HOLGAは、1982年 中国の改革開放政策で沸く香港で生まれた。もともとはカメラ用のフラッシュライトを作っていたメーカーだったが、カメラ本体にフラッシュが内蔵されるようになって(ピッカリコニカ:1975年発売) 売り上げが激減、対策として生まれたのがHOLGA「好光」カメラだ。
https://industrialhistoryhk.org/lee-creator-holga-cameras/
それまでカメラ設計はしていなかったことから、構造がシンプルにできる120ブローニーフィルムをつかって、中国本土向けに低価格なカメラを作る企画だった。しかし時代は35mmフィルムになりつつあり、販売は低迷した。
ところが低価格を売りに海外に細々と輸出しているうちに、Lo-Fiな写りがアート系フォトグラファーに評価され、一転、人気カメラになった。トイカメラというけどHOLGAはアート系カメラだとおもう。
写りは「悪い」と評判だ。
機構の信頼は低く想定外にフィルムに露光する。周辺減光が極端で、レンズのイメージサークルが6×6判に足りていないようだ。焦点距離60mmというレンズは、6×6判には広角であり、むしろ4×4cmの127フィルムの標準レンズだ。選定を間違えたのではないだろうか (想像) 。
レンズはそんな60mmメニスカス1枚レンズで、初期はプラスチック製、その後ハイグレード版としてガラス製のレンズが加わった。
ウェブの作例を見ると、中心部の描写は案外シャープで周辺部がボケている。改造して35mmフルサイズで使うと、その「案外シャープな」中心部のみを使うことになる。ならばと思い、よりシャープなガラス製レンズのHOLGA 120G、 程度の悪いジャンクを手に入れた。
カメラの構造は素晴らしくシンプルだ。DIYで作れそうであり、これで写真が撮れるのだから大したものだ。
1/100秒定速シャッター。電気コードはフラッシュ同調用。アナログで素晴らしく簡単にできている。
レンズはガラス製メニスカスの単玉1枚。直径18mm。
f8相当の固定絞りで鏡胴は作ってあるが、さらに固定絞りリングを貼ってf13に絞ってある。もともとf8で作ったがしょせん一枚の単玉レンズ、それでは描写がボケボケで、f13まで絞ることになったのだろう。
機構的に可変絞りもあるが、実際には機能しないことで有名だ。その絞りの部分にはなぜか大きな四角い穴が空いている。固定絞りをf8からf13に変更した結果、絞り機構はいらなくなったのか、それとも設計ミスか。
さて、この不思議な魅力のあるレンズを、デジタルに付けたらどうなのか、が今回のテーマだ。
改造の目標は2つある。ひとつは近接撮影ができるようにすること。これはストロークの大きなヘリコイドアダプターを使用すれば良い。
もう一つは可変絞りだ。もともとの絞りよりも開いて、ソフトフォーカスが楽しめるようにしたい。また、絞り込んで、描写の向上ができれば撮影の幅が広がる。
3Dプリンターで製作した鏡胴、絞りの部品。フランジバック調整で3回目の出力品になる。
絞りの形はいろいろ試した。結果としてf22 f13 f9.5(レンコン絞り→ソフトフォーカスレンズにあるタイプ) f8 f5.6 を設定した。
プラスチック製なので、もともとのHOLGAに負けない軽さとチープさだ。
35mmフルサイズに付けると、60mmなので長めの標準レンズとなる。HOLGAの描写は周辺部のボケと光漏れだったので、中心部を使う改造レンズは普通に写りそうだ。
改造のポイントは、ターレットで絞りを5段階切り替えられるようにしたところだ。
一枚の単玉レンズなので、絞りを開ければソフトフォーカスレンズとして楽しめるだろう。
さあ実際に撮ってみよう。
実は、HOLGAデジタル用交換レンズも売ってはいる。それを買ってくれば、そのまま撮れる。簡単かもしれないが、それではオリジナルほど楽しめないのではないか?自分で改造して試行錯誤が楽しいと思って、今回改造することにした。
オリジナルのレンズはf13。周辺減光ばかり特徴として言われている。でも、それよりも絞りを開くことによって、フルサイズセンサーで楽しめる描写があらわれた。
60mmはソフトフォーカスでも遊びやすい焦点距離で、撮りやすい。私の中ではかなりの名レンズ。HOLGAが、Lo-Fiアートカメラとして大ヒットしたのもこのレンズがあったからでしょう。
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