センサー スタックの問題とクローズアップレンズ A Sensor Stack Problem and Close-up lens

デジカメのセンサーの前にはフィルターがある。赤外線の影響と高周波モアレを防ぐためであることは知っていた。でもそれはかなり厚く、光学的にかなり影響を与えていることには気が付かなかった。そのセンサー前のスタックは斜めの光線の焦点を後退させ、像面湾曲と像の流れをひき起こすらしい。


厚いセンサー前のフィルターによって、まっすぐ入る光と斜めに入る光に差が生じてしまう。図ではもともとのシアン色で示した平らな像面に対して、デジカメではマゼンダ色で示した湾曲した像面になってしまう。これでは平面にフォーカスしないし、像も流れるだろう。
そういえば、リコーGRのレンズ構成図でもセンサー前のフィルタースタックは表現されていた。
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/gr-2/feature/

でも、最近ネットの話題になってから気になりだした。ソニーのa7ではセンサースタックの厚さが2㎜もあるらしい。ニコンのZシリーズは約1㎜ということで、とても興味深い。使ってみたい。
でも、すぐに買うわけにもいかない。いろいろ見ているとクローズアップレンズを使う対処療法があるらしい。クローズアップレンズはセンサースタックと反対方向に像面湾曲をひき起こす。

クローズアップレンズを付けると、もともとのシアン色の平らな像面が、マゼンダ色の湾曲した面に前進する。反対の収差をひき起こすことによって、毒をもって毒を制する考え方だ。とても面白い。実験してみよう。
さて実験は、ニコンピカイチのレンズでやってみようと思う。


このレンズは評判が良いのに、デジタルだと像面湾曲が強く発生してしまう。ジャンクカメラはもう一台手に入れたので、前に作った改造レンズと比較できる。
レンズをカメラから取り外し、クローズアップレンズを付ける。さてどのくらいの強さのレンズがいいのか、これがわからない。ネットで調べると、これより収差のすくないレンズで、3000㎜~1000㎜で実験されている。

昔の2眼レフのもので、700㎜くらいの焦点距離のクローズアップレンズがある。これを使おう。径が小さくてちょうどいい。
装着場所は、レンズの前・後、表・裏向き、4パターンを試したが、通常通り表側でレンズ前につけるのが一番良かった。

レンズ前面にクローズアップレンズ(700mm)を装着して無限遠を出してMマウント化する。フォーカスはヘリコイドアダプター。

35㎜と700㎜のレンズを組み合わせるので、実質焦点距離は33㎜に広角化される。
改造レンズはかっこよくできたが、接着剤がはみ出してしまった。


さて、写りはどうだろうか。



上がクローズアップレンズを付けたもので、下がノーマル。デジタルとの相性が悪くて絞り開放だとこんな感じ。右下を拡大すると、上のクローズアップ付きは、シャープではないけど全体的に解像していて、下のノーマルは中間域までは解像して周辺はぼやける。











補正レンズとして、クローズアップレンズを付けることについて、気づいたところは
〇. ワイコン的効果で広角化されている
〇. クローズアップレンズを付けた方が周辺画像は改善された!
△. 中心部はノーマルのほうが少しシャープだ。
△. クローズアップレンズによる糸巻き型の歪曲収差が発生している。

どちらにしろ遠景だと開放絞りは使えそうもない。絞ってみましょう。

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