 500mm f8  (55B) は、描写もよくヒットした。途中マイナーチェンジ (55BB)  しながら2006年まで生産され、現在でも中古品が多く流通している。


購入したのはカビ、バルサム切れのジャンク品。レンズ構成は、大きなレンズの中心部に小さなレンズが貼り付けられている。そのレンズ用接着剤(バルサム)がはがれてくるのは持病のようだ。まだなんとかレンズは張り付いているが、そのうち「ガチャン」とレンズ鏡胴内で崩落するのだろうか?


レフレックスレンズの特徴は往復する光路にあるが、それゆえに迷光によるフレアが問題になる。このレンズはバルサムが切れかかっていることもあって、できるだけ大きなフードが欲しい。購入時にフードがついてこなかったので、すっぽりとかぶさる大きさのものを自作した。本当は黒色のほうがいいとは思います。

カビが生えやすいのもレフレックスレンズの特徴だが、裏面鏡でカビはガラス面になるので除去しやすい。カビはカビキラーで除去して、さあ撮影だ。



レフレックスレンズの撮影は難しい。被写界深度が極端に浅くフォーカスが合わない。

口径比はf8となっているが、実は違う。口径76mmなのでf6.6くらいだ。f8というのは、レンズ中心部が副鏡で使えないので、その分を割り引いた実効値がf8相当という意味だ。

だから被写界深度はf6.6同等で、フォーカス面はとにかく薄い。

手振れ防止のない超望遠500mmもキツイ。画面が揺れるので拡大フォーカスはできない。ピーキングを頼りに、シャッターを数打つスタイルになる。





レフレックスレンズはドーナツ型のボケになる。中心付近はドーナツだが、周辺になると口径食で「C」型になる。

背景は2線ボケだ。細かいととてもうるさくなるが、シンプルな背景だと、絵画的になっておもしろい。


中から近距離で撮ると、背景も大きくボケて被写体が引き立つ。コントラストもよくシャープに見える。


距離が離れると、コントラストも落ちた感じで、あまりシャープにみえない。背景のボケがうるさく被写体が浮き上がらない。








当たり前なんですが、超望遠500mmは、見たいものを拡大して切り取ります。普段のストリートスナップとは違いました。

近所の公園での鳥スナップが手軽な超望遠ならではで、面白く撮れました。鳥は顔に表情がない(顔の筋肉がない)ということですが、サギを見ていると真剣なハンティングとのんびりリラックス、身体全体に表情があってなかなか可愛いです。


レフレックスレンズ全般に言えることかもしれませんが、TAMRON SP 500mmは中近距離が得意な印象でした。その距離ならコントラストもよく、背景も大きくボケて被写体が浮き上がります。

いっぽう、遠距離は苦手かもしれません。被写界深度が浅いので、背景はパンフォーカスにはなりにくく、中途半端にボケます。ガサガサとうるさくなりがちで被写体も浮き上がりません。

オートフォーカスも手振れ補正もない超望遠オールドレンズですが、小型軽量なので気軽にお散歩に持っていけます。撮影はピーキーですが、ツボにはまればよい画が得られます。フィルム時代とは違って、デジタルなら感度オートで連写できるようにもなりました。手軽なお散歩での鳥スナップ撮影は、けっこう楽しめました。







#オールドレンズ #ミラーレンズ #レフレックスレンズ

贅沢な中口径レンズ  KONICA III 2.4 Hexanon 48mm f2.4 / A high-quality medium-aperture lens





コニカは日本最古の写真用品メーカーだった。明治6年(1873年)小西屋六兵衛店として創業し、フィルムからカメラまで供給した。戦後すぐ(1948年)には35mmフィルムカメラを開発、海外販売していている。その高品質なコニカI,II,IIIシリーズは「クラシック・コニカ」として評価が高い。

KONICA III 2.4  (1958年) は、高級機の廉価版。
一世代前のボディに中口径のレンズHexanon 48mm f2.4を組み合わせることでコストを抑えたようだが、マイナー機種で定価はよくわからない。
クラシック・コニカと言われるだけあって、高級機らしい高品質なつくり。高性能なファインダー、左手のフィルム巻き上げレバーが特徴。動作品はそれなりに高価だが、購入したのは不動のジャンク。


Hexanon 48mm f2.4
クラシックコニカに装着されたレンズはどれも評価が高いが、マイナーな48mm f2.4レンズは情報が少ない。
レンズ構成もよく分からなかったが光の反射から見ると、5群6枚のダブルガウス型。f2レンズと同様だ。
中口径にしてはレンズ口径が大きい。前玉径は24mmもあってこれもf2級。
f2レンズのパーツの流用もありそうだ。

f2クラスをあえてf2.4中口径にしたことに贅沢を感じる。




1950年代後半のレンズシャッター機は、シャッターが汎用なので改造は容易。ほとんどのモデルがレンズシャッターユニットを中心に鏡胴を構成している。
シャッター後部にはM25p0.5ネジがあり、そこにM42マウントを付ける改造をする。
M42マウントにヘリコイド中間リング(13-22mm) を装着、フォーカス用にする。もともとあったフォーカスヘリコイドよりも、ストロークが大きく、最短撮影距離を短くできる。
つくりはかっちりしていて、改造レンズでも気持ちが良い。
レンズフードをつけて、さあ撮影。



