中判カメラの標準レンズ。NIKKOR-P・C 75mm f2.8
ゼンザブロニカは1959年3月に初号機が発売された。6×6判の一眼レフで、当時まだ珍しかった完全自動絞りを持っていた。それは世界初だったZUNOWペンタフレックスの発売からわずか1年後であり、ニコンFの発売よりも早い。独創的なメカニズムを持つ、高度に完成された魅力的なカメラだった。
その素晴らしいゼンザブロニカは、吉野 善三郎さんの熱意と財力によってうまれたベンチャーが生み出した。そして創業者の名前から、ゼンザブロニカと名付けられた。
Zenza Bronica = Zenzaburo's Brownie Camera
特徴の一つは、一眼レフでありながら光学性能のためにレンズのバックフォーカスを短くしたことだ。レンズとミラーが干渉するのを防ぐため、なんとミラーは下降する。
説明書より。レンズを避けるようにミラーは下降する
もう一つの特徴は徹底したモジュール構成だ。特にレンズは自動絞りにも関わらず、ヘリコイドが別体で分離する。したがってボディとヘリコイド、ヘリコイドとレンズ、マウントが2つある。
そんなゼンザブロニカのレンズは、ニコン製からスタートした。最高品質のものを求めた結果である。
今回、手に入れたブロニカの標準レンズ NIKKOR-P・C 75mm f2.8は、ヘリコイドから分離されており、レンズはコンパクトにマウントの中に納まっている。まるでパンケーキレンズのようだ。
このレンズは、1959年の発売からおよそ20年にわたって生産されており、購入したのはマルチコートの後期型だ。高品位なNIKKORレンズであるが、生産数も多く、思いっきりカビ玉だったので安く買えた。
説明書より、レンズ構成図
4群5枚のクセノター型レンズ構成である
まずはカビとりである。
ネットで調べると前から分解するのは、複雑で難易度が高い。
幸い、今回のカビは後ろ側だった。ゴムツールで後ろ2枚のレンズは簡単に分解できて絞りまでアクセスできる。カビを除去して、まあまあクリアになった。
マウントアダプターは存在しているようだがヘリコイドユニットが必要、なので自作する。
⚫︎フォーカス用にヘリコイドは、M42ヘリコイドアダプターがあるのでそれを使いたい。
⚫︎絞りレバーを動かして動作させたい。絞りによってストロークが変わる仕様なので、スプリングがいる。
アダプターは3dプリンターで製作。
ヘリコイドアダプターへのM42マウントは、力がかかるので金属製。(アルミ製の中間リングをはめ込む)
絞りはジャンクパーツのねじりバネでレバーを動かす。
残念ながら絞りの動きは完ぺきではなく、ぎこちない。絞りレバーのリターンスプリングがけっこう重く、計画通りにねじりバネが動かないようだ。
まあ、とりあえずいいでしょう。さっそく撮ろう。
6×6判のレンズなので、35mmフルサイズだとイメージサークルの一部しか使わない。開放f2.8の被写界深度は浅く、右上隅の「ハナモモ」に合わせると、他はボケる。
右上隅の拡大。開放なので描写は柔らかいが、周辺までよく写っている。
開放f2.8は、被写界深度の浅さを感じる。背景のボケ、前ボケ、この距離ではきれいにボケている。
雨の濡れた描写はさすがニッコール。質感描写は素晴らしい。その一方で、ボケは周辺になると崩れてうるさくなる。背景の後ろボケは、うるさくなる距離があるようだ。
この距離の後ろボケもうるさい。変な味がある、ともいう。
エッジのある玉ボケに、青いフリンジ。質感描写の良いレンズだが、デジタルセンサーで撮ると色収差がでてしまう。
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