フイルムコンパクトカメラの名機リコーR1のレンズと、デジタルセンサーの相性について実験してみた。
このリコーR1など、フィルム時代のコンパクトカメラのレンズ構成には、3枚レンズのトリプレット+最後尾の大きな曲率の凹レンズ のように組み合わせたモノがある。凹レンズの目的は広角レンズにも関わらずテレフォト構成にしてレンズ全長をコンパクトにすることと、トリプレットの欠点である像面湾曲を修正することだと思う。
RICOH R1のレンズ構成 隙間にワイコンが挿入される
デジカメのセンサー前にある厚いフィルターもおなじような像面湾曲の修正効果がある。それはフィルムカメラには無かったものだ。
この最後尾の凹レンズを外したら何が起きるだろうか?
前側のトリプレットから離れたところに最後尾の凹レンズがあることから、前側のトリプレットだけでも描写は成立しているはずだ。
曲率の大きなメニスカス凹レンズに対してデジタルセンサー用平板フィルターが来ることになる。像面湾曲の修正量はわからないが、修正方向は同じだ。
テレフォトにするための最後尾の凹レンズは、テレコンバーターと同じだから、イメージサークルの拡大も担っている。凹レンズを外したレンズは焦点距離が短くなり、イメージサークルも小さくなる。
今回この実験を、RICOH R1 (1994年製) 30mm f3.5 のレンズで行う。すでにソニーa用に改造して撮影済みである。レンズはデジタル相性が悪く、描写では周辺部が劣化した。
もともとのR1は内部にワイドコンバーターレンズを持ち、切り替えできたのが特徴である。その場合24mmの超広角にすることができたが、24㎜の時の画質はよくないようで、周辺を使わないパノラマモードに限定している。とはいえワイコン24㎜を成り立たせるために、フルサイズ30㎜よりも広い画角を持つレンズとして設計しているはずだ。
https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/ricoh-filmcamera/cameralist/R1.html
再改造で最後尾の凹レンズを外すと、35㎜フルサイズは無理でも、APSミラーレス用の広角レンズとして使えるかもしれない。
まずは外す前、オリジナル30mm f8相当。周辺の描写はあやしいが、フィルム撮影の評判は悪くなかった。デジタルセンサーの相性が悪いのだろう。
さあ実験、一番うしろの曲率の大きなプラスチックレンズを外してみる。はたしてどうなるか?
描写は広角になり、イメージサークルはかなり小さくなった。中央の描写はかなりいいが、周辺部は悪化している。実験は成功とは言えない。
レンズは18mmくらいになっていて、APS用と考えるとこの焦点距離のパンケーキレンズは貴重だ。とにかくAPSサイズのデジカメで撮ってみよう。
レンズはm42マウントに埋もれるように設置、薄いヘリコイドアダプターでフォーカスする。カメラはAPSミラーレスだが古い機種だ。AFを使わないのなら古くてもたいした問題はない。
隅の描写は甘く、色被りもある。しかし激しい周辺減光がその2つをなんとなく目立たなくしてはいる。小さく軽いAPSミラーレスにパンケーキレンズ、撮影は楽しい。
近距離の被写体をアップにすると、酷さが目につかなくなる。
遠景では周辺描写の悪さは目立つ。
レンズを一枚外すという荒っぽい実験でしたが、やはりうまくは行きませんでした。
ただその結果得られた18mm相当のAPS用レンズですが、撮影はとても楽しめました。
おもしろいものですね。
追記 周辺画質を少し良くするために、絞りをf11相当まで小さくしました。実際の絞り径は1.7mmくらいです。これ以上絞ると小絞りぼけになりそうです。
周辺減光と色かぶりは相変わらずひどいですが、周辺画質は少し良くなりました。
周辺減光は個性だと思うと楽しめます。レンズはとてもちいさく、APSの小さなボディと組み合わせると持ち運びも苦になりません。
今回のレンズ改造は、あわよくば画像が改善できるかも、とかんがえましたが、やはりそんなことはなく画像は悪化しました。レンズを一枚外すという暴挙の割には悪化しなかった、という感じでしょうか。
そこそこ写ったことにより、撮影は楽しくできました。改造によってたのしい「トイレンズ」ができたというのが結論です。
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