グッドデザインから派生した超大口径レンズ ヤシカ ハーフ14 富岡光学製 YASHINON-DX 32mm f1.4 YASHICA HALF14


デザインが素敵なヤシカ ハーフ17と、その派生機種ハーフ14について書く。
1964年製のヤシカ ハーフ17のデザインはプロダクトデザインの老舗/大手のGKデザインが手掛けている。GKは鉄道の車両やヤマハのモーターサイクルなどのデザインが有名だ。

GKの手掛けたカメラでは、ズノー ペンタフレックス、ヤシカ エレクトロ35、ヤシカ ハーフ17が知られている。

ズノーはとても美しいカメラだが、その低いプロポーションにデザイン優先なところがあって機能が犠牲になっている(早田カメラ店さま)らしい。




エレクトロ35はベストセラーになった良いカメラで、宇宙を感じるレトロフューチャーなスタイリングは今見てもいい感じだが、一般的なレイアウトに要素を足しているため、ちょっと複雑に見える。


その点写真右側のヤシカ ハーフ17は素晴らしい
セレン光電池はツブツブの受光部のデザイン処理が難しいけれど、これは明るいシルバーのフィルターリングで強くまとめている。ボディ上部は丸いプレスパーツが特徴的で、ギラっと光ったメッキは、小さなボディが金属の塊でみえる効果があり、対照的なアルミで軽いレンズがおしゃれに見える。
また、巻き上げを下面にしてシンプルに見せているのも重要だ。
もうひとつ、YASHICAのロゴだ。斜体のかかった軽快なロゴは、会社のロゴとは別物である。ブランディング的には会社と同じヤシカロゴがいいのだろうが、書体デザインのバランスが悪い。ハーフ17のYASHICAロゴのほうがかっこいいのは確かである。

そんなハーフ17には派生機種があって、2年後の1966年に発売されたハーフ14(左側)
特徴はハーフ17のf1.7と十分に明るかったレンズに対して、f1.4レンズとさらに大口径に変更されたことだ。リング状に配置されたセレン光電池は暗いところに弱点を持つため、暗さに強いCdsに変更されて、余ったスペースには化粧板が置かれた。

残念なのはレンズ径が大きくなったことでチャーミングなファインダー窓が蹴られて不格好になったこと。大口径レンズそのものでけられたのなら格好がつくが、化粧板でけられたのではみっともない。
企画的には人気のハーフ17に、ハイパワーエンジンを積んだ上位機種をつくったつもりなのだと思うが、大きすぎるレンズ鏡胴はデザインのバランスを崩している。でも車と同じで、でかいエンジンなりの「やんちゃ」感をデザインすれば、崩れたバランスも魅力に変えることができる。14も17にならってデザインにもっと力を入れれば、魅力あるカメラになったのに、と思う。

おしゃれだったYASHICAロゴも、あか抜けない会社ロゴにもどっている。ほかにも、せっかくの大口径f1.4開放値が活用できないプログラムオートや、そもそも目測式のフォーカスではf1.4の浅いフォーカスを合わせるのは無理、といった突っ込みどころがあった。したがって、常識を超えた大口径レンズだが本来の写りはネットでもよくわからない。

この時代の大口径は暗いところを撮ることが目的で、背景をぼかす良さは目的ではない。しかしながら、設計には定評のある富岡光学製であり、手慣れた4群6枚構成のダブルガウス型のレンズだ。実際の写りには期待が持てる。

このレンズを現代のデジカメ用に改造してみよう
コンパクトカメラのレンズは固定されているので、分解してレンズを外す。


シャッターユニットはプログラム専用の構造で思ったよりもシンプルだ。本当にこのレンズ鏡胴の太さが必要だったのだろうか。


ジャンクのカメラから奪ったレンズなので完全ではない。レンズの貼り合わせ面が傷のように曇ってきている。でも、このくらいなら普通に写るだろう。
このレンズにカメラ用のマウント(Mマウント)をつけて、ミラーレスカメラに装着できるようにする。

絞りはシャッターを簡略化するためにプログラムオート用とフラッシュ用の2種類を搭載し
ている。2系統あるけど、どちらも2枚絞りで不格好なひし形になる。中途半端に絞るとボケは汚くなりそうだ。

もともとあったレンズのヘリコイドは分解して取り外している。フォーカスはMマウント用のヘリコイドアダプターでおこなう。オリジナルよりも寄れるから便利だ。



すべて開放f1.4で撮影だが、大口径にもかかわらずよく結像している。シャープさや解像度は少し弱い感じがするが、立体感はある。それより暗いところでも余裕で撮れるのは、明るいレンズならではと感じた。f1.7に比べてf1.4のアドバンテージは、確かにある
ボケは、近距離では背景が2線ボケでうるさくなるが、遠景では落ち着く。全体に線の細い優しい描写だけど、暖色の色味が良くて雰囲気が明るい感じがする

悪くないので、また撮影してみましょう。

追加で撮ってみました。
ボケは大きいですが、2線ボケ。ざわついています。


ざわつかない背景ならば、ニュアンスのある描写が活きます。

開放だとコマ収差のせいか描写がフレアがかりますが、線の細い、良い感じで写ります。富岡光学の良さが出ている、と思いました。


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