SIGMA 18mm f3.5 シャープでチープ、粘着質な超広角/ Sharp, cheap, sticky, super wide-angle lens.

超広角レンズを手に入れる。

このブログでは現在評価されていないオールドレンズにも光が当たればいいな、と思いながら書いている。したがって購入するのは、ちょっと古くて、人気が無くて安価なものばかりだ。

超広角レンズは、もともと高価で数も売れなかったため、中古でもそれなりな価格のものが多い。だから、よほどのことがなければ安くならない。


SIGMA 18mm f3.5   

フィルム時代、1992年発売の超広角レンズ。短命なレンズで、1994年にほぼ同じサイズの18‐35ズームが発表された後はカタログでは確認できない。

流通数は多くはないと思われるが、きわめて不人気で(ジャンク級品が)安く手に入った。

理由の一つは悪名高い「ZEN」デザインである。艶消し黒のシックな仕上がりを特徴としたデザインだったが、表面塗装が経年劣化で加水分解しやすく、触ると粘着質、べたべたで手が黒く汚れる。シグマはこの失敗で、ブランド価値を大きく下げた。

もう一つはレンズが曇っていること。これもよくある症状のようで、ガラス素材に曇りやすい持病がありそうだ。

この二つは難問だが、塗装は表面的なものだし、レンズの曇りは単焦点なので分解すれば何とかなりそうと考えた。

表面のべたべたは、無水アルコールで塗装を落すことで使用可能になる。

塗装はムラにはなったが、べたつきはなくなり、それに伴って距離表示もなくなった。変に目立っていた距離表示が無くなったので、シンプルでクールな外観になったのは結果オーライであった。


レンズの曇りは、まずは分解。単純な単焦点なので前側、銘板からゴムオープナーを使って外していく。

前から分解して3枚目が曇っていた。

このレンズの曇りを漂白剤とアルコールで除去する。

割れやすい素材でできた特殊レンズのようで、プラスチックフレームで固定されている。反射させて曲率を見てもよくわからなかったが非球面モールドレンズかもしれない。

曇りは完璧には取れなかったが、写りはどうだろうか?(できればこれ以上の曇り取り=セリウム研磨はコーティングが剥がれるのでやりたくない)

わずかに曇りがあるので逆光には弱そうだ。フードが必要になりそうだ。フードは入手できていないので、自作する。

レンズ鏡胴の先端にフード用のバヨネットマウントがあるので、それをつかう。コンパクトな外観で、しかも正確に遮光したい。

CADでぎりぎりになるように設計し、3Dプリント製作をした。



さあ、準備に手間がかかったが、これで撮りに行ける。

f5.6に絞っている。これは隅までシャープなレンズだ。
ここは江戸時代から有る千川上水。現在、暗渠部で唯一 開渠しているところ。千川上水の暗渠は1960年代に施工され、1970年に上水は運用を終えた。現在では不通になっているらしく、大雨でも、もう水は流れない。



わずかに残ったレンズ曇りの影響がありそうな描写。それよりも気になるのは陣笠形の歪曲収差。超広角だからだろうか、単焦点なのに結構大きい。

広角における陣笠や糸巻き形の歪曲は、隅の描写が大きく変形するから好ましくない。
とはいえデジタルになって、あと修正は難しくない。

歪曲とコントラストの修正後。このレンズの場合、あと修正は必須だとおもう。




ボケは距離によっては、流れる。超広角だから仕方ない気もするが、ぼかしたい魅力はないので、適度に絞って撮るほうが良い。













微妙なレンズ曇りのせいか、逆光ですこしフレアっぽくなりますが、f5.6まで絞れば、隅までたいへんシャープな解像力を持つレンズです。
欠点はボケの乱れと歪曲収差。特に歪曲収差は陣笠タイプで、直線がうねるので気持ち悪い描写になります。
とはいえ、歪曲は画像処理であと修正できます。デジタルでは、どちらかといえばシャープな解像力のほうが重要でしょう。貴重な超広角ですので、しばらく運用してみます。



レンズ鏡胴がベタベタになる古いシグマの「ZEN」レンズですが、アルコールで落としたら距離表示もなくなり、シンプルで精悍になりました。
黒くてかっこよく、気に入りました。塗装を落とす前提なら結構いいです。
シグマのオールドレンズ「ZEN」シリーズは、ベタベタでジャンクなものばかり。安いので、他にも面白いレンズを探してみましょう。

























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