味わいのあるオールドレンズ AIRES VISCOUNT / H CORAL 4.5cm F1.9 : The old lenses with tasty character.

 



アイレス写真機製作所は1950年創業で、10年後の1960年に倒産した。旧帝国陸軍の光学技術をルーツに持つ、こだわりのモノづくりメーカーだった。

ニッコールレンズ付き二眼レフの評価が高いが、1957年のAIRES 35IIICもライカのコピーっぷりで評価が高い(?)。35mmフィルムカメラのレンズは自社製のCORALで、この評価も悪くないようだ。

1950年代カメラはとても高価だったが、後半になると徐々に安くなり、広く一般に普及するようになっていく。メーカーが生き残るにはコストダウンが重要になり、凝ったメカニズムから合理的なモノづくりに変化した。

AIRES  VISCOUNT (1959年発売) は、アイレスのほぼ最後のカメラだ。時代に合わせてコストダウンされたシンプルなカメラだが、持ってみるとファインダーも見やすく重厚なつくりだ。



重く重厚なカメラだが、購入したのはかなりのジャンク品。ヘリコイドやシャッターは固着している。
さて、分解してレンズ改造しよう。

造りは重厚だが、シンプルな構造。レンズとボディは同時に組み立てたようで、レンズ前方からしか分解できない。
前レンズ、メカ部、後レンズ。ユニットになっているので分解は簡単。ヘリコイドの固着は重症で、ピクリともしない。再生するなら、しばらく溶剤付けにする必要がありそうだ。

でも再生はしないで代用品を使う。改造レンズのフォーカスは、M42マウント汎用ヘリコイド中間リングを使った方が、最短撮影距離を短くできる。

レンズ鏡胴は独特である。一般的にはレンズシャッター部がボディ取り付け部になるが、これはレンズ鏡胴が取り付け面だ。この面に3Dプリンターで、レンズ鏡胴とM42マウントを「繋ぐパーツ」を作る。






H CORAL 45mm F1.9

取扱説明書より、構成図


レンズ構成は4群6枚のガウスタイプ。
1950年代の固定式レンズシャッターカメラでは、f2クラスの大口径ガウスレンズは一般的だ。そのなかで、一番最初に登場したのがアイレスなのだ。(AIRES 35III 1955年)  

基幹部品であるレンズシャッターは汎用品で、カメラのスペックは横並びになりやすい。ライバルがより明るくf1.9になると、アイレスもライバルに合わせてf1.9に大口径化した。(AIRES 35IIIC 1957年)  
このf1.9がアイレスの中心的なレンズになり、今回のAIRES  VISCOUNT(1959年)でも使われている。


前面レンズ外径は30mmあり、f1.9にしては大きい。レンズシャッターの制約で後玉を小さくすると前玉が大きくなるようだ。
オールドレンズでは後玉が小さい方がデジタルセンサーとの相性が良くなる。さて実際にはどう写るだろうか。

f1.9開放。わずかにフレアがかるが、隅までよく写っている。1950年代後半の大口径レンズだから優秀だ。

f1.9開放。ボケは暴れる。ぐるぐる。


像面湾曲は残念ながら少しある。レンズのせいではなく、デジタルセンサーとの相性かもしれない(センサー前のフィルターが像面湾曲を発生させる)







f5.6 絞ればフレアーは消えてすっきり、安定する。






逆光だけど、思ったよりゴーストはでなかった。優秀なレンズだと思う。

f1.9開放。適度に暴れるボケが魅力的。


最後もf1.9開放で。光源にはサジタルコマフレアがみえる。
開放時のフレアがかった描写は、これが原因だろう。




H CORAL 45mm F1.9は、アイレスを代表するレンズらしく優秀でした。
優しく立体感のある描写で、隅までよく解像します。
それに対してボケは暴れやすい。それが適度な暴れ方で、なかなか味わいがあります。


レンズ銘の「CORAL」はサンゴの意味で、サンゴ宝石は日本の特産品です。鉱物宝石のシャープさはありませんが、味わいがあります。まさにそんなレンズです。
CORAL は、もともと昭和光機製造のブランドでした。
その後、アイレスに買収されて傘下になりました。
昭和光機は、優れた製品を作っていたのでしょう。1960年にアイレスが倒産した後もずっと存続していて、現在は「京セラSOC」になって先進的な光学機器を開発製造しています。
https://www.ksoc.co.jp/kaisha/history/











#レンズ改造 #改造レンズ #aires #coral #アイレス

MINOLTA DiMAGE 7i     デジタルカメラにノルタルジーを感じる。 Feeling nostalgia in the digital camera.



