KODAK INSTAMATIC X-90 タフな高級インスタマチックのEKTARレンズ EKTAR LENS 38mm f2.8

インスタマチックの Kodak Ektar レンズをレポートする。

昔、アナログフィルムにインスタマチック(126)という規格があった。

1960年代、写真が一般化してニーズが広がった。そこで問題になったのが35mmフィルムの装填が難しかったこと。これは致命的な問題で、失敗するとなにも写らない。このフィルム装填ミスをなくすことを目的に生まれたのがインスタマチック(126フィルム)である。

1963年に発表されたこのフィルムは、光の遮光や枚数カウンター、巻取り機構をフィルムカートリッジ側に持たせることで、ミスのない簡単なフィルム装填を実現、さらにカメラ構造の簡略化にもつながった。中身のフィルムは35mmと同じ幅だが、送り用のパーフォレーションの穴を片側だけにすることで28mm×28mmのスクエアな画像面積がある。なぜ長方形の35mmフィルムと違う正方形にしたのだろうか。当時まだ6×6のブローニー版が保守的なユーザーに使われていて、その代替えを意識したらしい。とはいえ特徴的な正方形フォーマットは気楽で楽しい写真のシンボルになり、ポラロイドそしてインスタグラムへと繋がっていく。


インスタマチックは1960年代大ヒットしたが、1970年代になると日本製カメラが得意のカラクリで35mmフィルムの弱点だった装填問題を克服する。すると今度はインスタグラムの弱点、カートリッジが大きくかさばりコストも高いこと、フィルム平面性が悪く画質が悪くなりやすいことが目立つようになった。こうして1970年代の終わりとともにインスタマチックも終了する。



このKODAK INSTAMATIC X-90は、当初よりシリーズ化されていたインスタマチックの高級版(1970年製)で、素晴らしいレンジファインダーと高性能レンズをもつ。高性能だけど簡単操作という価値で裕福な高齢者をターゲットにしていたようだ。アメリカのコダック自社工場製のEKTARレンズは3群4枚のテッサー構成で、しかも放射能酸化トリウム配合の高性能ガラスを使っている。酸化トリウムは光学ガラスに配合すると特殊な光学性能を発揮して、高性能だ。しかし放射線を発する放射能物質であり、製品になって弱められた状態では健康被害はないが、現在でもレンズメーカーで光学素材のデッドストックで見つかるとそれなりに問題になる。

しかしこのカメラのデザインは個性的だ。他に似ていないアナザーワールド感がある。フレームとなる金属ボディの構成が複雑で、不思議な2段フォルムになっている。いわゆるインスタマチックの気軽さはなく、タフで無骨で、ゼンマイ巻きあげもあってひどく重い。タフな魅力はアメリカ製品らしいと思うが、気軽さのないインスタマチックというコンセプトは、今となっては魅力が半減している。興味でいえば、カメラよりも放射能を発するEKTARレンズの実力が知りたい。


レンズを外した後のフレームとレンズボード。電池の液漏れがあって、なかなか汚い。
気がつかなったが、レンズをみるとクモリがある。レンズの張り合わせ面が曇るバルサムぎれのようだ。どう写るか、、、まあ3Dプリンターで鏡胴を造って実験してみよう。


誇らしげなKODAK EKTAR LENS。残念ながら曇っている、、、、

インスタマチック126に必要なイメージサークルは35mmフルサイズよりも僅かに小さいため、遠景だと4隅が蹴られる。f5.6

f5.6   4隅を除けば、きちんと解像していている。やっぱり曇りの影響は大きい。立体感もあるのだけど、それよりも盛大なフレアーが気になる。

f2.8開放。中央は良いが、周辺は流れて減光して良い描写ではない。



フレアーで遊ぶのなら楽しめる。

とはいえバルサムぎれの曇りからくるフレアーがひどく、残念ながら実用的ではないコンディションだった。
インスタグラム126用のレンズだが、35mmフルサイズでギリ使えるか使えないか、というイメージサークルだ。描写はf2.8開放では中心部しか使えないが、f5.6まで絞れば良い描写になり立体感もある。

これでコンディションさえ良ければ、、、
バルサムぎれ、直せるかな?








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