1988年に生まれた工事現場専用の記録カメラは、過酷な使い方に耐える大柄でタフなボディと、28mm広角レンズに特徴がある。35〜40mmの準広角仕様もあったが、撮影に被写体との距離がとりにくい工事現場では広角28mmレンズの方が使いやすかったと思われ、ニーズも多かった。
無理にコンパクトにしていない、コストをかけた広角28mmレンズは、他のコンパクトカメラにあまり無く、工事現場記録カメラ独自のものである。
そんな28mm広角レンズを持った、フィルム時代の「工事現場カメラ」を比較する。
主に3系列がある。オリジナルをつくった「コニカ 現場監督」、もともとあったヘビーデューティカメラを工事現場用に仕立て直した「フジ 工事カメラ」、時代に合わせて使いやすくオートフォーカス化した「フジ ワークレコード」でありそれぞれに28mm 広角レンズ仕様がある。
コニカ現場監督の28mm広角レンズ仕様は、1990年に初期型の「現場監督28」、1992年に改良されて新型レンズになった「NEW現場監督28」その後継の「現場監督28WB」になる。
右側が初代で、大柄な7群8枚のレンズがつく。バックフォーカスが極めて短く、改造してデジタルに付けるのは難しい。
左側は3代目になる現場監督28WB。2代目共通の5群5枚のレンズを持ち、バックフォーカスも十分あって、デジタル用に改造可能だ。(現場監督28とその改造について)
「フジ 工事カメラK-28」は1991年に現場監督に対抗して発売された。時代遅れのマニュアルフォーカスだがその分シンプルで安価であり、2002年まで販売されたようだ。5群5枚のレンズでこれも改造可能。(フジ工事カメラK-28と、その改造について)
オートフォーカス化された「フジ ワークレコード」は1993年に発売された。ゴツいレンズガードまで付いたデザインで特殊用途感がある。レンズは新設計で5群6枚、バックフォーカスが短くて、改造はむずかしそうだ。
右がKONICA 28mm f3.5、左がFUJI K-28工事カメラの28mm f3.9 になる。どちらも5群5枚の構成で、レンズの反射を見ると、構成・コーティングの色は驚くほど似ている。(口径が違うこともあり、まったく同じではない)
下は、絞りf3.5開放。意外なほど背景はボケる。球面収差が補正不足に調整されていて、その結果後ろボケが大きくなっている、と想像。前玉回転フォーカスの影響もあるだろう。(近距離になると球面収差が補正不足に変化する)
f3.9開放。1/3ほどf 値が暗いこともあるが、ボケは小さく、コニカ現場監督との差が出た。
KONICA 28mm f3.5の写りを見てみる。
絞りf8。樽型の歪曲収差がある。
こちらも、コニカと同じようなたる型の歪曲収差。
周辺減光も少なく、色かぶりもあまり気にならない。
KONICA 現場監督28WB/28mm f3.5 はフジに比べて1/3絞り明るいのだけど、それ以上に背景がボケるレンズだ。フォーカス部のコントラストがよく背景から浮き上がって見える。立体感もあって好きな描写だ。
欠点はデジタルセンサーとの相性で、周辺が色かぶりをすることがある。周辺減光も大きめだ。
FUJI K-28工事カメラ/FUJINON 28mm f3.9 は均質によく解像する印象。記録用レンズとしては正しい個性だとおもう。
しかもデジタル相性がよく、周辺減光が少なく色かぶりもしない。でもコニカと比較してしまうと、描写に艶めかしさが足りない。
今、オールドレンズを使うのは、シリアスな記録用なわけがなく、そういう意味ではコニカのほうが魅力的だ。描写の艶めかしさは写真に活力を加えてくれるだろう。
改造レンズとしてはデジタル相性が問題になるが、少しの欠点なので、私のような古いデジカメでなく、新しいものなら気にならないかもしれない。
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