写真フィルム最大手だったコダックは、1996年に次世代フィルムシステムをアドバンストフォトシステム:APSとして売り出した。名前のわりに先進性のないシステムだったがコダックは本気であり、ここで紹介するADVANTIX 3700ixをはじめ10機種近いコンパクトカメラをシリーズで展開した。
APSは35mmハーフサイズとほぼ同じフィルムサイズであり、カメラが小型化できる特徴がある。ハーフサイズ同等というのは、小さすぎるわけではないので、レンズ性能が良ければ写りも悪くない。ところが、この時代はズームレンズの発展期になり、レンズはスペック重視のズームになっていく。その一方で、APSはコンパクトであることが35mmに対する優位点であり、コンパクトさも優先しなくてはならない。結果、一番重要なレンズの描写力に問題を持つカメラが多くなり、APS自体の評判をさげた。
さらに時代の主流はデジタルになり、アナログフィルムも35mm以外は売れなくなった。そして2011年にAPSフィルムは販売終了、倒産したコダックとともに幕を下ろした。
このADVANTIX3700ixのレンズは、単焦点のEKTON24mmf3.6 3群4枚のテッサー構成をもつ。このシステムの生命線はレンズ性能であることから、コダックはこだわって高性能化したと思われる。この後のADVANTIXシリーズはレンズがどんどんチープ劣化していくので、このレンズがコダックAPSでは最良だと思う。
ADVANTIX3700ixは、新システムをコンパクトにまとめきれなかったようで、35mmコンパクトカメラ並みのサイズになっている。レンズも24mmのわりには大きく、結果、描写力は期待できる。カメラを分解、レンズを取り出してヘリコイドアダプターに装着できるように改造する。
レンズはもともとf2.8相当だと思われるが、プラスチックパーツで軽く絞ってあり、f3.6のスペック。さらに後付け絞りを用意して、f5.6でも撮影できるようにした。
APSデジカメに装着すると換算35mmの広角になる。13-22mmのヘリコイドアダプター(m42‐Eマウントアダプターの厚さが+1mm)に装着しているので、10㎝くらいまで寄れて楽しい。
まずは開放で撮ってみる。シャープでコントラストがあるが周辺部はコマ収差の影響で鮮明ではなくなている。したは右上隅の拡大。
次にf5.6に絞る。コマ収差がおちついて、画面全体がシャープに写るようになる。立体感があって、濃厚な写り。同じく下は右上隅の拡大。
周辺部は色がぶりがあって、減光もする。コダックらしく色鮮やかな描写はいい感じ。
色味、コントラストがあって、良く写るが、遠景はもう少し解像してもいいかな。f5.6に絞っても、1600万画素の等倍までは解像しない。
いっぽう近距離はとても良く写る。色とコントラストがしっかりあって、立体感もある。
コダックのレンズはEKTAR銘がUSAコダック製で、写りも最高レベルである。それでこのEKTONだが、USAコダック製ではない高品質レンズにつけていたようだ。(このEKTON24mm f3.6はメキシコ製)
EKTARではないEKTONレンズだが、写りはコダックの良いところがでている。つまり色味が豊かでコントラストもしっかりあって、立体感のある濃い描写をする。このレンズならば一回り小さなAPSフィルムでも充分写ったと思う。
さいごに、EKTARは素晴らしいブランドでコダックも大事にしていたが、EKTANONとかEKTANAR、果てはEKTRA とコダック自ら付けた紛らわしいブランドが多すぎて混乱する。
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