レンズ構成は「ハイパーゴン」! 1990年発売 写ルンです パノラミックHi / The lens configuration of "Fuji Quicksnap Panoramic Hi" is Hypergon!


 

写ルンです パノラミックHi は1990年の"パノラマ写真専用”レンズ付きフィルム。

パノラマ写真は、フィルムの上下をトリミングして1:2.7の横長写真をつくっている。同時プリントでは、通常のプリントの縦はキープで横幅が2倍になり、大きなサイズで見応えがあった。

搭載しているのは広角レンズだが、どのようなレンズ構成なのだろうか。デジカメ用に改造する目的で分解してみた。


2枚組み合わさったレンズは、球体だ。


大きな曲率のメニスカス凸レンズ2枚が向き合って球体をつくっている。これはハイパーゴンのレンズ構成だ!  (下図は、正確な測定ではありません)


ハイパーゴンは1900年に発表された超広角レンズで、対称型に配置した2枚のメニスカスレンズの特徴から、広い画角と優秀な描写力を持っていた。レンズが2枚しかないので欠点もあり、周辺減光と色収差、特に球面収差は大きく、絞らないとシャープにならないらしい。オリジナルのハイパーゴンは、大判フィルム用でf22というスロースピードなレンズだった。

大きな曲率のメニスカスレンズの製作も難しそうだ。


写ルンです パノラミックHiは、プラスチックレンズだからこの特殊なレンズ構成を採用できたのだろう。2群2枚のレンズは、見た目は前後対称にみえるが、わずかに非対称になっている。

フィルムは0.5mmほど湾曲させて収差を補正している。

デジカメのセンサーは平面だけど、センサー前にあるフィルターはフィルム湾曲と同じような影響をつくる。どのような写りになるのか楽しみだ。

Cマウントで、3Dプリンター鏡胴を作る。レンズ全体が回転する回転ヘリコイドでフォーカス、絞りは「写ルンです」をそのまま使う。

さあ、撮影してみよう。



描写は周辺まで悪くない。パノラマ専用なのだが、フルサイズを十分カバーしている。画角を広げやすい ”ハイパーゴン レンズ構成”  の効果か。

右側の木の「ハナモモ」もしっかりと読める。像面湾曲はけっこう軽く、被写界深度に入っているようだ。



撮ってみると糸巻き型の歪曲収差が目立つ。「写ルンです」はフイルム面を湾曲させているため、その分修正されて目立たなかったと思われる。

焦点距離は25㎜くらいの広角で、f値は13前後。



35mmフルサイズは、パノラマ写真よりも上下に大きいが、イメージサークルは充分広い。
拡大すると解像度は高くないが、写りにはコントラストがある。

f13と絞られていて、さらに球面収差が多いこともあり、フォーカスのピークはあいまいだ。
びしっとフォーカスは合わないが、アウトフォーカスでも大きくはボケない。どの距離でも何となくフォーカスがあって見えるので、「写ルンです」のような固定焦点向けのセッティングだ。



逆光にはとても弱い。

上の写真は直射日光が当たっていないのにフレアーが出ている。
片手でハレギリしながらの撮影になった。そういえば「写ルンです」もフードが付いていたので、フードは必要なのでしょう。レンズのサイズは大きくなるが、しかたないのでフードを作ろう。

多少のフレアーはでていいので、フードはコンパクトに作成。


改造レンズはCマウントで作成したが、口径がぎりぎりだった。Cマウントにスペーサーをつけて無限遠調整をしている。









広角レンズのついた「写ルンです パノラミックHi」(初代)が、ハイパーゴン (前後全く同じ対称型ではないので「変形」ですが) という珍しいレンズ構成 を持っていたことは驚きでした。

わずか2枚のレンズで超広角の画角を得るために、古典的な超広角 対称型レンズ構成を選んだということでしょう。

この12年後2002年に出た「撮りっきりコニカMiNi WaiWaiワイド」では、2枚レンズによる17mmの超広角を実現するために、非対称のレトロフォーカス構成にしています。いわく、超広角を2枚の対称型レンズ構成でf10の明るさにするのは無理がある、とのことです。

https://research.konicaminolta.com/jp/pdf/technology_report/2003/pdf/07.pdf

今回の「写ルンです パノラミックHi」の25mm f13?というのは、2枚による対称型レンズ構成のギリギリのバランスの結果なのでしょう。


撮影してみると画角に強いレンズ構成の強みで、フルサイズの4隅までイメージサークルに入っています。コントラストがしっかりあるのは好印象ですが、高解像なレンズではありません。中心部でも解像度は高くなく、周辺にむかって低下していきます。

もう少し絞りたい気もしますが、小絞りボケをしそうですし、センサーについたゴミもさらに映り込みます。やはりこのf13あたりが落としどころなのでしょう。


実は、「写ルンです パノラミックHi」のフィルムのパノラママスクは取り外せるようになっていました。だからマスクを取り外せば通常のフルサイズ「25mm広角レンズ付き  写ルンです」として使用できたのです。そんな幻の企画もあったのかもしれません。
















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