オールドレンズで明るい中望遠マクロといえば、「タムキュー」ことタムロン90mm (1979年に登場し、現在まで改良し続けられいる) が定番だ。今回のテーマは、それに対抗してつくられた中望遠マクロレンズ、1988年に発売されたSIGMA 90mm f2.8である。
この時期のシグマレンズは、鏡胴の塗装が加水分解して、ベッタベタになることが多い。触ると手が黒くベタつく最低な汚れで、レンズはジャンクとなってしまい、安く買える。前回の経験から、無水アルコールでベトつきは落とせる上に、余計なグラフィックを消すことでカッコよくできると考え、ベタベタジャンクを安く購入した。
まずは大きさ比較。左のタムキュー:TAMRON90mm f2.5との比較。右のSIGMA 90mm f2.8はマクロレンズとしては異例に小さく、一般レンズみたいだ。
マクロといえば長大なヘリコイドのために大きくて重い鏡胴になるが、レンズ構成を工夫することでレンズ全長も繰り出し量も小さくしている。
濃い色の前半部がフォーカスで繰り出される部分で、エルノスター構成になっている。後半部は固定されたテレコンバーターというレンズ構成。テレコンバーターで拡大することで、レンズ繰り出し量を小さくできる。さらに前半部のエルノスター構成はレンズ全長が短くなる特徴があり、それらによってレンズ全体が極めてコンパクトになっている。
エルノスターは明るい中望遠レンズに向いた構成だ。4群4枚の構成が通常だが、このレンズでは5枚目に凸レンズを追加している。前後レンズのパワーバランスをとることで撮影距離の変動に強くしているのだろうか。
分解してテレコンバーター部分を外してみると、エルノスター構成の前半部は焦点距離60㎜くらい。口径比もf2くらいで明るい。
後半部のテレコンで、1.5倍に拡大していることになる。それにより異例に短い繰り出し量(17㎜)で1/2倍のハーフマクロを実現している。
エルノスターのマクロは珍しく、しかもとてもコンパクトなので興味が出てきた。約1.5倍のテレコン構成では収差も1.5倍になってしまうが、描写はどうなのだろうか。
べたつくペイントを距離表示ごと落としていく。前回の18㎜の時は無限遠マークだけ残したが、使ってみると回転方向が分からない。今回は距離表示を少しだけ残すようにした。シンプルなデザインになって好印象。さあ、実際に撮ってみよう。
まずは開放。近距離だと大きくボケる。ボケのきれいさでは、定評あるタムキューに負けていない気がする。描写は柔らかく、フォーカス面はごく浅くて難しい。
f5.6に絞る。写真としてはこのくらい絞ったほうが自然だ。6枚絞りの形がでてしまうのが気になる。ボケはスムーズなのに残念な欠点だ。
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