ROKKOR f1.4の標準レンズ。その始めと終わりを比較する。AUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4 MD ROKKOR 50mm f1.4

 1960年から80年代にかけて、オートフォーカスになる前のフィルム一眼レフカメラには、50〜58mmの単焦点レンズが標準セットになっていた。明るいレンズがつくりやすい焦点距離で、1眼レフのファインダーが見やすいことから、各社高級機にはf1.4の明るいレンズを装着していた。

MINOLTAはもともとカメラ用のブランドで、レンズはROKKOR ブランドを展開していた。ネーミングに凝ったメーカーで、MINOLTAは会社名の英語表記の略を「稔る田」と掛けたもの、ROKKOR は近くの六甲山からで、これは面白いことに回文になっている。レンズの銘板に丸く表記するのに、ロゴ表記のバランスが良くなる。

f1.4の標準レンズはメーカーの看板レンズで、カメラとセットで評価されるものだから、開発に力が入っている。実績のある画角なので、どのようによく描写するか、各社の個性もでるだろう。

ミノルタのロッコールは繊細で線の細い描写をするレンズという印象がある。その看板f1.4の大口径レンズはどうだろうか。

オールドレンズの価格は、当時の販売量で決まる。人気で数の出たロッコールの標準レンズはどれも安いが、なかでも1961年に最初出たモデルと、1979年の最後のロッコールブランドのf1.4は特に安く手に入る。名門ロッコールの看板レンズ、悪いわけがないので手に入れてみた。

最初のAUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4 これは1962年製のもの。レンズ構成は変形ガウスタイプで、5群6枚である。f1.4の標準レンズには通常は7枚のレンズが収差補正には必要。(ニコンの主張 https://www.nikon-image.com/enjoy/life/historynikkor/0049/index.html)そのため、6枚しか使用していないこのレンズは、球面収差が残り、開放ではフレアがかった写りになる。それが気持ちいいかどうかがポイントになる。

次のモデルの標準レンズも58mmで5群6枚構成(MC ROKKOR-PF 58mm 1966年)

その次が1973年のMC ROKKOR-PG 50mm でこのモデルから5群7枚構成になる。

1977年にMD ROKKOR 50mm前期型 6群7枚構成。

そして最後のROKKOR が1979年製のMD-ROKKOR 後期型 50mm f1.4。これも通常の6群7枚のレンズ構成だが、コンパクトにするために無理をしているという話もある。次の1981年のnew MDからROKKOR銘 ではなくなり、レンズはカメラと統合したMINOLTAブランドになっていく。こうしてみると70年代はレンズのモデルチェンジを頻繁におこなっている。カメラの電子化進みマウントの仕様が変わったこと、ガラス材料の変化、世界的不況などが要因なのかと思う。



最初と最後を比べてみる。
58mmと焦点距離が長い分だけ、初期型の前玉が大きい。MD後期がコンパクト、といっても全長はあまり変わらない。あとはコーティングの色の違い。古いロッコールは、緑色に光る特別なコーティングがされている。

一方、後玉は最後のMD ROKKORの方が大きい。

まずは最初のAUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4から撮影してみよう。


上が開放f1.4 下はf5.6 さすがf1.4は大口径だ。絞りでこれだけ違う写真になる。
最短撮影距離0.6mのボケはとろける感じで美しい。

これも開放f1.4 中距離でもボケは綺麗だ。全体にフレアーがかっているけど、そこそこシャープに解像している。


次に最後のロッコール MD ROKKOR 50mm f1.4

すべて開放f1.4 
近距離0.45mの描写はフレアーがかっていて甘い。中距離は逆光でコントラストが落ちているがシャープな描写だ。ボケは両方とも2線ボケの傾向があって癖がある。このくらいは嫌いではないけど。
木を撮るとボケの汚さがでてしまう


このあとは2本のレンズを比較しながら見ていこう
AUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4
コントラストは低めだけど、しっとりとした質感を感じる。

MD ROKKOR 50mm f1.4
コントラストはしっかりあって、周辺減光も強め。

AUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4


MD ROKKOR 50mm f1.4
2線ボケで、しかもコントラストが強いため、フォーカス部があまり浮き上がらない感じだ。


2本のレンズを比べてみると写りが結構ちがう。おもしろい。

わずか40年前の比較的新しいMD ROKKOR 50mm f1.4は、抜けがよくコントラストが強めでシャープだ。立体感は少なめだがその分クールに写る。ただしボケは2線ボケでコントラストも強いため汚い。ボケても存在感があり、せっかくのf1.4なのにメリハリがつきにくいのは残念だ。

比較的古い60年前のAUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4は、全体にフレアーがかっている感じでコントラストも低めだ。でもそのフレアーがうまく作用して、とろけるようにボケて綺麗な絵になる。ちょっと眠い感じもするが、しっとりとした質感が写るのは良い感じだ。

フィルム時代と違って、デジカメではモニターを見ながら仕上がりを調整するのは簡単だ。そういう視点では質感がうつる古いAUTO ROKKOR-PF 58mm f1.4の方が楽しく、ある意味、現代的とも言える。設計に限界があったからこそ、収差をコントロールして描写を作っている。オールドレンズで撮影していて楽しいのは、そこにポイントがあるのだろう。
















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