 

開放f2.4でも、近距離まで寄ればよくボケる。もともとの最短撮影距離0.9mよりも寄っているので柔らかい描写だ。ボケは少しグルグル廻って見える時がある。


少し絞れば、近距離でもグッとシャープになる。












このレンズ、とても気持ちよく写るレンズです。
f2.4と中口径だけど不思議と良くボケるのが特徴で、シャープなフォーカス面が背景から浮き立ちます。

デジタル撮影では発色も鮮やかです。カメラが発売された1958年は白黒フィルム全盛でしたが、コニカは「さくら天然色フィルム」を販売していたので、色再現性も気をつかっていたのでしょう。

 Hexanon 48mm f2.4、中口径で地味なスペックですが、良いレンズです。

このころのコニカ・ヘキサノンのレンズ設計は風巻友一氏で、効果的なレンズ設計手法を確立していました。それはとても素晴らしかったのでしょう。オールド・ヘキサノンは、描写がよく、好みのレンズが多いです。









#オールドレンズ #レンズ改造 #改造レンズ

OLYMPUS Auto Eye2/D. ZUIKO 4.3cm f2.5 絵画的描写をするテッサーレンズ/A Tessar-type lens that produces painterly images.


カメラの自動露出が初めて普及したのは1960年だ。

1960年、OLYMPUS Auto Eyeは世界初の本格的な自動露出機能でデビューした。

https://camerapedia.fandom.com/wiki/Olympus_Auto_Eye


当時はまだセンサーもバッテリーも未熟で、セレン光電池が生み出す弱い電気を工夫して、自動露出にしていた。シャッターストロークで絞りを動かすカラクリは見事だ。

レンズは45mmf2.8、距離計付きのカメラは21500円の価格。初任給よりも高く、当時カメラはとても高価だった。


ところが1年後の1961年に、価格破壊が起きる。

キヤノンがCANONET を18800円という低価格で発売した。オリンパスと同じ自動露出で距離計付き。そのうえキヤノンは高級機メーカーでブランドは一枚上、レンズはさらにおごってf1.9の明るい高級レンズをつけてきた。

格上のブランドがより高性能なモデルを格安で出したのだからたまらない。売れなくなったオリンパスは低価格化で対抗した。


1962年、2代目OLYMPUS Auto Eye2は大幅にコストダウンして登場した。

価格はキヤノネットより安く、16800円。

コストのかかるレンズは、キヤノンのf1.9までは明るくできない。初代と同じ3群4枚テッサー構成のまま、f2.5まで明るくした。

テッサー構成は、f2.8の明るさが限界と言われており、それ以上明るくするのは難しい。

この限界を超えたf2.5レンズはどのような写りをするのだろうか。



2代目OLYMPUS Auto Eye2のジャンクからレンズを取り出して、改造してみよう。


ボディ前面の張革を剥がすと、レンズの載ったボードがビス留めしてある。そのボードに被るようにボディ天面、底面カバーが付いている。

レンズ鏡胴は、汎用部品のシャッターユニット中心に構成されている。ボード後ろ側からリングナットをはずせば、分解完了。

レンズシャッターは閉じているので開放化する。前側からシャッターユニットまで分解する。絞り機構を活かしたまま、要らないメカを外してシャッターを開放側に固定する。


フォーカスは前玉だけ動かすシンプルな前玉回転。でも近距離が弱いので、ヘリコイド中間リングによる全群繰り出しにした。これで近距離撮影にかなり強くなる。



改造したレンズは、コンパクトにまとまった。

金属と黒のリングが交互に並び、クラシックな雰囲気だ。レンズ前面にもセレン光電池と思ったが、なんとこれは、ライバルのキャノネットを意識したダミーのお化粧。

厳しいはずなのにつまらないところにコストをかけている。なんか負けフラグが立っているようだ。

さて、どう写るか撮影してみよう。



開放f2.5では、フレアがかった優しい描写。背景は2線ボケでザラザラしている。

少し絞っただけで、クリアでシャープになる。ところが2枚絞りは四角く絞られるので、ボケも四角くなる。ハッチングしたみたいだ。






フレアと絞りによるボケの変化が個性的だ。
開放f2.5
2線ボケだけど大きくぼかすと、抽象絵画のようだ。


f5.6 に絞ると、絞りの形の影響でボケが四角くなる。これはこれで、色鉛筆画のようだ。



テッサー構成らしく、絞ってぼかさず撮ると、くっきりシャープに写る。









開放時のフレアも、幻想的な雰囲気になる。


開放 f2.5で点光源を撮ると、複雑なゴーストがでている。これがフレアがかった描写の原因だろう。


少し絞れば、ゴーストは消えてクリアになる。

開放f2.5。周辺の点光源を見ると、かなりのコマフレアである。このフレアを見ると、テッサーでf2.5というのは、かなり無理をしたスペックだということがわかる。




この D. ZUIKO 4.3㎝ f2.5  特徴は開放のフレアとボケで、強度の2線ボケです。ボケがうまくいくと絵画のようになり、失敗するとガッサガサにうるさくなります。

