今回紹介するレンズは、1987年のフイルムカメラ、
ニコンTW2D(ピカイチ テレ エクセル)35mmf3.5である。
このTW2Dは、いわゆる2焦点カメラで、広角35mmと望遠70mmの切り替え式になっている。望遠時には伸縮式のレンズがさらに繰り出して、後部にテレコンバーターを挿入する仕掛けだ。望遠レンズは広角の中心部分を拡大するため、広角レンズの性能(中心部)は、特に高性能であることが条件になる。
もう一つ、望遠時に延ばせる伸縮式のレンズ鏡胴であることが条件になるので、収納時は縮められる。つまり描写を落とすような無理なコンパクト化は必要ない。
以上のことから、2焦点カメラの広角側レンズは期待ができる。しかも天下のニコン、安定のテッサータイプの3群4枚レンズだ。期待できるだろう。
今回は、もう一つのレンズの話がある。ロシアレンズ、ソビエト時代の普及版標準レンズ「インダスター50」である。
インダスター50は1953年からソビエト連邦で生産されたレンズで、ツアイス・テッサー(3群4枚構成)の正統な後継者ではある(敗戦国ドイツから人モノごとソビエトに移った
これがカメラ王国、ロシアの廉価版標準レンズを1980年まで支えてきた。このレンズは極めてシンプルな鏡胴を持っていて、レンズ・絞りごとフォーカスで回ってしまう簡単な回転ヘリコロイド式なのだ。おかげでとても安くて改造しやすい。しかもフランジバックの短いLマウント、長いM39ゼニット マウントの共用設計になっている。短い状態でEマウントをつければ、コンパクトなレンズの母体になる。
うちにある59年製のカビ玉ジャンクレンズは、そうして、改造のベースになっている。
レンズユニットを外したインダスター50。これに今回の35mmf3.5レンズを装着する。
銘板がインダスターのままでもよかったのだが、先端に別レンズの化粧リングを取り付ける。これで絞りが回しやすくなる。コンパクトで素敵な佇まいだ。
遠景では4隅に色かぶりが発生する。また像面湾曲があるようで、開放では4隅がぼやける。この像面湾曲はデジタルとの相性かもしれない。
F8まで絞れば、全体に安定する。
晴れていれば、色かぶりは微妙なので気にならない。
近距離でも、中心部はシャープな描写をする。テッサーらしく近距離も強く、ボケも乱れない。いい感じ。
さすがニコン、良く写ります。初代ピカイチのゾナータイプも良く写りましたが、デジタルとの相性がいまいちでした。こちらの方が相性は良さそうです。
以下、追加しました。
この3枚はf8に絞って撮ったもの。35mmでf8なのでパンフォーカス気味になりますが、このレンズは特に被写界深度が深い印象です。撮っていてもピーキングがうまくはたらかず(全景で全部にピーキングが合って、拡大ではどこにも来ない)どこにピントが来ているのかわからない感じです。
思うに、ピント位置のシャープさは、際立っていないのでしょう。
これはAFの甘さをカバーするためにわざと設計していることではないか、と思っています。(これは初代ピカイチの解説に ”シャープネスを最大限引き出しつつ、見かけ上の被写界深度を出来る限り伸ばす設計” と書かれています:ニッコール千夜一夜物語三十三夜)
ということで良いレンズだけど、目が覚めるようなシャープさはない、感じでした。
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