一流のレンズとチープな造り。C.C Auto Petri 55mm f1.8 : The first-class lens with shabby design.

ペトリカメラの特徴は、高性能レンズと低価格。そのために合理化した独創的なメカニズム構造をものにした。だけど倒産した。足りなかったものは何だったんだろうとおもう。

ペトリカメラは1907年に創業した老舗である。

1960年代には「ニコンと機能は同等で価格は半分」というコンセプトで一眼レフを展開。今日大量の中古カメラがあるのを見るとだいぶ売れたのだろう。

ニコンと同等、というのはレンズ性能もそうで、同等の性能を目標に設計したということだ。結果ペトリのレンズはどれも高性能で、しかも個性的な描写を持っているらしい。

ところが売れたのだけど生産品質が上がらない問題があった。マーケットでは「安かろう悪かろう」という評価になり、低い賃金の生産現場では労働争議が起きてしまう。新製品開発は滞り製品は時代遅れになっていく。ネガティブなスパイラルは回り続けて1977年に倒産。その後、倒産原因の一つだった労働組合が会社を存続させて、現在も光学機器メーカーとして存在しているらしい。

今回のテーマ、PETRI 55mm f1.8 は、1967年発売のペトリFTについていたレンズで、当時の価格はセットで33,000円。ちなみに機能は同等のニコンのNikomat FTはf2レンズ付きで45,000円。ベストセラーだったペンタックスSPがf1.8付きで42,000円だった。このころになると半値、というわけにはいかないようだが、まだまだ安価だ。

このレンズをオリジナルのマウントアダプターを介してデジタルカメラに装着する。
じつは前にも撮影してレポートしたのだが、よく見たらレンズ内部に曇りがあった。(「逆光に弱い」とレポートした。ペトリさん、すみません。)
分解清掃したので、撮影してみよう。


PETRI FTからマウントを外して作ったマウントアダプターで、PETRI 50mm f1.8 をSONY a7に装着する。ペトリマウントの55mm f1.8には大きく3つのモデルがあるらしいが、これは3番目最後のモデルになる。
レンズ操作感は安っぽく精度はあまり感じない。鏡胴は金属製なのだが、デザインもメリハリがなくシャビーだ(ペトリさんすみません)

ところが写りは素晴らしい。開放からシャープで立体感があり、ここに存在するかのような臨場感がでる。





ボケは2線ぼけで、距離によっては、ノイジーでうるさい。


もう少し近寄ると、ボケはぐっと美しくなる。ボケた背景の微妙な立体感描写は、すばらしい。狙って設計したのだろうか?



街灯に、弱いコマ収差?が発生している。これが2線ボケを溶けさせて美しくするのだろうか。

やはり評判通り、良いレンズだと思う。開放からシャープでとても立体感がある。ボケも味わい深く美しい。

そこで感じるのは、レンズは一流だったのに、なんで倒産してしまったのか。生産に問題があり、ボディの生産品質があがらなかった。低い賃金で労働争議になった。そんなネガティブスパイラルになんで入ってしまったのか。
製品開発に、安く作る以上のビジョンはあったのか、とおもう。頑張って安くカメラを作って、その先の夢を、経営/生産/ユーザーで共有できていれば違うスパイラルが描けたかもしれない。
チープなつくりと写りの良さの両極端。こんなアンバランスから、そんなことを考えていた。






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