銘レンズから銘レンズへ
描写の良さで評判の良かった旧EL-NIKKOR 50mm f2.8だが、1956年の発売から長い時が経て、1979年にモデルチェンジした。評価の高かった製品のモデルチェンジは難しい。新素材を使ってリファインする、みたいなのがよくあるパターンだが、これは違った。レンズ構成から大きく変えたのだ。このストーリーはニコンの人気コンテンツ、ニッコールレンズ千夜一夜「第九夜」で軽く触れらている。
右の旧型は変形クセノター、いわゆるエルニッコールタイプのレンズ構成。解像力に優れる構成らしい。その一方でボケは硬い印象。
左の新型は変形ガウス。距離による収差変動が少なく、ボケも安定するとのこと。前玉径は30mmもあり、f1.7のレンズと同じくらいだ。この大きさで周辺光量を確保しているのだろう。
さて、この新旧の写りの違いはどんな感じだろうか。
新型EL-NIKKOR 50mm f2.8Nの描写
f2.8開放で撮ってみる。カメラはフルサイズ2400万画素のソニーa7。
旧型EL-NIKKOR 50mmf2.8の描写
これも良いレンズだが、4隅の描写は新型のほうが少し良い。確かに新型は改善されている。
新型EL-NIKKOR 50mm f2.8Nの作例
引き伸しレンズの描写が一番良いのは、引き伸ばしの距離だから、いわゆるマクロレンズと同じである。まずは近接撮影をしてみよう。
質感、立体感ともによく写っている。ここまでよるとボケも柔らかくて良い感じ。
(一般的に、近くによるほど球面収差が補正不足になり、背景のボケが柔らかくなる)
引き伸しレンズの基準距離は1m以内だから、ここまで離れると基準から外れる。球面収差は過剰修正になり、ボケは汚くなりやすい。
少し絞って、ボカさないようにとれば、申し分のない描写。
新旧比較して
さてこの新旧EL-NIKKOR、レンズ構成は違うが設計思想は同じ感じだ。少し絞った時の解像力はしっかりしている。開放の時の描写は新型のほうが良いが、ボケはどちらも注意が必要で、汚くなる距離がある。ひょっとすると旧型の方がボケはまだ素直かもしれない。
モデルチェンジで改善されたのは開放での描写。写りの思想は同じ。一般撮影に使うのならば、微妙だけど好みで選んで問題のない感じだと思った。
0 件のコメント:
コメントを投稿