大船光学機械製作所は、名門 富岡光学の大船工場が第二次世界大戦後に独立したメーカーでレンズ設計には定評があった。ニコン出身の国友健司氏のレンズ設計が高評価であったらしい。国友健司氏はその後ズノーに移り、「ズノー伝説」の一翼を担うことになる。その関係から大船光学はズノーレンズの生産もしていた。
そして1950年代後半から経営が行き詰まり1963年に倒産。
大船光学は双眼鏡や測距装置など光学製品が多く、当時の広告を見ると、写真関係は意外と少ない。同じ75mm f3.5を搭載した中判フィルムを使う2眼レフとスプリングカメラ、あとは写真プリント用の引き伸しレンズの50mmと75mm f3.5だけであった。
この引き伸しレンズ、カメラ用と同じスペックなので、ひょっとしたら同じレンズ(3群4枚レンズ構成のテッサー)かもしれないと考え、購入してみた。しかし実際には、3群3枚のトリプレットであった。同じレンズを使い回さずに、引き伸しレンズとして専用設計していたことになる。
引き伸しレンズは近距離を基準とした設計で、口径比fは暗くして収差を減らしたものが多いが、オフナーのf3.5は、3群3枚のトリプレットでありながら明るい。このレンズも国友健司氏の設計らしいが、どのように写るのだろうか。
ヘリコイド中間リングでフォーカスできるようにソニーa7に装着してみた。
引き伸しレンズはL39ネジマウントなので、アダプターでM42マウントに変換、M42ヘリコイド中間リングにつける。薄型のEマウント-M42マウントアダプターでカメラに装着。合計の厚さ約49mmで無限遠になる。
中距離のボケは、うるさく感じる。少しグルグルもする。
さらに近くによると、ボケは落ち着いてきた。ボケにはフレアーがかかるので、美しく感じる。前回のEL-NIKKOR 75mmよりも、(シャープさは劣るが)ボケは綺麗だ。
次は、曇天の桜に対して、晴天のバラを撮ってみる。
びっくりしたのは、発色が濃いこと。特に赤が濃く出るようだ。薔薇が鮮やか、ということなのだけれど。
すごくシャープな訳では無いですが、その分描写に優しさが感じられます。
玉ボケはこのくらい。実は後玉に傷があり、ボケにそれが確認できる。
夜景を撮ると、コマフレアーと色収差で滲む。トリプレット開放f3.5ではこんなものなのでしょう。
70年前の引き伸しレンズ、コーティングもガラス素材も古い時代のものだと思いますが、問題のない描写です。やはり大船光学は優秀だったのでしょう。
トリプレットということもあり、f3.5開放だとフレアがかった描写になりますが、一つ絞ればシャキッとした描写に変化します。花などを撮影すると、開放のフレアはギスギスしない優しさがあり、ボケも綺麗にしてくれて良い感じです。
前回レポートした同じ中判フィルム用の引き伸しレンズ、EL-NIKKOR 75mm f4(硬い描写が特徴です)と比べると、優しい描写と半絞り分のボケの大きさが個性を感じました。
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