アクションカメラをファインダー付きDマウントカメラに改造する。Convert an action camera into a D-mount camera with viewfinder.

 




アクションカメラもこなれてきて、安価な中国製の、さらに安価な中古も出回ってきた。

今回はそんな安価なアクションカメラを改造して、Dマウント シネレンズ用カメラを作りたいと思う。


安いアクションカメラから、そこそこの評判のClosstour 4Kモデル(CT8500)
の中古を購入した。

アクションカメラに注目した理由は、

1.センサーサイズは小さいが、8mm シネレンズと組み合わせは相性がいいはず。
2.小さいモニターがついている。VRゴーグル用レンズと組み合わせれば、ビューファインダーになる。その場合小さいモニターのほうが相性は良い。
3.ボディがコンパクト。ビューファインダーは大柄になるが、本体が小さければコンパクトにまとまる。


背面にそこそこの解像度のモニターがついている。それを利用してビューファインダーにする。ピーキング表示のないモニターでマニュアルフォーカスを操作するためには、ビューファインダーが必須だ。


アクションカメラに装着されている広角レンズを外す。
レンズ交換式ではないので、接着されたものを無理やり外して、Dマウントを装着する。

想定よりもセンサー位置は深く、Dマウントのフランジバック合わせは苦労した。
センサーに赤外線カットフィルターがないので、レンズから外してセンサー前に両面テープで着ける。適当なので、落ちないといいな。

センサーサイズは1/3.2インチか。4.5x3.4mmになるので、8mmフィルム(ダブル8)のサイズに近い。ただしシネカメラは画角が狭いので、もう少しセンサーサイズが大きいほうがよかった。


マウント位置の調整を行ったら、バッテリーケース内に干渉してしまった。マウントが邪魔してバッテリーが入らない。




仕方がないので、配線を引き出してバッテリーを外付けにする。3Dプリンターでバッテリーケースを製作したが、防水になっていないので、雨天厳禁仕様だ。

ビューファインダー、バッテリーを合わせて3Dプリンターでボディを作る。
配線の引き回しやらレンズの干渉、バックフォーカス調整などなかなか苦労する。

一度内部スイッチの細い配線のハンダが外れて、細かい作業に苦労もする。その過程で液晶パネルにゴミが入ってしまった。
分解掃除すればキレイになるがまた配線を切りそうで、ゴミは見なかったことにする。見えるけど。

産業用みたいな小さな四角いカメラができた。
四角い理由は、背面のビューファインダーが大きい。背面モニターをVRゴーグル用レンズ(汎用品が売っている)で見るファインダーだ。
これで、明るい屋外でもマニュアルフォーカスが合わせられる(はず)。

Dマウントで、古いシネレンズが活用できる。
シネマ撮影では、低速シャッターが使えないので、レンズが明るい必要がある。8mmシネカメラは1955年くらいから普及し始めて、当初はDマウント交換式の明るい単焦点レンズが好まれた。(1960年代になるとズームレンズが一般的になってレンズはボディに固定される)


ZUNOW cine 13mm f1.9 で撮影。f5.6くらいに絞っている。



色が、昭和のネガカラーだ。日付が写ってしまったのもネガカラー写真っぽい。

カメラは2019年のモノなので、センサーは現代のもの。赤外線フィルターは取り外したレンズに付いていたものを、外してセンサー前に移植している。


色が「昭和」なのは、レンズのせいだ。マルチコーティング技術のない時代なので、レンズ材質で色彩が変化するのだろう。

ZUNOW cine 13mm f1.9 は、1950年代後半、8mmシネカメラ大手YASHICAなどの標準レンズとして普及した名レンズだ。

シネ撮影は画角の狭いレンズを使うので、標準レンズといっても100mmくらいの中望遠になる。画角の広い魚眼レンズを使う現代のアクションカメラとは真逆の撮影法だ。



絞りを開ければ、背景はそれなりにボケる。ボケ質は悪くなさそうだが、少しざわついても見える。ボケがスムーズになりにくいのは、小さなセンサーの影響かもしれない。





少し絞ったほうが、やはりシャープだ。
レンズは鏡胴から奥まっていて、フードは不要な感じだが、左側にゴーストがでた。


ZUNOW cine 6.5mm f1.9
6.5mmは標準画角。レンズ構成的にはレトロフォーカスで広角的。
レンズが少し曇っているところがあって、f1.9開放だと、ハイライトがにじむ。


