軽い!うまい!安い!近接撮影にも。ニッコール引き伸しレンズで撮影してみよう。Let's take a picture with EL-NIKKOR lenses.

 フィルムからプリントするには、暗室で引き伸し器を使い、拡大投影しておこなう。そのフィルムからプリントに拡大するために使うレンズ、裏方のニッコールレンズが今回のテーマである。

もちろん引き伸しレンズを作っていたのはニコンだけではない。でも、ニコンのレンズは高評価で銘玉揃い、デザインも統一されていてかっこいい。そして何よりもたくさん流通しているおかげで中古品の価格が安い。

引き伸しレンズのフォーカスは、引き伸し器についているのでレンズにはない。絞りも手動だからとてもシンプルで、コンパクトだ。レンズの描写は画面全体に均一で、ほとんど収差がなく高性能。ただレンズのf値は暗い。設計の基準は無限遠ではなくて、50cm前後。つまり工夫すると「ちょっと暗いマクロレンズ」として一般撮影にも使えるのだ。

ニコンの引き伸しレンズ、EL-NIKKORはデザインは統一されているが、レンズ構成はバラエティがあって興味深い。あくまで性能重視でありながら、ちょっとした設定の違いから生まれたレンズ構成のバリエーション。これをみていこう。

撮影用レンズにする方法

引き伸しレンズのマウントはライカ39mmのネジ込みマウントだ。これは35mmフルサイズの撮影とプリントというシステムがライカの発明だったことにさかのぼる。歴史を感じるが、これを一般的なm42マウントに変更するのがおすすめだ。L39ネジにかぶせるミニマムなアダプターが通販で数百円で手に入る。

フォーカスはレンズについていないので、m42ヘリコイド中間リングをつかう。フランジバックはレンズによってみな違うので、数種類持つことになる。日本製は高精度だが高価。中華性はちょっとガタがあることもあるが安価。私は中華製。調整用に厚さの変わらないm42中間リングがあると便利。これも中華製なら安価。

注意として、中間リングには内面反射がある。モルトプレーンを貼って対策をする。

M42中間リングをカメラに装着するために、m42マウントアダプターをつかう。厚さ1mmくらいの薄型タイプが良い。




EL-NIKKOR 40mm f4N 

35mmフルサイズをカバーする準広角の引き伸しレンズは珍しい。ハーフサイズだけでなく大伸しの用途なども考えていたのだろう。これを一般撮影に使うとフルサイズならば広角的なマクロになるし、APSでも使いやすい。

広めの画角でも周辺まで均一な描写になるように、超広角レンズに使われる対照型構成、変形ビオゴンのレンズ構成である。真ん中の分厚い2組の貼り合わせレンズに対して、前後に薄く曲率の大きなメニスカスレンズを配置している。コストがかかっていそうな構成だ。

このレンズをソニーaに装着するには、薄型のm42マウントアダプターとm42ヘリコイド中間リングをトータル25mm以下になるように使う。ニコンZなら+2mm。(→作例)


EL-NIKKOR 50mm f2.8

35mmフルサイズ用の標準レンズ。これは旧型シリーズで、ダブルガウスの前側とオルソメターの後ろ側を組み合わせた「エルニッコールタイプ」変形クセノターのレンズ構成を持つ。解像度に優れた構成のようだ。

ソニーaの場合はヘリコイド中間リングをトータル26mmにする。


EL-NIKKOR 50mm f2.8N

1979年に上記の改良型レンズ。レンズ構成は変わって、ダブルガウスになっている。最も流通するレンズのため、コストを気にしながらカラー写真に対応したのだろうか。もともと良く写るレンズのどこを改良したのか、気になっている。(作例、新旧比較しています


f2.8という口径比に比べてレンズ径は大きい。前玉は直径3cmあるので、f1.7クラスの口径だ。そのぶん周辺減光の対策をしているのだろう。ソニーaの場合はヘリコイド中間リングのトータル長は25mm以下にする。


EL-NIKKOR 50mm f4/f4N

上記のf2.8バージョンに対しての廉価版だが、これらも評判の良いレンズ。3群4枚のテッサー構成でよく写るらしい。ニコンによるとf8まで絞ることで上級レンズ同等の描写力を持つ。


EL-NIKKOR 63mm f2.8N

63mmは超精密なマイクロフィルムに対応するため、エルニッコールタイプで高解像度に作られている。EL -NIKKORの中では流通が少ない。そのため高性能の伝説がある旧型f3.5だけでなく、新型f2.8でも程度の良い中古は高価だ。→その高解像力を体験する作例



EL-NIKKOR 75mm f4 

5.6cm×5.6cmの中判フィルム用の旧型タイプ。50mm f4 と同様に3群4枚のテッサー構成を持つ。新型もテッサー構成は変わらない。よくできたテッサーの見本のような写り。テッサーはテレフォト気味のレンズ構成なので、全長が短くて取り回しが良い。

ソニーaのヘリコイド中間リングのトータル長は45mm以下にする。中望遠だがコンパクトで使いやすい。→実際に使用してみた作例


EL-NIKKOR 80mm f5.6N

5.6cm×6.9cmの67判までカバー。大判の広角レンズに多いオルソメター構成。上記の75mmの高級バージョンでもある。比べるとレンズ径が大きいにも関わらずf値が暗い。広くフラットな描写を考えているのだろう。なかなか奥が深い。→作例

ソニーaのヘリコイド中間リングのトータル長は55mm以下にする。この辺りから長いな、と感じるようになる。


このEL-NIKKORシリーズは、さらに大判をカバーする105mm 135mm 210mm〜と続く。テレフォトでないオルソメター構成なので撮影時の全長はどんどん長くなる。でかく高価になって手軽ではないため、私の興味からは外れた。





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