1979年発売された小さな110フィルムを使う一眼レフ、PENTAX-110システムには望遠レンズが2本ある。50mm (35mm換算で100mm) と70mm(換算140mm) 、2本しかないのに焦点距離が妙に近いのである。
左端が70mm f2.8、右のカメラについているのが50mm f2.8である。
PENTAX-110は絞りがレンズの後ろに来る「ビハインド絞り」なので、後レンズに制約があり、結果、前レンズが大きくなる。
こうして比べてみると、バランスよくまとまる50mmと、手持ちで撮れる最も長い望遠レンズを追求した70mm、という気がしてくる。70mmf2.8の前玉の直径は44mmもあり、小さなAUTO110カメラとのバランスを考えると、限界の大きさだ。
あまりメジャーではないPENTAX-110 70mmだが、安く手に入った。
110フィルムはマイクロフォーサーズと同じ大きさなので一番相性がいいのだが、望遠レンズはAPSサイズがカバーできるらしい。今回はAPSデジタル用にアダプターを作って撮影することにした。
マイクロフォーサーズの場合の「換算140mm」は、普段のスナップにはちょっと長い。むしろ、APSの「換算100mm」のほうが撮影しやすいというのが主な理由だ。
PENTAX-110 50mm f2.8
(110/マイクロフォーサーズ換算100mm APS 換算70mm)
レンズ構成は、マニュアルからのトレースだが、真ん中にフレアカッターが入っているように見えるので追加した。まったくいい加減なイメージによるスケッチである。
一番後ろ側がビハインド絞りで、前に行くにしたがってレンズは大きくなっていく。前玉の直径は30mmもある。
レンズ構成は、クセノタータイプ。当時のペンタックス(35mmフルサイズ)では50mm f2、100mm f2.8が同様のレンズ構成になる。コンパクトさよりも画面全体の解像力を重視した構成だがこのレンズは十分コンパクトに設計されている。分厚い前玉2枚の効果だろう。
PENTAX-110 70mm f2.8
(110/マイクロフォーサーズ換算140mm APS 換算100mm)
これも前玉直径は44mmと大きい。レンズ構成は変わってエルノスタータイプとなる。しかも通常は凸凸凹凸構成で凸レンズが多いのがエルノスターの特徴だが、このレンズはさらにもう一つ色消し凸レンズを前に加えている。これによってコンパクトになっているが、上記の50mmよりもレンズ全長が23mm長く、相対的には大きく感じる。この過激な凸レンズ過剰な構成によって、どのような写りになるのだろうか。
では比較しながら見ていこう。
PENTAX-110 50mm f2.8
開放。クセノター構成らしく均一で周辺までしっかりと解像している。APSサイズはしっかりとカバーしている。
ボケは2線/バブルボケであり、球面収差は過剰補正型のレンズのようだ。
残念ながら軸上色収差があって、後ろボケには緑フリンジ、前ボケは紫フリンジが目立つ。
PENTAX-110 70mm f2.870mmも開放で、周辺までしっかり解像している。
フリンジは50mmに比べると少ない。
ボケはきれいだが、像面湾曲と大きめの口径食が目立ち、画面内で均一ではない。
PENTAX-110 50mm f2.8
特徴は、シャープな描写とバブルボケにありそうだ。
ペンタックスらしく色乗りの良い描写をする。最短撮影距離が90cmで遠いのが欠点だが、近距離でもとてもシャープだ。
高輝度のものには、やはりフリンジが発生する。バブルボケはきれいな印象。
前ボケはスムーズにボケる。過剰補正型のレンズと思われる。
逆光では、まん丸のゴーストが発生。
バブルボケと口径食。悪くない印象です。
PENTAX-110 70mm f2.8
像面湾曲が大きいが、ボケはスムーズで味のある描写をしそうだ。
ボケは前後ともにスムーズ。最短撮影距離は150㎝と、かなり長い。近距離の時は解像力は低く優しい描写になる。
ボケは前後ともスムーズだが、像面湾曲の影響がある。周辺がボケず、不自然な印象になる。
フリンジは50mmよりは目立たない、かな。
離れたところにいるサギを望遠レンズで引き寄せる。このような使い方が得意なレンズという印象。
像面湾曲の影響で画面均一にボケない。
最短撮影距離が150㎝と遠く、近距離の描写も甘くなる。
色収差も少なく、ボケもきれいなレンズだが、上記の欠点もあって使いどころの難しいレンズだ。
さて、この50mmと70mm、やはり印象はだいぶ違います。ギラギラしたシャープな描写の50mmに対して、優しい70mmという感じでしょうか。
私の使い方では、近距離でもシャープな50mmのほうが好みでした。
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