絞れば描写はしっかりする。レンズのレトロフォーカス構成の影響で、樽型の歪曲収差がでている。もっとも、動画ならあまり気にならないだろう。


光が入ると、フレアーがでる。レンズコンディションがあまりよくないからかな。

高感度では描写は悪化する。これも小さなセンサーの影響。


改造した四角いカメラは、持ちにくいので両手で持ちたくなります。でも、角を持ちやすく、重量も軽いので、使い勝手はそれほど悪くはありません。

ビューファインダーに改造したので、背面モニターよりもフォーカスは合わせやすくなりました。しかし小さなシネレンズは被写界深度が深く、6.5mmは特に苦労します。目測で合わせたほうが速くて正確だと思いますが、ZUNOWはフィート表示なので、計算する必要があって面倒です。



いままでDマウントレンズの運用として、WEBカメラやトイカメラを改造していましたが、今回、現代のアクションカメラをベースにすることで画質は大きく向上しました。といってもスマホのカメラとあまり変わらない気がしますが。

小さいセンサーなのでボケはあまり期待できませんが、寄って絞りを開ければ背景はボケます。その一方で描写が平面的に見えるのは、諧調表現に限界のある小さなセンサーでは仕方がないのかもしれません。

レンズはZUNOW cine 6.5mm / 13mmとも開放だとフレアがでて、描写も甘めです。
絞ればかなりシャープになりますが、平面的な描写になりがちな事もあり、スマホのカメラと同じ(焦点距離だけが違う)になってしまう気もします。

一方、ファインダーを覗いて撮影する行為は面白いです。
動画も静止画も広角レンズで「だらっと撮る」スマホに比べて、「四角いカメラをムービーのように持って、画角の狭いレンズで主題を切り取る」のは新鮮です。

カメラの持ち方・覗き方で写真を撮る面白さが変わる。面白いですね。













YASHICA 8 : 8mmフィルム シネカメラ をデジタル化、WEBカメラにする。8mm film cine camera to be digitized and used as a web camera.


1950年代の8mmシネカメラは、ズームレンズの普及前なので単焦点レンズがついている。レンズは、ターレットで回転交換できる独特の形をしていた。

8mmフィルムはフォーマットサイズが3.3×4.5mmの極小サイズ。レンズも6.5mm  13mm   38mm と小さく、標準的なものでもf1.9~f1.4で、明るく高性能だ。


そのたたずまいの面白さと高性能なレンズを活用するために、デジタル改造したい。手軽な改造として、WEBカメラの中身を移植することにした。

WEBカメラで一般的な1/3インチセンサーは3.6×4.8mm。8mmフィルムとほとんど同じサイズである。


今回ロジクール(Logitech )のC600を使った。2009年発売の200万画素CMOSセンサーモデルだ。ボディがコンパクトなので基板も小さく、縦長の8mmカメラに収まるかもしれない。

スマホ外付けカメラとして改造したモノの再改造になる。



球体のWEBカメラ、C600から基板を外す。基板についていたレンズを外すとCMOSセンサーに赤外線センサーがついている。フィルターがセンサーについていると改造が楽だ。


もともと角を落としたミニマムな基板だが、8mmカメラに収めるにはサイズがギリギリなのでさらに落とせるところを落とす。

一方、ジャンクで買ったYashica-8からはシャッターとフィルム送りの機構を外す。フィルムがあったちょうどよい場所にセンサー基板を置けばWEBカメラになる。




ちょっとだけボディ内に収まらなかったので、3Dプリンターでカバーを作る。



Yashica 8は1957年発売。8mmシネカメラ初期の規格で、たくさん売れたのだろう、オークションでも最もよく見る機種の一つである。今回の改造で雰囲気のあるWEBカメラになった。Dマウントなので、好きなオールド シネレンズが交換しながら使える。

通常のWEBカメラは広角レンズがついているが、8mmフィルムカメラでは6.5mmでも標準画角、13mmは中望遠の画角になる。昔のシネ撮影は画角が狭かった。



YASHICA Claston 6.5mm f1.4
明るいレンズだが固定焦点。近距離を撮る時はマウントを緩めてフォーカスすることになる。

センサーサイズは小さく高感度は得意ではない。Webカメラは室内撮影なので、なるべく明るいレンズが良い。私の環境だとf1.9は暗く、f1.4が欲しくなる。


Dマウントの6.5mmは最も広角のレンズで、レトロフォーカスのレンズ構成。開放f1.4だとフレアがかった少し甘い描写になる。もっともWeb会議で自分をアップで撮る分には、ちょうど良いくらいだ。


