古典的なゾナーは、多くのレンズを貼り合わせることで表面反射を抑えた高級レンズで、1950年代はレンジファインダーカメラの明るいレンズによく使われていた。特徴としてバックフォーカスが焦点距離に比べて短く一眼レフ向きではないところがある。しかもレンズコーティング技術が進化した現代では、レンズを貼り合わせる利点は減り、古典的ゾナー構成はほとんど使われなくなった。
さてその高級なゾナーを、レンズ固定式のカメラにあえて採用したのがWALZだ。この1958年製のWALZ35-SIII のレンズは S-KOMINAR4.8cm f1.9、日東光学製。通常はガウスタイプでつくるスペックだが、こだわって3群7枚のゾナータイプにしている。この後の機種(ENVOY35)ではレンズ構成図をカメラ上面に描いてアピールしたほどの自慢の一品だ。このレンズをカメラから分解。ゾナーらしくバックフォーカスは短く、改造するにはぎりぎりだ。ヘリコイドはオリジナルに変更してEマウント化した。
さて、正統派ゾナーの写りを見てみよう。
全体に優しくオールドレンズらしい写りだ。ふわっとしているのは古いレンズコーティングのフレアによるためか。それでいながら、拡大すると細かいところまで解像している。背景は2線ボケだけどふわっとしていて、雰囲気がある。
もう一つ特徴は色が豊かなこと。ゾナータイプの長所をこのレンズも持っている。
もともとの最短撮影0.9mに対して、オリジナルのヘリコイドなので0.4mくらいまで寄っている。フレアーがかっていて、ボケもグルグルしている。近距離に弱いのもゾナータイプの特徴だが、色がきれいなのでいい感じ。
夜撮ってみるとフレアーだ。レンズは曇っていないけど、古いコーティングのせいか。あとコマ収差があって、これらがふわっとした描写の原因なのだろう。
撮ってみると、ちゃんと解像するけど優しいふわっとした描写。そして色乗りが良くてきれいに写る。こういうところは元祖ゾナー(とほぼ同じ)JUPITER8M 50mm f2と同じ傾向がある。その一方で、背景ボケや絞った時のシャープさはJUPITERよりも劣っている。
オールドレンズらしい性格ともいえるので、楽しんで使ってみよう。
撮ってきた写真を追加。
ゾナーの欠点は糸巻き型の歪曲収差がでることで、このレンズも強めに出ている。
色のりはとてもいい。「ゾナーは一色多い」と言われただけのことはある。
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