初期マクロレンズ近距離補正の効果 MAMIYA SEKOR MACRO C 140mm f4.5 : Effects of the macro lens's initial close-range aberration correction mechanism.

 

MAMIYA SEKOR MACRO C 140mm  f4.5

 マミヤの6x7 中判カメラ RB67用の交換レンズ、1975年発売の第2世代セコールCシリーズ。マクロレンズである。

140mmは短めの中望遠で、35mm換算 70mm。モノ撮りなどにパースが自然で使いやすい焦点距離だ。マミヤRB67は、フォーカス調整がレンズではなくボディについているので、マクロといっても特別に寄れるわけではない。描写力が近距離対応していることが「マクロ」である。

SEKOR MACRO C 140mm  には、

1975年当時、画期的だった近距離収差補正機構が組み込まれている。

140mmという長焦点で無限遠から1倍を超える撮影まで、マクロ撮影に影響の大きな像面湾曲、歪曲収差、色収差などを抑え込むには、距離による収差変動を補正する機構が必要だったのだろう。



レンズ構成は分厚いガウスタイプ。張り合わせレンズを多用した重厚な構成だ。
近距離収差補正用のリングを回すと、3群のレンズが近距離時は後ろ側に動き、ガウス構成の特徴的な向かい合ったメニスカスレンズ間距離を調整する。4群目も分厚い張り合わせレンズなのは収差変動を抑えるためだろう。

近代ではマクロに近距離収差補正が組み込まれるのが一般的になったが、35mmフィルムの望遠マクロでは同じ1975年のVivitar Series 1 90mm F2.5 Macroが最初のようだ。有名なタムロン90mmマクロは、その影響で開発されたレンズで、1979年に発売されている。
これらの近距離補正は、前側のガウス構成部を繰り出して、後ろ側の補正部がそのまま動かない構成なので、セコールとは設計コンセプトが違う。

標準マクロの近距離収差補正は1973年のオリンパス ズイコー50mm f3.5が世界初をうたっている。レンズ構成を見てみるとクセノター構成の後ろ側の薄いメニスカスレンズを調整している。セコールと同じコンセプトなので、このレンズを参考にしたのではないだろうか。


RB67はスタジオ撮影が中心で、小型軽量化は考えていない。レンズは描写優先で重い。そんなセコールらしい独特な重厚構成が気になって、巨大なレンズを(曇りジャンクで)手に入れた。

レンズは分解して曇りをとる。微妙な曇りは残ったが、ほぼ問題ないはずだ。


近距離補正用の独自リングがある。フォーカスと別に操作が必要で、面倒ではある。
でもどのように補正されるのか、面白そうだ。


中判カメラは持っていないので、大きなマウントアダプターを付けて、35mmフルサイズで撮影する。67判の中心部をクロップすることになる。レンズは巨大で800g(+アダプター340g)の重さがあり、焦点距離140mmは結構な望遠だ。


67判は35mmフィルム(135)の4.47倍の大きさがある

撮影は通常に加えて、近距離補正リングの操作が発生する。もっとも重量級なので、のんびりとしか撮影できない。
まずはマクロらしく、紫陽花を撮ってみる。

開放f4.5 近距離補正:無限遠位置 描写は思ったよりも甘い。

開放f4.5 近距離補正:適正
近距離補正は適正なのだが、フレアがかって甘めの描写だ。

開放f4.5 近距離補正:過剰補正
補正が適正でなければ、さらにフレアがかる。ふわっとしてフォーカスのピーキングもでない。

開放f5.6 近距離補正:適正
絞るとシャープになってくるが、f5.6だとまだ少し甘い。

開放f8 近距離補正:適正
f8まで絞ると、やっとシャープになる。本来は絞って使うレンズなのだろう。



開放f4.5 ハイライトはフレアーがかかって甘くなるが、色収差は少ない。背景ボケはエッジがあってクセがある。


f5.6 シャープになるが、やはりボケにクセがある。










このMAMIYA  RB67のフォーカスはカメラについているので、マクロといっても特に寄れるわけではない。中間リングを使う。近距離補正は1倍を超える大クローズアップまで対応している。
それはヘリコイド付きのマウントアダプターも同様で、中間リングを使った撮影もしてみた。 






