100年目の写真体験。VEST POCKET KODAK MODEL B : A photographic experience 100 years after the product.

 今回はおよそ100年前、1924年発売のVEST POCKET KODAK MODEL B 一般にVPKと呼ばれるカメラを取り上げます。

 折りたたむとポケットに入るコンパクトカメラで、127規格のフィルムを使った6×4.5cmの大きな画像サイズを持つ。持ってみて最初に驚くのは小さく、軽いことです。ブロニーサイズのスプリングカメラ(折りたたみ)も持っていますが、それらと比べても圧倒的に小さく軽い。

固定焦点で露出も4段階。レンズは72mm f11 メニスカスレンズ1群2枚いわゆる単玉で、凹面が表側で絞りも前側。簡単操作でよく写ったので、当時のベストセラーカメラでした。そのポケットに無理なく入るサイズは、「どこでも」写真撮影を可能にし、写真の有り様を変えたといわれています。

たとえば、当時は戦争の時代だったため、「兵士のコダック 」The soldier's Kodak といわれて戦場における写真を記録しました。そのあとから軍事機密の問題が生じて軍隊における写真が禁止されます。

1924年、世界初のエベレスト登山を目指したジョージ・マロリーは このカメラをもって登頂に挑みました。登頂の写真はその証拠となりますが、彼は下山中に遭難し、残念ながらカメラは見つかっていないため、登頂は不明です。

スペック的には固定焦点で「写ルンです」同様ですが、VPKのAUTOGRAPHIC仕様には、写真にそのままメッセージを書けるユニークな機能があります。
レンズの下側に書き込み用のスライタスペンがあります。これを取り外して、ボディ裏がわの窓を開けてフィルムの裏紙越しに書き込みます。すると映像間のスペースに、コメントを書くことができるのです。これはグッとくる機能ですが、当時はそれほど受けなかったようで、後年廃止されてしまいます。

コダックの広告から:ベティ5歳の誕生日

このカメラ用の127フィルムは入手は難しく、スライタスペンで書き込むこともできないようです。でも、このレンズでデジカメ撮影してみましょう。
カメラ裏板をはずして、裏側からレンズボードに留めているリングをまわせば、無理なく(壊さないで)レンズは外せます。固定焦点でフォーカスヘリコイドはないのでM42ヘリコイド中間リングを使います。
M42マウントに留められるようにレンズ固定用ボードを自作してソニーa7に装着しました。
先端が凹んでいるメニスカスレンズなので、微妙にレトロフォーカス気味で中間リングは長めになります。トータル61mmでちょうど無限遠が出ました。レンズの前にシャッターがありますが、Tにすると開きっぱなしになるので問題ありません。シャッターを閉じるとレンズは隠れて、レンズキャップみたいなものです。


曇天ではコントラストが低く眠い感じがします。
1群2枚のレンズなので、開放f11ではフレアーがありシャープな感じはあまりありません。
でも嫌いな描写ではないです。







天気が良くても、遠景はシャープではありませんが、フィルムみたいです。
昭和の写り、ではなく、大正13年のレンズです。





近距離は柔らかい中にも立体感もあって、いい感じに撮れます。ボケもやわらかくていいですね。


点光源のボケは、芯のまわりにフレアーが出て不思議な感じです。f11と暗いのであまりボケませんが、点光源を撮ると面白いことになりそう。

このVPK MODEL Bのレンズは、フードでf11に絞っていて、じつはf6.8の明るさがあります。1群2枚の球面単玉レンズなので、これ以上明るくすると球面収差でフレアーが出るのです。このフードを外して球面収差のフレアーがかった写真は、ポートレートでは人気があった時があり、「ベス単フード外し」と呼ばれていました。次回はその体験をしてみましょう。












0 件のコメント:

コメントを投稿