VIVITAR ULTRA WIDE & SLIM 22mm f11 絶妙なバランス The lens is exquisitely balanced and takes cool pictures.

 


VIVITAR ULTRA WIDE & SLIM は、伝説のカメラでもある。

中国、香港の光学製品メーカーSUNPETが90年代に開発したものらしい。オールプラスチックのトイカメラで、特徴は超広角22mmのレンズだ。

絞りはf11で固定焦点、固定露出。2群2枚のプラスチックレンズは、周辺減光が激しく、逆光には極端に弱い。

そんなピーキーなトイカメラが、ドラマチックな絵を作ると伝説になった。

伝説になっても安価なトイカメラなのでたくさん売れた。巻き上げ機構に問題があるらしく、壊れたジャンクも多い。

この伝説のレンズを、改造してデジタルカメラで撮ってみよう。





適当に見た目から起こしたレンズ構成図 フィルムは湾曲しているので、点線で記した。

22mmと焦点距離の短いレンズだが、前側は弱いメニスカス凸レンズ、後玉は強いメニスカス凸の組み合わせで、レトロフォーカス気味だ。完全な対象形ではないのでデジタル相性はそれほど悪くないかもしれない。


フィルム面は、湾曲させて像面湾曲や歪曲収差に対応させている。改造して使うデジタルセンサーは平面だが、センサー前に赤外線除去フィルターがある。それには同じように像面湾曲させる効果がある。果たしてどのように写るだろうか。



分解というよりも、プラスチックを切り刻んでレンズを切り出すが、ヘリコイドアダプタに付けるのは難しそうだ。もともと固定焦点だが、超広角は寄りたいので、フォーカス機構も入れたい。レンズ2枚の単純構成なので、レンズだけとりだして鏡胴を3Dプリンターで製作した。


絞りは同様にf11ぐらいを狙ったが、すこし小さくなったようだ。フォーカス用ヘリコイドは2条で自作したが、4条の方が良かった。最短撮影距離は30cmくらいになったが、できればもっと寄りたい。

製作したオリジナル鏡胴によるレンズ。U字型の溝が、ヘリコイドの回転制限になっている。試写してみたところ、やはり逆光には弱く、白っちゃけやすい。(光線漏れもあるかもしれない)

対策として、鏡胴ごとかぶせるフードも製作した。









もともとのカメラは湾曲したフィルム面を持ち、少し樽型な歪曲がある。それに対して平面な画像素子を使うデジタルカメラでは、少し糸巻き型になった。

とはいえ「写ルンです スーパースリム」(同様に2群2枚のレンズ構成)のデジタル改造版よりも歪曲収差は少ない。



周辺減光が大きく隅は解像しないレンズだが、描写に立体感があって被写体が引き立つ。

大きな周辺減光は隅のゆるい描写を隠して、視線を被写体に集中させる効果がある。僅か2枚のレンズで無理をした超広角だが、効果的な描写にバランスさせている。



とはいえ周辺減光はかなり厳しい。じっさい、4隅は蹴られている気がする。本来このレンズは超広角22mmの画角はないのではないか。



40cmくらいで撮影。立体感があっても解像度が高いわけではない。
絞り込まれているのでフォーカスのピークがわかりにくく苦労する。
とはいえ、適当に合わせるとピンぼけになる。





逆光には弱く、盛大にフレアーが出る。後玉に少し曇りがあるのも原因。でも光が写って気持ちが良いし、低下したコントラストは後で少し上げれば良い。








うわさ通り、ドラマチックに写るレンズです。

絞っているので被写界深度は深いですが、立体感のある写りが素晴らしく、被写体が浮き上がります。

とはいえ2群2枚のレンズなので周辺は解像しません。ところがきつい周辺減光があって、結果、周辺はあまり気にならなくなるのはマジックのような設計バランスの妙だと思いました。

欠点は解像力でしょうか。立体感はあるのに解像力は弱く、拡大してもフォーカシングは苦労します。また周辺減光は悪くないですが、4隅部はきつすぎで、イメージサークル外で蹴られているようです。








0 件のコメント:

コメントを投稿