2001年発売のFujifilm nexia Q1は、写真を撮る伝統的なカメラとは違う、新しい時代にむけた映像機器だった。小さなAPSフィルムを活かしたボディは軽く小さく、首から下げても気にならない。そして円筒と円盤を組み合わせた曲面のデザインは、気負いがなくかわいらしい。
スマホ以前の時代に、気軽な写真のコミュニケーションを、若い女の子たちにアピールして成功した。
気軽に撮れることが重要なコンセプトだから、フィルムにこだわりはない。2005年、デジタルセンサーが一般化すると、同じデザインでデジタルカメラになった。
このAPSフィルムを使うFujifirm Nexia Q1は、絞りf8 シャッター1/100秒の固定露出パンフォーカスだが、気軽にキレイに写すためにトイカメラではない工夫がしてある。
それはフラッシュによる補助光だ。自動調光で露出不足になりそうな時は常に発光する。環境の方をカメラに合わせる自動露出である。この方が人物がキレイに写るという発想らしい。
もう一つはオートフォーカスだ。基本パンフォーカスにして失敗を防ぎながら、近距離の時だけ近距離用に切り替わる。広角で絞りf8で被写界深度が深いからできる設定だ。
フジフィルムの資料から上面断面図。ミニマムなレンズ構成がわかる。
https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2019-09/b4bd371197bec8774cd3c0cde7ef98c6/rd_report_ff_rd048_003.pdf
レンズは22mm(APSフィルム換算28mm)の広角、2群2枚のミニマムな構成。
断面図を見ると、プラスチック非球面レンズで前から凹と凸レンズの組み合わせ。2枚のレンズの間に固定絞りが入る。同時期に開発された「写ルンですエクセレント」の構成ににている。
バックフォーカスはそこそこあるので、デジタル相性は悪くないかもしれない。
実機を見ると、レンズ径はわずか4mmほど。絞り径も3mmもない。本当にミニマムなレンズだ。
デジタル用に改造する。フォーカスはヘリコイドアダプターにするので、3Dプリンターでマウント(M42)をつけるだけである。プラスチック製のボディキャップを加工しても簡単に製作できるだろう。
バックフォーカスは20mmくらいあるが、レンズ全長も4mmくらいしかないので、マウント内に奥まったデザインになった。
画像サイズが近いAPSデジカメで撮影
APSデジタルで22mmというと、換算33mmの広角レンズだ。
わずか2枚のレンズ構成だが、プラスチック非球面レンズの効果で、それなりに均質な画になった。描写は地味で、もう少し立体感が欲しい気もする。でも色はきれいだし、フィルムで撮ったみたいだ。
ところでFujifirm Nexia Q1の特徴は、フラッシュ補助光の多用でもある。フラッシュを使うと光線の影響で描写が硬くなるが、地味な描写のレンズと相性は良さそうだ。数年ぶりにフラッシュをつかってみよう。
APSデジタル+フラッシュ撮影
パキッとしたフラッシュの正面光でシャープに写る。こんな写真、久しぶりに撮ったなあ。
エモいレンズといえば、VIVITAR ULTRA WIDE & SLIM の22mmがある。このレンズも同じ22mmなので、フルサイズにつけてみよう。
本来のイメージサークルを大きく超えるが、どうだろうか。
35mmフルサイズデジタル撮影
今回、チープなレンズをデジタル用にして撮影してみました。APSデジタルでは、淡々とした描写が、フィルムをつかったチープな小型プリントを見ているようでした。この地味さはエモいかも。同様にフラッシュ撮影も、昔のコンパクトカメラの写真を思いだしました。
エモい、とは見る人の想像力を刺激することです。今回、とくにAPSデジタルでのレトロな描写にエモさを感じた次第です。
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