はじめに、写真のボケと球面収差について
屈折で光を集めるレンズは、一般に球面で造られる。だがこれはレンズのつくり易さからで、理想的な形ではない。
理想ではないため、光が一点に集まらない球面収差が発生する。これを解決するための非球面レンズがあるが、やはりこれも設計生産しやすい擬似的な曲面である。
正しいレンズの曲面は、つい最近2018年に、設計する方法が見つかった。
凄いけど美しくない形だ。真理は美しいはずだが…。他にも解があるのではないだろうか。
収差を減らすために、レンズは複数枚で構成されているが、収差はなくすことはできない。特にこの球面収差をどうまとめるかがレンズの個性を生むらしい。
まとめ方でレンズの描写とボケが変化する。まとめ方を分けると3つだ。
補正不足(アンダーコレクション):
開放時からコントラストは良好だがにじみが出て解像力は不足する。絞ることで改善するが、フォーカスが絞りで変化するフォーカスシフトがある。背景のボケはなだらかにぼける。
完全補正(フルコレクション):
開放時に安定した描写。背景のボケは2線ボケになりやすくうるさくなることがある。
過剰修正(オーバーコレクション):
開放時にフレアーがかりコントラストが不足するが、線の細い高解像が得られる。少し絞るとコントラストが急上昇する。背景のボケは2線ボケになりやすい。
どのまとめ方にも良さがあり、うまく引き出したものが良いレンズといえる。
プロジェクターレンズ
1973年製のスライドプロジェクター CANON SLIDESTAR 302、ニーズは無く捨て値で手に入る。それに付いていたレンズ、 CANON LENS P 75mm f2.5 が今回のテーマである。
プロジェクターレンズはスライド投影機に使うレンズで、絞りはなく開放で使う。このキヤノン レンズは3枚構成のトリプレットレンズで、f2.5と明るい。
プロジェクターレンズはスクリーンに投影するので、画面全体に均等であることが求められ、ボケは関係ない。したがって球面収差は完全補正をしているはずだ。
予想される写りは、無理をした開放値によるハイライトの滲みとエッジの効いた背景の2線ボケ。点光源をぼかせば綺麗なバブルボケが得られるかもしれない。特化したレンズだからこそ持つ個性を楽しんでみよう。
改造はプロジェクターレンズをM42化、ヘリコイドアダプターでフォーカスとする。25mm-55mmのアダプターをつかいたかったので、レンズ後部のプラスチックを1mm削って(3Dプリンター製の) M42マウントを設置した。
レンズ鏡胴はプラスチックで、軽い。見た目はチープだが軽快に撮影できる。
素晴らしいボケっぷりである。バブルボケがキラキラして、現実よりもキレイかもしれない。
背景ボケはエッジの強調されたバブルボケ、前ボケは中間域のドーナツ型。球面収差は、完全補正型のようだ。
比較としてTOPCON の2眼レフについていた75mmトリプレットレンズ(改造)の描写を見てみる。(その他の作例)
TOPCON TOKO 75mm f3.5 開放
現実に近い?素直なボケである。TOPCON TOKO はアンダーコレクション気味にまとめたようだ。6×6の中判フィルム用なので、レンズ解像力よりもコントラストを重視したと思う。
同じ3群3枚のトリプレットでも、描写の違いが面白い。
でも、撮っていて楽しいのは、キラキラ写るプロジェクター用CANON LENSの方だ。
以下、CANON LENS P 75mm f2.5
この距離で写した写真だけグルグルボケになった。距離によって変わるが、グルグルすることはあまり気にならない。
キヤノンのレンズらしく、発色が良いのも気に入りました。プロジェクターはカラースライドの色が重要なので気をつかって開発したのでしょう。
プロジェクターレンズはバブルボケをする傾向があるので、長すぎない75mmで明るいレンズを選んでみましたが当たりだったようです。新春の日差しがキラキラして美しく、楽しく撮影ができました。
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