Mingca S-201 58mm f2 評価を高める中国レンズ、そのオリジン/This lens is the source of the Chinese-made lens that is gaining recognition.



Mingca S-201 58mm f2

このあまり聞かない中国製のマイナーなオールドレンズが、今回のテーマである。

もともと、このレンズは1974年に中国で「珠江 S-201」または「Pearl River S-201」というブランド名で、同名の最高級カメラの標準レンズとして発売された。珠江カメラは、共産主義経済ということもあり、同じ仕様、同じブランド名で複数の会社で作られていたらしい。

それが80年代の開放政策で商標問題になってしまった。1986年に会社ごとに別ブランドが必要になり、そのうち一つがMingca S-201である。

Mingcaブランドのこの中国製レンズは、ブランドが生まれた1986年から次の新型がでる1990年までの間に造られたことになる。




最高級カメラの標準レンズなので、定評のあるレンズ、ソビエト製Helios 44をベースにしたらしい。そしてそのHelios 44は、戦前のCarl ZeissのBiotar 58mm F2 をベースにつくられている。つまりツァイスのコピーのコピーだ。(歴史から考えるとパクリではなく合法的なコピーだとおもう)

もとになったツァイスのBiotarは、ダブルガウス型のレンズ構成で、1936年発売。

その基本設計はおよそ60年間、第一級であり続けたことになる。たいしたものだ。

もっとも、微妙な設計の修正、ガラス材の変更は何度もおこなわれている。

実際にほぼ同時期のHELIOS-44Mと比べてみると、前玉の大きさがMingcaのほうが大きい。

再設計されているのだろうか。コーティングもアンバー系の反射でニュートラルなHELIOSとは違う。


購入したMingca S-201 58mm f2は、レンズはクリアだけどジャンク。フォーカスリングが重く、滑り止めのゴムがなくなっている(ゴムが劣化しやすいのは持病らしい)。

レンズはヘリオス44のコピーだが、鏡胴デザインはニッコールのパクリ。そしてマウントはミノルタのパクリで、ミノルタMD・MC用のマウントアダプターがつかえる。

古いAUTO NIKKOR 24mmと比べてみる。印象は似ているが同じデザインではない。


分解整備をする。分解は前方から、銘板から外していけば整備できる。アルミ合金の鏡胴。分解清掃したので、重めだがスムーズに動くようになった。

フォーカスのゴムリングは無くなってしまったため、3Dプリンターでニッコール風に製作した。重めのフォーカスリングの動きを補うために径を大きくしている。これで操作は問題なくなった。

さて、なんかファインダーをのぞくとレンズが黄色い。これはどう写るのだろうか。



実際に撮ってみよう。


Mingca S-201 58mm f2  開放で。後ろボケが中間域で乱れる癖がある。


以下3枚の写真はHELIOS-44M。比較してみよう。


HELIOS-44M のほうがさらにクセが強い。中距離だとグルグルボケが強く出る。
Biotar - Helios系の悪癖であるグルグルボケだが、比較してMingca S-201 のほうが軽く、よくチューニングされているようだ。拡大してみると、Helios-44Mのほうがシャープで解像している。



ここからはまたMingca S-201 58mm f2 開放で。




フォーカス部の鎖に紫のフリンジ、後ボケには緑のフリンジがでている。オールドレンズでは仕方がないともいえる。







58㎜は長めの標準レンズで、f2の明るさは平凡だ。
写りはシャープでよく写るが、中間距離で後ボケがグルグルする。そのグルグルボケにいやな癖はなく、フォーカス部のシャープさときれいなボケのコントラストが特徴だと思う。

レンズ設計コピー元のHelios 44M(1982年製)のほうが、ボケがグルグル暴れる。フォーカス部はよりシャープで、ボケとのコントラストは強烈だ。ボケはグルグルするときとしないときがあり、強烈に出たときはえぐくて私は苦手。
Helios 44Mはそれでも昔に比べて、改良されてボケが素直になったらしい。グルグルボケが目的な人はもっと前の世代のHelios 44がよいのだろう。

Mingca S-201 58mm f2の魅力は、暴れるけど上品なボケと、シャープな描写のコントラストにあると思う。ニッコール風のデザインも洒落が効いていて楽しく撮影できた。

近年、交換レンズでは中国メーカーの評価が高くなっている。今回のレンズはそのオリジンになるのだろうか。























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