FUJI K-28 工事カメラ:オールド工事カメラの28mmレンズを改造する。Modifying a 28mm lens on the old construction camera.

カメラのような精密機器は水や衝撃に弱く、特にフィルム時代は非常に気を使った。

水にぬれるシーンで、へビューデューティに使えるコンパクトカメラは、1979年のフジフイルム製FUJICA HD-1が最初である。それ以前は、ニコンの本格的な水中撮影用ニコノスしかなかった。

HD-1は世界初の洗えるコンパクトカメラで、衝撃にも強く、タフでシンプル「ダイバーズウォッチ」的デザインは今も魅力的だ。その後1990年まで小改良しながら、シリーズは続いた。

ヘビーデューティーなカメラは、海などのレジャーシーンで使われるが、一方で厳しい条件で記録するためのニーズがある。1988年に発売されたコニカ「現場監督」はそんな仕事用にニーズを絞って「Gショック」的デザインでヒットした。強力なフジフイルムのHDシリーズに対抗するためのターゲットの明確化が、ゴツくて骨っぽい魅力を作った。


マーケットをさらわれたフジフイルムは、HDシリーズをあきらめ、1991年に「工事カメラ」FUJI K-35とK-28 を発売する。

ごつい「現場監督」をさらに無骨にした建機のようなデザインだ。

ライバルのオートフォーカスに対して、マニュアルフォーカスでシャッター1/100秒固定の簡易自動露出、壊れにくそうだがチープなトイカメラのスペックである。でもこのK-28は 28mm の広角レンズで、新設計5枚5群構成のレンズを持つ。絞りは理想的にレンズ構成内に入り無理なコンパクト化もしていない。このレンズは魅力的だ。これが今回のテーマだ。


低価格だけど無骨でロースペックな「工事カメラ」は、2年後1993年にオートフォーカス化された「ワークレコード」シリーズになり、さらに2003年デジタル化されて「BIGJOB」シリーズになる。これらのいいかげんなネーミングを見ると、当時のフジフイルムにはブランドをデザインする意識がなかったようだ。

(ちなみにカメラブランド自体も、FUJICA → FUJI → FUJIFILM と変化している)



K-28は、実は長く売られていたようで、現場で酷使された中古はそこそこある。(2002年まで発売、K-35は1995年までなので広角28mmのほうがニーズがあったようだ。)

分解改造目的なので、汚いジャンクを手に入れる。


前面の分厚い保護フィルター、ガッチリと閉まるフィルム室など防水カメラらしい構造。

大柄なボディなのでレンズも無理にコンパクト化していない。28mm、5群5枚のレンズは、レンズフィルム室から見るとバックフォーカスにも余裕があるので、デジタル相性も悪くなさそうだ。

フォーカスは、ニコノスのようなノブ式になっていて、ギア駆動で前群を動かす。面白いが今回の改造では固定してレンズ全体を動かす全群繰り出しにしよう。(構造は複雑になるが、近距離の収差変動が改善する)


レンズボード(基板)を切り抜いて、絞り操作用のレバーをつける。フォーカスの前玉回転ヘリコイドは接着固定した。


3Dプリンターで鏡胴を作る。フォーカスは基板ごと全群繰り出し。基板を収めるために外径が大きくなってしまった。フォーカスを回転ヘリコイドにしてなるべくコンパクトにしたが、それでもホールディングぎりぎりの太さがある。


絞り操作はノブでおこなう。フォーカスは回転ヘリコイドなので絞りノブごと回ってしまう。
外径は大きいが、プラスチック製なので軽い。持ってみると、悪くないバランスになった。撮影が楽しみだ。

まずは隅の描写をチェックする。
右上の「ハナモモ」を拡大してみる
開放f3.9で撮ると、隅部にはコマ収差があるようで鮮明には解像しない。


f6.7くらい。絞ることでほぼ隅までシャープに解像する。デジタル相性も良く 色被りもない。よいレンズだ。



樽型の歪曲収差。結構目立つ。直線の構造物を記録することの多い「工事カメラ」のニーズでは問題なかったのか。
とはいえ、一般撮影ではあまり気にならないし、デジタルならば修正することも容易だ。






以上、工事現場からでした。隅まできちんと描写していて、記録ニーズには良い感じです。





広角レンズらしく、被写体にぐっと寄って撮ってみる。
写りには立体感があり、良い雰囲気になった。好印象。

f6.7。2枚絞りの四芒星形がボケに現れる。面白いが、うるさくもある。


逆光とゴースト。ド逆光なので、このくらいは悪くないかな。

開放では、周辺部にコマ収差が出る。一眼レフ用のレンズよりは描写は劣るが、コンパクトカメラ用のレンズでは、かなり良いほうだ。

フジフィルムの工事カメラ、フィルムカメラとして壊れにくく(自動化されていないので、壊れるところがあまりない)レンズも優秀です。コニカ現場監督にくらべて地味な存在ですが、お勧めできるカメラだと思います。
レンズが優秀ということで見直すと、建機のようなデザインも個性的で面白いですし、ノブによるマニュアルフォーカスも楽しそうです。
また、本当にぼろいジャンクがありますので、私のようにデジタル用に改造するのもおすすめです。















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