ベス単フード外し、写真界に伝わる伝説の外道技です。100年前の安価なベストセラーカメラ、ベストポケットコダック( VPK )のレンズを改造して、ソフトフォーカスのユルフワ写真を撮る技です。この(外道)技はVPK発売当時からあり、その後も何回か流行しました。砂丘の写真で有名な植田正治さん ( 鳥取県に美術館がある。行ってみたい ) にも作品があり、とてもカッコいい写真です。
ベス単というのはVPKに搭載されている1群2枚のメニスカスレンズで、2枚のレンズが1群に接着されているので単玉、ということです。シンプルなレンズ構成で収差を防ぐためにf11というスローなレンズですが、レンズ自体は2回りほど大きく、10mmほど離れた前側に絞りがあり、それによってf11になっています。この絞りの距離も光学的に重要であり、絞りも重要な光学要素であることがわかります。
ベス単フード外しは、初代VPK(1912-1926)でおこなうのが簡単であり、普通です。このmodel B(1924-1934)では、絞りがより簡単なターレット式にコストダウンされていて、絞り機能を活かして改造するには工夫が必要そうです。このレンズをオリジナルのカメラから外してデジカメに装着、「フード外し改造」もやってみましょう。
VPKからレンズを外します。ボディ裏板を外して、レンズボードの裏側からレンズを留めているリングを外します。レンズにフォーカスはないので、M42ヘリコイドアダプターにレンズを留めれば、撮影できます。M42マウントに留めるにはボディキャップに穴を開けてもいいですが、私は3Dプリンターで制作しました。次は「フード外し」です。このModel Bはターレット絞りになっていて、f11-16-22-32 が選べます。ですので、フードを外しただけでは絞りは大きくなりません。使わないf32の絞りをリューターで(力技)削って f8相当 にしてみました。逆光には弱いので、かわりの小っちゃなフードを付けました。これでVPK Model B フード外しフード付き?です。オリジナルから一絞り開いたことで、どんな「ソフトフォーカス」になるでしょうか?
f8 ソフトフォーカスになってます
f11 もともとの開放。少しソフト
f16
f22 ここまで絞るとシャープになります。
なるほど、f8では解像しつつもフレアーがあってソフト効果がでている。この芯があってその周りのフレアーがいい感じですね。そして絞るに従ってフレアーは弱くなり、クリアになっていく。
花は、白く明るいモノはフレアーの滲みが美しくていい感じに写る。この球面収差によるソフトフォーカスは、ピントの合っている被写界深度がとても深く、どこにあわせるか悩みます。フレアーが気持ちよくなるのは気持ち前ピンのところでした。
「水辺の鷺」絵画のようです。いい感じです。
夜景の点光源は、滲みによって面積をもつように写ります。よく見るとフレア円には芯がありユニークなので、使いこなしたいです。
ポートレートを撮ると、ボケもきれいですね。
VPK model B は最初のVPKとちがって、ターレット絞りなので簡単には「ベス単フード外し」ができません。ターレット絞りの一番小さいf32をリューターで削って、f8相当の大きさにして、絞り操作でソフトフォーカスを選べるようにしました。本来のレンズの開放値はf6.8なので、半絞りほど絞った状態ですが、いい感じにフレアーがかかります。外道技ですが、控えめに使うと昭和/絵画的ないい味が出て気に入りました。しばらく使ってみます。
0 件のコメント:
コメントを投稿