21世紀の始まりである2001年は、写真の主流がアナログフィルムからデジタルセンサーに移行するタイミングでもあった。


1990年代にデジタルカメラは一般化し、プロ用の超高級機も生まれている。未来はデジタルになるのが明らかだったが、趣味で使うには大型センサーのデジタル一眼レフはまだ高価すぎた。

そこでミノルタは、コストと高性能のバランスの取れた  2/3インチ500万画素センサーのハイアマチュア向けカメラを企画した。比較的小さなセンサーなら高倍率高性能ズームが大きくならず、レンズ一体型でオールラウンドに使える。ミノルタ渾身の7倍ズーム一体型高機能カメラは、伝統のエースナンバー「7」をつけて21世と同時に登場した。

しかし2001年に発売された MINOLTA DiMAGE 7にはいくつか問題があり、翌2002年DiMAGE 7i  にマイナーチェンジされた。


写真はレンズで決まる。レンズを選ぶ視点はカメラとは違う。感性を重視すると、レンズとカメラは別に選びたくなる。

だからレンズ交換可能なシステムカメラがいつの時代でも主流になる。そしてそれは高性能ズームレンズができても変わらなかった。ミノルタ渾身のレンズ一体型カメラは、残念ながら主流にはならなかった。

2003年にはより安価なデジタルシステムカメラ、CANON EOS KISS digital が発売されて流れは決まった。主流を持たないミノルタは低迷してコニカと合併。2006年にはカメラ事業をソニーへ譲渡して終了してしまった。

21世紀初頭は、エレクトロニクスの進化が従来技術を超えたターニングポイントだった。デジタルカメラだけでなく、新たにスマートフォンやハイブリッドカーが主流になる一方、それを乗り越えられない企業も多かった。


今回はそんなミノルタ最後のエース、DiMAGE 7i  (ホントの最後はDiMAGE 7Hi  だけどメモリ増加モデルで写りはほぼ同じ)を使ってみたいと思う。気合の入ったモデルにも関わらず流通価格が安いのだ。

ガチャガチャして高級感はないけど (当時15万円以上した)、ダイヤルの並ぶメカニカル感は未来感もあって悪くない。楽しみなのはレンズとセンサーだ。

・高性能ズーム。換算28-200mmの7倍で、低分散や非球面レンズを贅沢に使っている。f値も2.8-3.5と明るく、当時の評判も良かった。

・CCDセンサー。デジカメのセンサーが高コストのCCDからコスパの良いCMOSに進化したタイミングでもある。熟成されたCCDセンサーの写りはどうだろうか。



パキッとしている。よく見るとエッジには、ほんの少し色収差はある。
コントラストの効いた描写はCCDセンサーらしいのでしょう。等倍で見ると粒粒ノイズがあるのだけど、それには味を感じる。


望遠ズームすれば、背景をぼかすことができる。





CCDセンサーは白飛びしやすい。でもそれってわるいのかな。ダイナミックな立体感、空気感が写っている。







派手な色調になった。CCDセンサーの特徴でもある。



ノスタルジックなものが似合う。デジタルなのに。



撮影していて面白いのは、シャッターが連射ができないこと。一枚とると、10秒くらいブラックアウトするのだ。まるでクイックリターン以前の1950年代一眼レフである。
だからフィルムカメラのように、一枚一枚が大事だ。ちゃんと考えてからシャッターを切るのは久しぶりで新鮮である。

CCDセンサーのコントラストが高くノイズのある描写も、いい意味でノスタルジックな味になった。

今回、24年前のクラシック デジタルカメラで撮影して、ノスタルジーを感じた。デジタルもそのくらい歴史ができたのだ。それが今回の発見だった。









バッテリーについて。
古いデジカメはバッテリーが手に入らないことがあるが、単3電池を使うので問題ないはずだった。でもエネループだと持ちが悪いのだ。容量というよりも電圧の問題みたいで、1.2vだとぎりぎりのようだ。
単3型の充電リチウム(1.5v)にしたら、問題は全くなくなった。











