MAMIYA 35 Metra (1958)
1950年代、カメラの価格は世界的に高値安定していた。そのため日本メーカーに価格競争力が充分にあり、その分コストをかけたカメラ開発ができた。日本製カメラは高性能化が進み、レンズも大口径レンズが一般的になっていく。
マミヤも1957年に4.8㎝ f2レンズを開発した。しかしライバルのレンズはさらに大口径化してf1.9が多くなり、翌1958年にはマミヤセコールもf1.9になる。
貼り革の下のねじでレンズボードを外す。配線がないので構造がシンプルだ。
マミヤは技術のオリジナリティにこだわりを持ち、レンズ構成も独自なものが多い。このマミヤセコール4.8cm f1.9もダブルガウスを独自にアレンジした構成を持っている。
f1.9のセコールレンズが装着された MAMIYA 35 Metra(1958年製)
メカニカルなデザインがかっこいいカメラだ。今回かなり汚いジャンクを追加で手に入れた。このレンズをミラーレス用に改造する。
「M25(p0.5)ネジからM42マウントへの変換アダプター」を活用すると改造は簡単だ。
改造の前に、レンズの分解清掃とシャッターの開放化を行う。
掃除しながら「独自のレンズ構成」をスケッチした。
見た目で描いた部分もあるので正確ではない。また、絞りから後ろの後部ユニットは分解しなかったので反射からの推測である。
独自のレンズ構成は、中大型カメラに多く使われるオルソメターに似ているが、f2と明るく、ダブルガウスの独自アレンジのようだ。マミヤ以外に見たことがなく、このレンズの撮影体験は価値あるものだとおもう。(以前撮影した時の描写も良かった)
スペックだけは競争力をもたせるため、レンズはそのままで表記だけ大口径に変えたようにみえる。技術にこだわるマミヤが好きだったが、こんなインチキは残念だ…。
絞りの前側、3枚目のレンズは少し黄変していたので測定してみると、わずかに放射線が検出された。含有量の低いランタン・トリウムレンズかもしれない。トリウムレンズは現代の基準で見ても高性能な光学特性を持っている。
f5.6
改造レンズの完成。フォーカスリングがついているが、隙間隠しの飾りなので機能しない。ヘリコイドアダプターでフォーカスを行う。アダプターは17-31mmのものが適合して、無限遠(ちょっとオーバーインフ)から35㎝くらいまでフォーカスできて使いやすい。(もともとの最短撮影距離は0.9mと遠い)
開放f1.9ではフレアーが多く幻想的な描写。
絵画的だが、立体感は少ない。周辺減光もかなりある(嫌いではない)。
像面湾曲は少なく、ボケは周辺まで安定している。
f5.6にしぼると、シャープになってフォーカス面が浮き立つ。立体感のある気持ちの良い描写。隅まで安定している。
f1.9開放
絞ればシャープで、立体的な像をむすぶ。
f1.9
金属の光る鎖は、軸上色収差に厳しい被写体だが、開放f1.9、f5.6ともに色収差はない。とてもよく補正されている。
SEKOR 4.8cm f1.9は、個性的なレンズ構成から、個性的で素晴らしい描写をします。
f5.6
f1.9 点光源を撮ると、周辺部では鳥の翼のような非点収差が発生する。SEKOR 4.8cm f1.9は、個性的なレンズ構成から、個性的で素晴らしい描写をします。
開放f1.9ではフレアー/周辺減光が多く、とても幻想的。
絞るにつれてフレアーは消えて、f5.6ではシャープになって主題が背景から浮き上がる、立体的な描写になります。
素晴らしいレンズですが、絞りを開けるほどフレアーが増えるので、このレンズ構成ではf2が限界だったのかもしれません。1960年にはちゃんとf1.9の明るさがある新しいSEKOR 48mm f1.9がでますが、レンズ構成は通常のダブルガウスになりました。
このレンズ以降セコール オリジナル ガウスは開発されていないようです。
長いレンズの歴史でたぶんこれしかないレンズです。f2という明るさだからこそ出せた魅力だと思います。
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