横に長い、シネマスコープの写真を撮る。
映画館で見る横長な映像には没入感がある。人間は左右2つの目があるため、視野は左右に広い。横長の画面には人間の画像認識と、親和性があるのだと思う。
横長の写真はパノラマ写真と呼ばれ、専用のカメラで撮影されてきた。
そのお手軽版として、フィルムの上下をカットして横長のプリントにする「パノラマ写真」が、1990年に始まってヒットした。私も撮ってみて面白く、結構遊んだ。
現代のデジタルカメラでもセンサーの上下をクロップして横長の映像にすれば同様の効果がある。高画素機ならまったく問題ない。
でも、マニアックなシネマ好きは「アナモルフィックレンズ」を謳う。横長の画面を写すための特殊なレンズで、これで撮ると雰囲気が写ってドラマチックな物語になるらしい。これは、体験してみたい。
アナモルフィックレンズ
アナモルフィックレンズは特殊で、2次曲面の「円柱レンズ」によって横方向に圧縮された映像をつくる。円柱レンズは円柱の一部を切り取ったようなレンズで乱視補正の眼鏡レンズが一般的だ。その円柱レンズによって横方向に圧縮された画像を撮り、見るときに横長に戻して画面を造る。
そのアナモルフィックレンズは、映画撮影機材なので古くてもジャンクでも高価だが、安いものを発見した。
YASHICA SCOPE 8mm x1.5
ヤシカスコープ 8mmフィルムプロジェクター用のフロントコンバータである。8mmムービーが一般化していた1960年の広告で確認できる。一般向け(シネマスコープ映画を見る目的)なので通常のレンズと同等の¥5,500-で売られていた。たくさん売れたようで、中古品が結構安く流通している。
ただ、遊びでテストなので本気で使えなくても構わない。さらに安いカビ破損ジャンクを購入してみた。
実物を見ると、2群2枚とシンプルなレンズ構成だ。これを撮影用に使う。手前レンズの下部が破損していて、これはどの程度影響するかはわからない。また内部がカビているが固着して分解できない。無理に分解しようとしたことがレンズ破損の原因かもしれない。まずはこのまま行ってみよう。
プロジェクター用なので対応するマスターレンズは中望遠になる。レンズ径が小さいので暗いレンズが必要だ。アナモルフィックレンズの特性を体感したいので、ほぼ無収差のEL NIKKOR (プリント引き伸し用) をマスターレンズにすることにした。EL NIKKORにあわせて40.5mmのフィルター枠に装着できるような取り付けアダプターを製作した。
マスターレンズにはなるべく近くで装着できるようにしている(そのほうが描写がよいし、周辺が蹴られにくい)
ねじを緩めることで、回転できるようにしている。アナモルフィックには方向があるので、しっかりと垂直を出さないと像がゆがむ。
物語を映すレンズで、物語は写るか
Aps デジカメにEL Nikkor 40mmを付け(フルサイズ換算60mm)、先端にYashica Scope ×1.5を装着。上下は換算60mm、横方向は換算40mmの準広角の範囲が写ることになる。
撮影は面倒だ。マニュアルフォーカスになるのだが、操作は2箇所。アナモルフィックレンズもフォーカスを合わせなくてはならない。
アナモ側は拡大してもフォーカスが判りにくく、うまくあったかどうかよくわからない。
絞りを開けて撮ると周辺は解像しない。せっかくの横長画面なのでもう少し写ってほしい
絞ればそこそこ解像するが、収差は大きい。画像の荒い8mmフィルム用で、レンズ構成も最低限の2群2枚、だからこんなものなのだろう。
絞ると換算60mm四隅では四隅が蹴られている。もうすこし画角を小さくしよう。
激しい逆光では、アナモルフィックレンズ特有の水平方向のフレアがでる。横方向に動きが出て、アクセントになる。
マスターレンズをEL Nikkor 50mm f2.8 にする。Apsなのでフルサイズ換算は75mm、×1.5のアダプターなので (フルサイズ換算) 標準50mmの範囲が写る。
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