メディカルニッコールをマクロ撮影用に使いやすくする:Medical NIKKOR 120mm F4 (IF)/Modify a Medical Nikkor to be easier to use for normal macro photography.


見たことのないメディカル・ニッコール



ニコンの特殊レンズ、歯科医の口内撮影などに使われたメディカル・ニッコール120mm f4は1981年に発売された。特徴はリング・フラッシュ一体型である。

ニッコール千夜一夜物語 第六十九夜 Medical-NIKKOR 120mm F4(IF)

https://www.nikon-image.com/enjoy/life/historynikkor/0069/index.html

ニコンの素晴らしいコンテンツ。レンズの詳しい話が楽しい。


特殊レンズで、一般の撮影は全く考慮されていない。無限遠は全く無視されて、1.6m~0.3mが撮影距離である。撮影距離でフラッシュの発光に合わせて絞りが決まるので、フォーカスリングと絞りが連動、一体化したコントロールリングを持っている。


ところがこの写真のレンズ、同じメディカル・ニッコール120mmであるが、リングフラッシュがついていない。



というのは私が改造したからで、メディカル・ニッコールに見たことのない改造を行った、ということでした。…


このレンズはフラッシュ撮影専用で、

距離で絞りが決まってしまうためとても使いにくい。

そこで、フラッシュは取り外し、絞りとフォーカスを別々に操作できるような改造を行って、一般的なマクロ撮影をしやすくしている。


フォーカス/絞り一体だったコントロールリングを滑り止めゴムのところで切断、スペーサーを入れてフォーカスと絞りを分離した。撮影倍率を合わせやすいようにクリックがあったが、これも解除した。

フラッシュを外した後のフォーカス・カムが丸見えなので、3Dプリンターでフォーカスリングを製作する。


フラッシュ調光用のISO設定リングが残っているが、カタチだけで機能していない。

中央のゴムリングは絞り設定。f4からf32まで設定できる。
倍率表示から先端にかけてのリングが独立して、フォーカスできるようにした。


もともとは(たぶん水没・固着)のジャンクレンズ。レンズはカビて曇っていた。

レンズは3つのグループにまとめられていた。前側のグループは前からレンズのカニ目リングを回せば分解できる。後ろのグループはマウント分解から固定ネジを外せばグループごと外せる。手の届くところはだいぶきれいにした。

でも手の届きにくい内部には、小さなカビやらゴミなどがある。撮影に大きな影響はなさそうだが、小さな影響はあるだろう。


オリジナルのレンズ重量は920gであるが、改造で部品を外したので、180g減って740gになった。大柄なマクロレンズではあるが、ニッコール千夜一夜で紹介された銘玉だ。期待してマクロ撮影してみよう。



撮影距離は1.6m。倍率で1/11。
マクロ専用レンズだと思えば、けっこう引いて撮れる。
そこそこ一般撮影ができるともいえる。




マニュアルフォーカスのレンズで、フォーカスリングを回せば0.35m 等倍まで寄ることができる。レンズ先端からの距離も15cmもあり、余裕をもって撮影できる。
アブの描写は素晴らしい。艶めかしい質感があり、拡大するとディテールもよくわかる。

フォーカスは一般的な全群繰り出し式とは異なり、中央部のレンズのみカムで移動するIF方式だ。望遠マクロにおいて、その利点は大きい。

・全長、重心が変わらない。

・距離によってf値が変動しない。(全群繰り出しだと等倍まで寄ると2絞りも変化して露出に気を遣う)

・フォーカスリングの回転角が遠距離では繊細に、近距離では大きく変わるように調整されている。回転角も150度と少ない。
マクロ撮影は身体の前後、距離の調整のでフォーカスを合わせることが多いが、このレンズのIFならフォーカスリングで簡単に合わせられる。すごく操作しやすい!


とはいえ、最新のオートフォーカスならばもっと使いやすいのでしょう。
(使ったことないけど)






やはりニッコールはさすがと思う。描写に質感、重みがあって艶めかしく写る。




最長撮影距離(1.6m)f8の描写。
ボケは(状況によって)うるさくなる時がある。



最長撮影距離(1.6m)開放f4の描写。この距離で開放だと、解像しているがそれほどシャープには感じられない。被写界深度が極めて浅いことが原因かもしれない。



撮影距離の影響はあるようだ。開放f4でも、少し寄った描写はシャープに感じた。




フラッシュ専用で使いにくいメディカルニッコールですが、フラッシュを外し、コントロールリングを切断して 絞りとフォーカス別のコントロールリングとすることで格段に使いやすくなりました。

ヘリコイドではなく、ズームレンズのようなカム構造のフォーカスコントロールが効いています。フォーカスの回転角は半回転もなく、軽く速く遠距離と近距離で最適に変化し、とても使いやすい。
120mmという焦点距離も、被写体との距離を稼ぎながらギリギリ手ぶれしにくく、絶妙な感じでした。

写りはさすがニッコールです。解像力よりも、被写体の立体感・質感描写が秀逸で印象的でした。

遠距離が撮れず、近距離縛りの撮影になりますが、毎日の散歩ではそれもまた一興です。かなり好きなレンズです。

























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