明るくてもf2.8といわれるテッサーですので、やはりf2.5の口径比は限界を超えているようです。このフレアとボケの強い個性(破綻?)は、楽しめます。


同様にテッサーの限界を攻めたレンズに、1960年のニコンNIKKOREX 35があります。このレンズ NIKKOR-Q 5cm f2.5 は高性能な光学ガラスを使うことでf2.5を達成したとしていますが、開放のフレアは同じようにありました。ボケも似た傾向はありますが、だいぶマイルドです。

https://takacustomlens.blogspot.com/2022/11/25nikkor-q-5cm-f25-nikkorex-35-lens.html











#テッサー #オールドレンズ #レンズ改造 #改造レンズ

 クセノターの流行った時 Ricoh 500 deluxe / RIKENON 4.5cm f2.4 : The lens when the Xenotar configuration was in vogue

 



Ricoh 500 deluxe 1958年製

レンズは日東光学製RIKENON 4.5cm f2.4

リコー公式サイトは3群5枚構成となっているが、実際に分解してみると4群5枚クセノター構成である。




クセノター構成はガウスタイプを簡略化したような4群5枚構成だ。3群4枚のテッサー、4群6枚のガウスの間になるが、性能は中間ではない。中口径でまとめるとガウス以上の解像力を発揮する。画面全体が均一で極めて高解像というのが特徴だ。


そんなクセノター構成のレンズは1950年代後半にちょっとした流行があった。

クセノター構成のオリジナルは、第二次世界大戦後すぐ、東ドイツ東ベルリンのツァイス・イエナのビオメターである。

ビオメターは、1952年当時、画期的な高性能を持ち、西ドイツ西ベルリンのローライレフレックス用に作られたが、東西冷戦下の貿易が問題になって少量しか生産されなかった。

ローライレフレックスはレンズが不足した。そして、ビオメターと同じレンズ構成のクセノターが、西ドイツのシュナイダーによって製造された。


このクセノターが衝撃を持って評価された。画面全体での高い解像力は、従来のレンズに比べて、とても大きな性能差があった。その衝撃からこのレンズ構成は(オリジナルはビオメターだけど)クセノターといわれるようになった。

そして1950年代半ばから 日本でちょっとしたクセノターの流行が始まる。


Ricoh 500 deluxe / RIKENON 4.5cm f2.4 (1958)




クセノターは、ガウスタイプのような明るい大口径は得意ではないが、高解像中口径レンズである。ウィキペディアによるとクセノターが高性能なのはF2.8までのようだが、このリケノンは頑張ってf2.4。

f2.8は低コストのテッサータイプでも実現できるので、半絞り明るく差別化したのだろう。その半絞りがどんな描写になるのか。


Ricoh 500 deluxe はカメラ底面の、フィルム巻き上げ速写レバーがカッコいい。メカマニア心をくすぐるが、手に入れたジャンクは動かなかった。

デジタル用に改造する。

1.裏蓋を開けてフィルム室側からレンズを外す。

2.レンズ前側から分解してレンズシャッターを開放化する。

3.M42マウントを付ける。

この3行程を試行錯誤しながら楽しむ。

M42ヘリコイドリングを使ってカメラに装着すれば完成だ。さあ、撮影を楽しもう。



前ボケはとても素直。後ろボケは少し2線ボケだが、少し滲んで気にならない。画面隅で崩れることもない。
ブランコの鎖を見ると少し色収差で緑がかっている。





ボケはやはり素直で、画面隅までスキがない。




少し絞れば、とても均質によく写る。
比較すれば、開放f2.4は少し柔らかい描写だ。
その理由で、シャープさを重視するクセノターは開放f2.8にするのだろう。






クセノター構成の特徴は、画面隅まで均質に高画質なことだと思います。それは大きなフォーマットのカメラに向いていて、中判カメラの標準レンズに1970年代末まで使われていたことが納得できます。

描写は、モノを記録するためのマクロレンズや、精緻な風景写真に向いていて、クールな写真が撮れそうです。癖のないクセノター。

オールドレンズとしてみると、面白みがわかりにくく、玄人好みな気がします。私みたいな軽いノリでは、まだまだ修行が足りません。










#クセノター構成 #オールドレンズ #レンズ改造 #改造レンズ