近距離の描写は良い感じです。基本は近距離用のマクロレンズなのでしょう。



中遠距離は絞らないと、思ったよりも甘い描写でした。デジカメだとピーキングがでにくく、拡大してもフレアーがかってフォーカスが合わせにくい。
とはいえ、f5.6できればf8まで絞れば、シャープな描写になります。
マウントアダプターでクロップ撮影しているので、開発時の想定よりも解像力が要求されているというのもあります。
また中距離で撮ると、ボケのエッジが強くでて、ボケに癖がでます。


近距離ならば問題ありません。背景は大ボケするので気にはならなくなり、描写自体も悪くありません。近距離収差補正が特徴的なレンズですが、効果は限定的のようで、万能ではないようです。文字通りの近距離用のマクロレンズだったようです。




前回使ったRB67用の SEKOR 127mmは、キレがある重厚な描写が楽しめましたが、
今回のSEKOR 140mm MACRO C は使うシーンが限定的です。
67判の大きなサイズで使いやすいレンズなのでしょう。面積1/4しかない35mmデジカメでは良さがわかりにくく、使いどころが難しい印象でした。







































MAMIYA SEKOR 127mm f3.8 : 重厚な性能 / The Heavy and solid descriptive lens.

 

究極の3群レンズ

1970年発売のプロ用中判機 MAMIYA RB67の標準レンズは127mm f3.8、35ミリ換算63mmと長めである。それはこのカメラはスタジオ撮影がメインで、ポートレートや製品の精緻な写真が目的であり、パースのつきにくい長めのレンズが好まれたためと思われる。

レンズ構成は3群5枚のシンプルなものだが、その構成は独特であり、マミヤとライカでしか使われなかった特徴的なものだ。(たぶん)

MAMIYA SEKOR 127mm f3.8

吉田正太郎氏による名著「写真レンズの科学」には、ライカによるこの構成のパテント(1960年)が高性能な新世代レンズとして載っている。
同じ構成はライカELMARIT 90mm f2.8(1958)で発売されているが、じつはマミヤからは1956年の35II と Mamiyaflex C にもこの構成は使われている。(さてパテントの関係はいかに、、、)

そして1970年に中判機 MAMIYA 67 と交換レンズが発売され、標準レンズがこのSEKOR 127mm f3.8であった。

1970年のカタログより 127mmレンズがついている

このレンズは高性能標準レンズとして、1990年まで長く販売された。
(1990年にモデルチェンジした新型は、近距離撮影時の画質とボケの改善を目的に一般的なガウス構成になった。)



コントラストのしっかりしたマミヤ・セコールは大好きだが、デカくて重いレンズは好きではない。でも調べてみるとRB67のレンズはたくさん売れたようで、結構安い。さらに安いジャンクのカビ玉を手に入れた。

分解清掃

カビているのは後ろ側。後ろ側の後群ユニットは回せば取れるのだが、緩め留めが処置してあって、回すのは簡単ではない。いつものゴムオープナーでは空回りする。サイズの合うテーブルゴム脚を買ってきて力を入れて緩めた。
分解できればレンズのカビ清掃。カビの酷いところは漂白剤でクリアにした。

分解してみて、分厚いレンズが重厚な写りを予感させる。



それにしてもでかいレンズだ。同じ構成の  Mamiya 35II  SEKOR 5cm f2.8  と並べてみる。
重さも760gある。

このレンズをデジタルで撮影したい。
本来は6x7判に近いデジタルセンサーカメラが良いのだけど持っていない。6x7判は35mmフルサイズに比べて4.5倍の面積がある。中心部分しか写らないけど、仕方がない。


自作のマウントアダプター(これもでかい。制作方法はこちら)で、ソニーa7につける。

見た目はでかいが、目盛りがいっぱいあって、結構かっこいいレンズだ。


レンズとアダプターで1.1㎏

いつもの公園にはもっと重いレンズを持った方々がいるけど、私にとっては過去最高に重くて大きなレンズだ。
気軽なスナップショットではなく、もう少し落ち着いた撮影になる。



フォーカス部は、質感もあって良い描写だが、軸上色収差のフリンジがでている。
フィルム用のレンズを、デジタルセンサーで、しかも部分拡大しているのだから仕方がない。想定よりも解像力が求められてしまうのだ。




描写はコントラストよく、質感、立体感がある。
重いレンズを使っていることもあって(?)写りに重厚感がある。と思った。







近距離でのボケはいい感じだと思う。(中距離だとうるさくなる時がある)






