出遅れた/進化したハーフサイズカメラ
35mmフィルムを半分にして使うハーフサイズカメラは、1959年のオリンパスPENから普及した。その流行にコニカは遅れ気味に、1964年に32mm f1.9搭載の「アイ」、翌1965年にf1.8にスペックアップした「アイツー」を発売している。
今回はこの「アイツー」がテーマだ。明るいf1.8レンズを搭載しているのは魅力的だが、ライバルのCANON DEMIは1964年にはf1.7のレンズを搭載していて、スペック的にも遅れている。
こんなKONICA アイシリーズだがレンズの評価は高い。また、最後発ゆえに洗練されたメカニズム構成は、大ヒットした次世代機C35のベースになった。
レンズは、ビハインド絞りのガウス構成
特徴は絞り兼用シャッターをレンズの後ろに載せたビハインドレイアウト。f2.8級のテッサーやトリプレットに多いビハインド絞りだが、f1.8と明るいガウスタイプというのが珍しい。対称型であることが特徴のガウスタイプだが、ビハインド絞りで非対称に使っている。
レンズ構成図はレンズ単体まで分解していないので、推測しながら描いている。不正確だがこんな感じだと思う。
通常のガウスタイプはレンズの構成中央に絞りをレイアウトするのに対して、絞りがボディ側にある。メカがボディ側だけなのでシンプル低コストで作れる。その一方でレンズ径は前玉に向かって大きくなる。周辺光量も不利なはずだ。
このように珍しいビハインド絞りのガウスタイプだが、レンズ評価は高い。シャッター不調のジャンクカメラからレンズを取り出してデジタル向けに改造してみよう。
f1.8と、明るいレンズなので絞りは使いたい。ところが絞りはシャッター兼用で2枚絞り。当時の技術だと、自動露出にしようとすると2枚絞りになることが多い。結果ひどい形の絞りになるのだが、このコニカ アイツーもひどい形で、あまり活用したくない。
鏡胴の構想図。これを3Dプリンターで造る。
フォーカスはもともとついていたヘリコイドを使うが、最短撮影距離(1m)があまり寄れない。面白くないので近接撮影用の補助ヘリコイドを追加する。
ターレット絞りは、絞り径の穴をあけたプレートが回転して絞りを決定する。構想するレイアウトでは、レンズ後端との隙間が2mmちょっとしかない。ぎりぎりの製作になる。
フォーカスヘリコイドを廻しすぎて抜け落ちないように、回転止めストッパーも隙間を縫って設置することになる。製作は苦労しそうだ。
ターレット絞りと、ヘリコイド脱落防止のストッパーネジ。製作は無限遠出しに苦労したが、ほぼ計画通りに完成。
絞りは開放から2絞りずつ変化して3段階。フォーカスはもともとのヘリコイドで1m弱まで寄れて、さらに補助ヘリコイドで30㎝くらいまで寄れるようになっている。
ハーフサイズはAPSデジタルと同じ画像サイズなので、相性が良い。デジタルカメラ機種は古いが問題なし。
f6.9くらいまで絞ると、片ボケはだいぶ目立たなくなる。でも右側のごく隅はボケている。
コントラストと色乗りの良いレンズで、濃い描写が特徴のレンズです。
被写体の立体感もよく、キレ良く引き立ちます。メリハリが効いているのでフィルム、通常の半分のハーフサイズでもよく写ったと思います。デジタルでも印象的な描写をするので積極的に使いたくなりますが、今回改造したレンズは残念ながら片ボケがありました。画面右側がボケています。
ガウス構成のレンズは距離変化に強い特徴がありますが、変形ガウスのこのレンズも近距離描写は綺麗です。もともとの最短撮影距離が1mと遠いのが残念ですが、改造では補助ヘリコイドをつけたので0.3mくらいまで寄れてクローズアップ撮影が楽しめました。
花の撮影は特に良さそうです。色が濃く花がきれいに写り、絞りを開ければ背景を大きくぼかすことができます。
遠景でもコントラストある描写ですが、私のレンズは片ボケの欠点があるので、絞って撮るのが良さそうです。改造したレンズのターレット絞りは3段階で絞ってf6.9相当になりますが、32mmレンズなのでそれなりにパンフォーカスになります。そうすれば問題はあまりありません。
1960年代のハーフサイズカメラのレンズは、よく写るものが多いですが、このKONICA HEXANON 32mm は、濃厚な写りが特徴的です。キレ良く写りますので、35mmフルサイズの半分という小さなフォーマットの欠点をカバーして、魅力的な写真が撮れたのではないでしょうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