レンズは資産なのか、最新システムで最適化すべきなのか。
一眼レフのようなシステムカメラでは、レンズはカメラの世代を超えて長く使える資産といわれていた。特にプロに多く使われるニコンでは、そのFマウントをながく継続して運用し、信頼のイメージを創った。
ところが同じくプロ比率の高いマミヤは逆の考えで、 マウント変更を前提にカメラを開発していたようにみえる。
カメラとレンズのセットで最適化設計、システム効率を高める考え方だ。使うレンズはカメラの更新にあわせて購入する想定だったのではないだろうか。そのくらいマウントは良く変更された。
この戦略は、システムが複雑でモデルチェンジの多い35mm一眼レフではうまくいかなかったが、得意の中判カメラでは先進イメージをうまく得ていたと思う。
さて、このAUTO MAMIYA SEKOR CS 135mm f2.8 も1978年製のMAMIYA NC 1000Sと同時に開発されたCSマウントになっている。
問題はこのCSマウントである。なんせ1機種1マウントなのでマウントアダプターはなさそうだ。もっとも初めからアダプターは作る気で入札している。
CSマウントの特徴は押しピンでの絞り連動である。M42マウントからの流れで、絞り値によってストロークが変わるのが特徴だ。
そのためアダプターは押し込むピンストロークを可変にする必要がある。ピンストロークの可変量は1.5mm。一絞りあたり0.25mm。すごい精度だが、摩耗など考えると、やはり誤差もあるようで、反対の動きをするピンを追加してオートコントロール時の精度を出していた。
そのままだと絞りは開放のまま。絞り込むためには、ピンの可変ストロークに合わせて押し込んでおく必要がある。ピン押しの構造を持ったマウント・アダプターを作ろう。
3Dプリンターでマウントとピン押し構造を作る。ピン押しはジャンクパーツから見繕った金属板で、押しバネを入れてストロークさせる構造。マウントは3Dプラスチック製だが、レンズにつけっぱなしにするので問題ないだろう。そのため外れ留めロックもネジ。なぜこのMamiya Sekor 135㎜を選んだかというと、すごく小型軽量で(315g、4群5枚のエルノスター型のレンズ構成。このスペックでは最も軽いレンズかもしれない)、しかも凛としてかっこいいのだ。マミヤセコールの立体感のある写りを気に入っていることもあって、オークションで入札したら安く入手できた。
安いのは理由があって、やはりジャンクである。
ジャンクの理由は、前玉(2枚目)のバルサム切れ。残念ながらレンズ周辺部がバルサム切れになっている。もっともレンズ自体はクリアなので開放時にフレアがかるくらいで撮れるとは思う。
とても小型軽量で素晴らしいが、鏡胴を細く設計した影響なのか(?)望遠レンズとしてはチープな5枚絞りになっている。5角形のボケ、嫌いではないが硬くなりそうではある‥
まずは絞りは開放で。開放からよく写っている。それにしても135mm f2.8はクローズアップにするとフォーカスが薄くて難しい。
自作マウントアダプターは、ヘリコイドアダプターでカメラに装着している。このヘリコイドアダプターの内径(内径35mm)で4隅が蹴られた。
内径の大きいものにする必要がある。内径38mmの物に交換したところ蹴られは無くなった。
f5.6に絞ると、ぐっとシャープになる。ボケも5角形になる。
ボケのスムーズさがあり、ポートレートに良さそうである。朝ドラのモデル、牧野富太郎博士。
マミヤのレンズはコントラスト重視で、自然なボケを追求していたようだ。
大きなフィルムを使う中判カメラが主力のメーカーであるため、解像力が欲しいときは大きなカメラを使えば良い、という考え方なのだろう。
現代のレンズは解像力はすでに充分あり、あえてオールドレンズを使うときは「描写の味」が欲しいときだ。マミヤ セコールの描写は端正だけど独特の味が感じられて、良いレンズだと思う。
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