1950年代、明るい高級レンズの構成は、ガウスとゾナータイプ2種類あった。
ゾナーは張り合わせレンズを多用してレンズをまとめ、わずか3群構成にすることで、コーティングが弱い時代でも表面反射を低減した。それによって抜けの良い、コントラストがある描写が特徴だ。
ライバル?のガウスタイプは、前後対象の構成が特徴で、収差をバランス良く補正して距離変化にも強い。ガラス素材とコーティングの技術進化が効いて、性能が大きく向上、レンズ構成の主流になった。
1950年代後半のレンズ固定レンジファインダーカメラ全盛期では、f2を超える大口径レンズのほとんどはガウスタイプになっている。
ほとんどであって全部ではない。
ひとつだけゾナー構成のレンズがあった。
WALZ 35 S-III / S-KOMINAR 4.8cm f1.9 1957年製
その構成は3枚張り合わせを2群も使った、贅沢な正統派ゾナー構成であった。
WALZは1930年代からあるブランドで、1955年から倒産する1961年までレンズ固定の35mmレンジファインダーカメラを製品化している。レンズは廉価版のf2.8と高級なf1.9の2機種あったが、
そのf1.9レンズは、1機種を除いてすべて同じゾナー構成レンズだ。
WALZというブランドがいかにゾナー構成レンズにこだわっていたかがわかる。
黄色で示した例外がWALZ 35-SVでズノー製?ガウス構成レンズである。(レビュー)
描写もよいレンズなのだが、ゾナーとはたたずまいが違う。
(左が WALZ35 S-III ゾナー構成レンズ、右がWALZ35 S-V ガウス構成レンズ)
このコンパクトさがゾナーの特徴であり、欠点でもある。
小さいことはいいことなのだけど、レンズから像面までのバックフォーカスも短い。
ミラーのある一眼レフでは致命的であり、ミラーレスに対応するレンズ改造でも難しくなる。
WALZ35シリーズのゾナーレンズは同じものと思われるので、なるべくジャンクなカメラを購入。ジャンクカメラからとレンズを分離して、レンズ改造を行う。
ヘリコイド付きでは、Eマウントでは無限遠がでない。ヘリコイドを外してヘリコイド中間リングを使うのはよくやる手だが、一番短い10-15mmのヘリコイド+1mmのEマウントアダプターでも、無限遠はでなかった。(フランジバックが2mm短いZマウントなら大丈夫だろう)
無いものは作る。3Dプリンターで、直進ヘリコイド付きのアダプターを自作した。
3Dプリンターでは、ヘリコイドのしっとりした動きが出せるほどの精度はでない。
ヘリコイドを組み合わせて、水をかけながら「すり合わせ」をして精度をだした。
なかなか疲れる工作でした。
実際の撮影では、どう写るのか。
開放f1.9 点光源はバブルボケになる。
f1.9開放では、描写にはフレアがかかり優しい。
開放f1.9のボケは、クセなく安定している。描写は、フォーカス面だけでなく背景ボケもクリアで立体感がある。
f5.6に絞っている。少し絞るとかっちり写る。
使った感想は、優しく上品な描写と、クリアで立体感のある描写が両立していること。
オールドレンズだとボケや周辺が暴れやすいガウス構成に対して、画面全体の落ち着いた描写はゾナー構成らしいと思った。ちょっと地味だけど上品な描写で、WALZがこだわったのもわかる気がする。
ただ現実的には、製作の難しい3枚張り合わせレンズを2群も使う構成は、「コスパの良い」日東光学にしても高コストだったと思う。
1961年のWALZの倒産とともにゾナー構成レンズはコンパクトカメラから消えた。
大口径のゾナーがコンパクトカメラに再び乗るのは、2012年からのソニーRX1シリーズであり、それが唯一のモデルでもあるようだ。




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