#オールドデジカメ #DiMAGE7i

YASHICA HALF 17 / YASHINON 3.2cm f1.7 良質なクラシックレンズ A High-quality classic lens


YASHICA HALF 17 ヤシカ ハーフ17


35mmフィルムを半分にして使うハーフサイズカメラは、1959年にオリンパスPENが大ヒット、ライバル各社も追従して、1960年代の大ブームになった。

大手カメラメーカーだったヤシカは、1961年からハーフサイズカメラを展開していたが、
1964年に大口径レンズ/プログラム自動露出を備えた高機能なYASHICA HALF 17を発売、これもヒットした。
特徴はカメラ名にもなったf1.7の大口径レンズ。ライバルであるオリンパスの高機能モデルはf1.9のレンズだった(作例)
その後、高機能を強調するために モデル名に「デラックス」を追加した。



1966年にはさらに大口径f1.4レンズのYASHICA HALF 14(作例)を出してライバルを突き放すが、この頃からハーフサイズカメラのブームは下火になってる。



そんなYASHICA HALF 17 不動ジャンクカメラを手に入れた。
レンズの周りに配置されたセレン光電池のバランスが良く、丸っこいデザインが可愛い。
カメラの上部カバーが丸っこく、キラキラと光っているのがチャームポイントだ。
理由があって、硬いステンレスをプレスしているので丸くならざるを得ない。そのステンレスの輝きと丸さが宇宙的な未来感を演出している。
GKデザインの傑作である。

可愛いけどジャンク不動、でもレンズはクリアだ。
どんな写りか楽しみなので、改造してしまいましょう。



YASHINON 3.2cm f1.7
レンズは名門、富岡光学製らしい。ガウスタイプで4群6枚構成。プログラム露出のレンズシャッターが絞り兼用。2枚絞りなので歪な形が気になる。

コンパクトカメラは最短撮影距離の長さも弱点だ。このHALF 17も0.8mもある。短く改造しないと楽しめない。

いつもはフォーカスはヘリコイド中間リングをつかう改造にするが、32mmだとバックフォーカスが短く、そのスペースがない。
オリジナルのヘリコイドを改造して、回転角を増やそう。



オリジナルヘリコイドを活かしたレンズ改造では、ポイントが2つある。

1つは板状のレンズボードの切断とマウント装着。
古いコンパクトカメラのレンズは、レンズボードに乗っている。そのボードを切断してデジタル用のマウントをつける。
今回のボードは真鍮製で切断しやすいうえに、φ41.5の円形状の形状があり、それを活かして簡単にEマウントを装着できた。




2つ目が最短撮影距離の短縮。今回はヘリコイドストッパー位置を調節して直線キーのストローク限界0.4mまで短縮した。無限遠調整と合わせて、手間のかかる作業だが、これをしないと楽しく撮影できない。

今回はオリジナルデザインを活かした改造レンズになった。かっこいいのではないでしょうか。






さあ、撮影してみよう。
富岡光学製(たぶん)ガウスタイプのレンズ、どんな写りでしょうか。

開放f1.7    フレアがありつつ、周辺まで解像している。楽しそうなレンズだ。





開放f1.7  ボケは強烈な2線ボケ、バブルボケである。
絞りの形は歪んだ菱形になるので、中途半端に絞るとボケは悪い。ボカすなら絞りは開放がいい。






少し絞れば、フレアは消えて引き締まった描写になる。絞りが歪なのでボケはやはり硬い。












良質なクラシックレンズです。
APSサイズデジタルでは、焦点距離 32mmは標準レンズで使いやすい。
開放f1.7では柔らかいながらも、ちゃんと画面全体が良い描写をします。被写界深度も浅く、前後のボケも充分に楽しめます。

今回の改造もソニーEマウントにしています。分解は容易で、レンズボードを糸鋸切断して、M42-Eマウントアダプターに接着しました。この作業は順調でした。
一方、絞りを活かしたレンズシャッターの開放化と、最短撮影距離を短縮しつつ無限遠調整をするのは試行錯誤でしたが、それも楽しい工作です。


























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