ひとつ絞ってf2、フレアは消えてシャープになった。モノ撮りするなら少し絞った方が良い。

WEBカメラのセンサーは、簡単に白飛びしますね。



YASHICA Claston 13mm f1.4
カメラは被写体で、今回のレンズとは関係ない。DiMAGE7 かっこよかったな。今持つとデザインに気合が入りすぎていて、気恥ずかしい気もする。

8mmでは標準と言われる13mmだが、中望遠の画角で室内には狭い。開放f1.4から描写は悪くない。背景もボケる。


少し絞ると描写は良くなる。


開放f1.4 ボケのフレアーは良いが、白飛びしすぎ。


f2 少し絞ればフレアーは消える。
赤もつぶれやすい。WEBカメラのセンサーはコントラストの小さい屋内用ですね。



今回の改造の目的は、味気ないWEBカメラの外観と描写を、エモーションあふれるものにすることです。

仕事環境に「クラシックカメラ改造WEBカメラ」を置くと、気分が盛り上がります。ターレットでレンズ交換もたのしい(実用的には、中望遠画角の13mmはほとんど使わない)

前に改造したモノよりも、センサーサイズが気持ち大きく、高感度も強いので使いやすくなりました。(以前の改造。基板が大きくはみ出している)

カメラのファインダーも使えるのですが、フォーカスを見るにはPC画面が必要で、撮影の機動性は悪いです。結果、一般撮影は難しくWEBカメラ専用になっています。

描写は、PC内蔵の広角レンズに比べて背景もボケます。6.5mmよりも13mmのほうがシャープでメリハリがあってよいのですが、画角が狭くあまり実用には適しません。

13mmを標準にするにはセンサーサイズ1/2インチくらいのWEBカメラがよさそうです。(レンズのイメージサークルが充分に大きければ、ですが)
そんなWEBカメラが手に入ったらまた改造しましょう。




















PENTAX-110 50mm f2.8 コンパクトできれいに写る、お散歩用の中望遠レンズ。Compact and beautiful, medium telephoto lens for walking around.



小さな110フィルムの名機ペンタックス オート110。その交換レンズのなかで、中望遠の50mm f2.8はかなり気に入っているレンズだ。

とてもコンパクトなサイズで、レンズ構成は5群5枚のクセノタータイプ。



通常はレンズ構成の中心に絞りをレイアウトするが、小さなペンタックス オート110では、システムの簡略化のために、シャッター兼用の絞りが後ろのカメラ内に設定されていた。

光束は、後ろ絞りだとレンズ前方に向かって広がるので、前群は大きなレンズが必要になる。構成図をみると、前群は厚みもあるレンズで、なんだかよく写りそうだ。

今回もマウントアダプターによるデジタル撮影。110フィルムよりも、画像サイズが一回り大きなAPSデジタルで撮影する。

レンズのイメージサークルは大きく、APSをしっかりカバーしている。自作したマウントアダプターは、開放f2.8のほかにf5.6の絞りをつけた。(アダプターについて)

ビハインド絞りの影響で、絞ると周辺が減光する。






最短撮影距離は0.9mと、遠いので、近距離ヘリコイド付きのアダプターが使いやすい。最短撮影距離より寄っても、描写は良いようだ。
花はペンタックスらしい鮮やかな発色。背景はバブルボケで、2線ボケ。気をつけないとうるさくなる。







背景は2線ボケだが、前景ボケはスムーズだ。
球面収差が過剰補正のレンズ特性で、その分描写はシャープになる。






本来の110フィルムでは100mm相当になる中望遠レンズですが、ひとまわり大きなAPSデジタルでも75mm相当として使えるイメージサークルがあります。
お散歩スナップにはこのくらいが使いやすい。

装着にはマウントアダプターを使います。ただし絞りが無く開放による撮影になること、望遠レンズでは最短撮影距離が遠いという欠点があります。
私は、絞りf5.6切り替え、近接ヘリコイド内臓のマウントアダプターを自作して対応しています。(詳しくこちら)

色鮮やかでシャープな描写が気持ちの良いレンズです。
明るいレンズの多い50mmですが、開放でf2.8。けっして明るくないレンズですが、被写体に寄れれば、背景を大きくぼかすことができます。
ボケは個性的です。ボケのエッジが強調されて、点光源はシャボンのようなバブルボケになります。いわゆる2線ボケになりやすく、撮影では背景に気を使いました。
ボケはざわつきやすいですが、フォーカスの合った被写体はシャープに浮き上がるので、欠点というより個性かな、と思います。そんな描写を活かして使いこなしたいレンズでした。