キヤノン最初の「撒き餌レンズ」? CANON New FD 50mm f2 : Canon's first strategic popularization lens.


撒き餌レンズ、がテーマです。

私の初めての一眼レフは1978年発売のRICOH XR500。低価格で話題になったカメラで(レンズ付きで39,800円)ベストセラーであった。これが良いカメラで、コストダウンのために仕様の割り切りはしているが、メカやレンズのクオリティは中級機以上のものがあった。

そのセットに付いていたレンズがRIKENON 50mm f2。わずか9,000円という低価格だったが、その写りのクオリティは満足いくものを持っていた。(さすが富岡光学製。でも高級レンズ並だとは思わなかったが…)

https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/ricoh-filmcamera/cameralist/XR-500.html

多分このリケノンが「撒き餌レンズ」の最初なんだと思う。値段は戦略的に安くしつつ、欲しくなるような性能を持つレンズ。(欲しくなかったら撒き餌にはならない)


撒き餌レンズといえば、1990年発売のCANON EF50mm F1.8 II 定価12,000円が有名だ。


キヤノンの低価格戦略カメラEOS1000QDと同時期に発売された。EOS1000は標準ズームとセット発売されたが、EF50mm f1.8 II は明るい交換レンズとしての位置づけだったと思う。

これは私の3台目の一眼レフだった。そして50mm f1.8 II は、そこそこの写りだけど標準ズームよりは全然良い印象。プラスチックで安っぽいけど軽くて携帯に楽。EOS1000はこのレンズばかりで撮っていた記憶がある。

キヤノンはその後もレンズ沼へと誘い込むために、撒き餌をまく戦略を続けている。

今回のテーマは、そのキヤノンの最初の(成功しなかった)撒き餌レンズだ。

1979年に低価格モデル CANON AV-1 とセットで New FD 50mm f2 は発売された。
マウントアダプター(自作)でソニーaに装着。撮影は上記のEF50mm f1.8 II 
最短撮影距離付近だったこともあって色収差が発生、名盤の白文字に色がついている。

前記のRICOH XR500の1年後であり、その影響もあってセット価格は戦略的に安くする必要があったのだろう。そのNew FD 50mm f2はキヤノンにしては安く、17,000円とされた。とはいえ上記のRIKENONの倍の値段であり、中途半端になったことは否めない。でもこれ以上安くできなかった理由もある。

1つ目はNew FDというマウントの複雑さ。伝統的なFDマウントの継続と絞り制御をするために、New FDは複雑で部品点数の多いマウントになってしまった。

左のNewFDマウントは、2本のレバーに加えてたくさんのピンがあり複雑だ。

右側はその10年後1987年のキヤノンEFマウント。電気接点があるだけでレバーもピンもない。

EF50mm f1.8 IIはマウントもプラスチックだからコストはだいぶ安い。

もっと安くできなかった2つ目の理由は、このレンズ、より明るく上級のNewFD 50mm f1.8と共用っぽいのである⁉ 

https://global.canon/ja/c-museum/product/nfd211.html

https://global.canon/ja/c-museum/product/nfd210.html

キヤノンサイトでレンズの写真を見ても仕様を見ても、f2とf1.8はおなじに見える。


「フラットバーロードで行こう」さまhttp://tatu500.livedoor.blog/archives/1478993.html

2本のレンズを直接比べてくださった方もいて、2つは同じレンズ説だ。


New FD 50mm f 2を見ると、開放は固定絞りでf 2に絞られているが、その裏側で虹彩絞りはもっと開いている。最小絞りもf16までの表記だが、回せばもう1段絞ることができる(f 1.8の最小絞りはf 22) やはり f1.8 のレンズに制限をかけて f 2 のレンズにしたのだと思う。

しかし、なぜ、、、


f 2 のレンズを安く販売したいけど、開発する時間も費用もないので f 1.8 と兼用にした。ということだと思うけど、生産コストは高いので誰も得をしていない気がする。いや、あえて  f 2 に絞ることによって開放からバキバキにうつる名レンズになっていたら買った人は得をしている。さてどうだろうか?


と前置きが長くなったが、撮影してみよう。

すべて開放 f 2。自作マウントアダプターでは、複雑なNewFDマウントの絞りレバーを動かせなかった。

さて、残念ながら、開放で周辺までバキバキに解像するタイプのレンズではないようだ。周辺は解像はしているのだが、コマ収差のせいかあまりシャープではない。減光もしている。


フォーカスのあったナスの描写はまあまあだが、背景ボケはバブル/2線ボケだ。





前ボケはいいが、後ろ側のボケはざわついて、きれいではない。フォーカス面も浮き立つシャープさがもう少しあるといいのだが。



背景は古い上水道のサージタンクで、もともと歪んでいる。レンズのせいではない。



夜景の点光源では、コマ収差やゴーストが出ていて、これらがシャープさを損なっていたことがわかる。


ちょっと期待したのですが、それほどでもなく、そこそこのレンズです。開放ではコマ収差やゴーストがあってシャープさを損なっているようです。
そんなに悪くはないのですが、あえて使うほどでもない、、、撒き餌としてうまく行かなかったのも実感できました。


「撒き餌レンズ」に求められるものは、時代とともに変わっています。

・Ricoh XR500 の70年代後半からの一眼レフ普及期では、一眼レフらしい高品質な写真を手軽に提供できる、高品質低価格レンズが重要でした。

・2000年代になってデジタル一眼レフになると、ボケにくい暗い標準ズームに対して、背景がボケやすく人物がきれいに撮れる大口径中望遠レンズが求められます。上記のEF50mm f1.8 II はもともと標準レンズでしたが、デジタルがAPSサイズセンサーなので期せずして明るい中望遠になってしまい、ニーズに合致、大流行となりました。

・現代では動画ニーズから、自撮りしやすい超広角が求められていると思います。ただスマホに負けない長所を持つことは重要です。














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