PENTAX AUTO 110は素晴らしく楽しい豆システムだ。その楽しさをデジタルカメラで再現することが今回のテーマである。
PENTAX AUTO 110は、110フィルムを使用するカメラで、1979年から1985年まで発売された ミニマムなシステム1眼レフだった。110フィルムは17×13mmサイズで、デジタルのフォーサーズと同じ。35mmフルサイズの1/4である。
システムカメラでありレンズ交換ができる。マウントフランジバック26.5mmで、カメラ側にビハインド絞り兼シャッターがあるのが特徴だった。それは小さなカメラにシャッターと自動絞りをつけるためであり、結果としてレンズとマウントはシンプルになった。
欠点としては、絞りが全レンズ共通になるので、レンズの明るさと後レンズの口径を、望遠から広角まで全部同じにする必要があった。また、フォーカスを繰り出すと絞りとレンズが離れてしまうので繰り出し量に限界があり、望遠は最短撮影距離が遠かった。
110フィルムのような小さなフォーマットでは、レンズ性能が悪いと致命的になる。本格一眼レフを売りにしたこのシステムは、レンズの描写力にも定評があった。
このレンズをデジタルで使うのにはマウントアダプターが必要になる。マイナーだが探せば手に入るだろう。でも私は自作した。
マイクロフォーサーズは110フィルムと画像サイズが同じで相性が良い。フランジバックは20mmなのでマウントアダプターの厚さは6.5mmになる。
このアダプターには 最短撮影距離を短くするためにヘリコイドを入れたかった。望遠レンズはビハインド絞りの影響で繰り出しが少なく、あまり寄れないことの対策だ。
開放f2.8の撮影になってしまうので絞りも入れたかったが、PENTAX-110マウント部だけで厚さが4mmあるため、残りは2.5mm。空きスペースは無くあきらめることになった。
厚さ6.5mmのアダプターにストローク3mmの直進ヘリコイドを搭載。直進ヘリコイドは、薄い110→C/M42兼用マウントアダプターをベースにして製作した。M42マウントを使った順ネジと3Dプリンターによる逆ネジを組み合わせ、直進キーで真っすぐにストロークさせている。直進キーは真鍮棒で滑りを良くした。撮影結果はこちらになる。
今回さらにソニーEマウント、APSデジタルでも撮影できるようにPENTAX-110→Eマウントアダプターを制作した。APSは110フィルムよりもひとまわり大きいが、110用望遠レンズはイメージサークルが広く、カバーできるらしい。
Eマウントはフランジバックが18mmなのでマウントアダプターは8.5mm厚になる。
この厚さならヘリコイドと絞りを入れられそうだ。計画してみる。
左は絞りと直進ヘリコイドを入れる計画(断面図)。8.5mmの厚さに5つの構成要素が必要で、難しそうだ。
右は絞りと回転ヘリコイド。近接撮影の時はレンズごと回ってしまうが、要素が減らせるので、これなら絞りを入れることもできそうだ。これで作ってみよう。
3Dプリンターは微妙に大きくなることが多く、パーツごとの擦り合わせ調整が欠かせない。楽しいが手間もかかる。
絞り(開放f2.8とf5.6切り替え)、回転ヘリコイド(3mmストローク)付きのマウントアダプター、完成です。撮影してみましょう。
蹴られることなく結像している。画角の外側になる4隅は描写が甘くなっているが、それほど気にならない。思ったよりもイメージサークルは広く、被写体を選べば使えそうだ。
絞りの効果を試してみる。上側が開放f2.8、下側がf5.6の撮影。
絞ることで被写界深度がコントロールできる。開放でも解像しているが少しフレアがかって優しい描写。絞るとシャープになる。
次も上が開放f2.8で、下がf5.6
通常は絞ると、レンズ中心部の光束を使うため画質が向上するが、この場合は周辺減光が酷くなっている。これはビハインド絞りのためだろう。ビハインド絞りはレンズ後ろで光束を絞るので、レンズ前半部では光束は広がってしまい、描写性能は向上しないこともある。
絞りの位置をレンズにもっと近づければ周辺減光は改善するが、マウント的には限界。もともとのカメラもこのくらいの位置にシャッター兼用絞りがついているので、一回り大きなAPSではこんなものなのではないか。
デート中のカラスも暑くて口が開いている。遠景でも4隅以外はしっかりと結像している。
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