ブラシーボ。

第一印象は、重厚な写りだと思った。きっとレンズが重いことも影響しているのだろう。


しっかりとしたコントラストがあり、立体的あるし、質感もある。だから重さの印象と合わせて重厚と感じるのだろう。

いつもは、35ミリフルサイズで100mm超えると「長すぎる」と感じることが多いが、今回、重いレンズを丁寧にじっくりと撮影していると、なぜかそれほど気にならない。

「重い」というのも、ひとつの性能なのだろう。



※画面の4隅が暗くなっていますが、アダプターで少し蹴られているようです。


マウントアダプターの製作はこちら

 

マウントアダプター、史上最大の作戦 ( MAMIYA RB67 - SONY E ) Create The Longest Mount Adapter

 rb67 マウントアダプター


MAMIYA RB67 - E マウントアダプター製作

RB67用のSEKOR レンズを撮ってみたくなって、マウントアダプターを作ることにした。

https://en.wikipedia.org/wiki/Mamiya_RB67


MAMIYA RB67は大柄な6×7判一眼レフで、縦位置対応が特徴。ファインダーは7×7cmの範囲が見える。そのためのミラーが長大になって、カメラ内に大きなミラースペースが必要になっている。

RB67マウントは、最もフィルムから遠いマウントであり、フランジバックは112mmもあるらしい。したがってマウントアダプターは最大になる。実際には市販品もあるようだが、高価だし作ったほうが楽しめる。

このマウントとフランジバックの短い現代のミラーレス、ソニーEマウント(フランジバック18mm)をアダプターで繋ぐ。計算では112-18=94mmの長さになる。


強度とヘリコイドが必要

RB67はレンズも巨大だがマウントも巨大、外径が80mmを超える。レンズが重くて強度が必要なことを考えると、マウントアダプターは金属構造+ボルト結合でつくりたい。


RB67の特徴に、カメラのフォーカス用蛇腹がある。つまり、レンズにフォーカスヘリコイドがない。だからマウントアダプターで対応する必要がある。

アダプター側のフォーカス用ヘリコイドも強度が必要だ。ジャンクレンズを見繕って、昔のヘリコイド付きのテレコンバーターを改造することにした。

Kenko Macro TELEPLUS MC7 : テレコンバーターにヘリコイドをつけたアイデア製品。今使っている中華製のM42中間ヘリコイドリングよりも頑丈で、レンズなどの中身を抜けば、内径も広そうだ。

RB67マウント側は中間リング、結合してマウントアダプターにする。


まずRB67マウント側の中間リングから。タフなつくりだが、これもやたらと重い。中間リング内の中身、レバー連動を外す。

中身のメカを抜いて軽く、レンズのピン押しレバーを削除して、シャッターが開放状態になるようにする。


カメラ側のテレコンも中身をぬいて口径を大きくする。もともとのKマウントを外して、Eマウント(格安の中間リングから外した)をネジ留めする。

中間リングとテレコンをつなぐ。外径の大きく違う二つのパーツを繋ぐのは改造したステップアップリング。薄いアルミ製なので、プラスチック接着で補強しながら寸法の調整もおこなう。ここの強度が一番重要になる。


こんな感じで仮組して試写。撮ってみると無限遠がでない。
標準127mmレンズで無限遠調整するとマウントアダプターの長さは90mm。

RB67マウントのフランジバックは108mmかも

RB67のフォーカスは蛇腹なので、マウントの仕様は厳密ではないのかもしれない。私のもってるレンズでは、RB67マウントのフランジバックは108mmだと思う。



そのままだと絞りは開放で、絞り込みレバーを操作しないと絞りは動かない。絞り込み用にレバーを固定するパーツを追加した。




完成したマウントアダプターは長さ90mm(RB67フランジバック108mm-Eマウントフランジバック18mm)
重さは340gほどになった。標準レンズ127mm f3.8  が760gなので、組み合わせると1.1㎏

それなりにしっかりとできたが、レンズを支えないとヘリコイドはスムーズには動かない。
なかなか重いのである。


搭載したヘリコイドは18mmくらいのストロークで、1mくらいまで寄れる。
これで、RB67のレンズで撮影できる。でかくて重いけど。


MAMIYA RB67 - SONY E mount adapter