ORIKKORは、お利口なのか。PETRI 1.9 /ORIKKOR 4.5cm f1.9

フィルムカメラ創成期はレンズ製造を外注することも多く、レンズにはカメラとは別のブランドが付いていることが多かった。今回のテーマ、PETRI 1.9 のレンズはカメラと同じペトリ製だが、オリジナルブランドが付いている。ORIKKOR:オリコールである。「お利口」?とおもう。

調べてみると、ペトリのレンズブランド「ORIKKOR」の前には「ORIKON」があった。戦後すぐ、1948年のスプリングカメラPETRI のレンズからORIKON銘が使われていた。

ところで1948年というのは、日本光学(現在のニコン)最初のカメラ「NIKON 1」 がドイツZEISS IKONのCONTAXによく似たデザインでデビューした年である。ZEISS IKON に似ているNIKONというブランド名もその時につけられた。ツアイスイコンからもクレームが付いた。その問題から、ドイツではNIKONというブランドはしばらく使わず、NIKKORブランドをカメラでも(ほとぼりが冷めるまで)使ったらしい。

ペトリのORIKONは、その辺を見ながらのORION?+IKONなのだろうか。それでその後レンズのNIKKORブランドが強くなり、それでORIKKORに変えたとか?

どちらにしろお利口な感じはあまりなかったようで、オリコールブランドは1961年からカメラと同じPETRIブランドに変更になっている。

PETRI 1.9/ORIKKOR 4.5cm f1.9

このPETRI 1.9は1960年の製品。レンズ固定式レンジファインダーカメラの黄金時代が、1961年のキヤノネットの価格破壊で終わる1年前の製品だ。カメラが贅沢に作れた時代だから、レンズの写りも期待できる。ジャンクカメラからレンズを外して、デジカメ用に改造しよう。

改造は難儀した。
レンズ固定のレンズシャッター機は、ボディ後ろ側からレンズ後群の外周にあるリング(M25ネジが多い)で固定されている。このネジを緩めればレンズは外れるのだが、どうにも回らないのだ。緩みどめということで接着してあるのではないだろうか?
仕方がないので前側からレンズボードごと外して、フォーカスヘリコイドを分解。内側のヘリコイドは切断した。レンジファインダー機は最短撮影距離が遠いので、ヘリコイド中間リングをフォーカスに使う。ヘリコイド中間リングは使い回せるのでコストも掛からない。
レンズと中間リングをつなげるスペーサーパーツは、ステップアップリングを改造してもいいが、最近は3Dプリントで制作している。


レンズキャップは金属製で素敵なデザイン。この頃のPETRIはまだシャビーな安物ではない。レンズ構成は4群6枚のガウスタイプ。銘玉揃いのPETRI製だが、初期のORIKKOR 4.5cm f1.9 の写りはどうだろうか。



なかなか良い感じです。背景ボケは、ペトリらしい立体感のある特徴的なもの。ただしその個性はこの後の一眼レフ用の55mm f1.8のほうが明快だ。(スペック的にボケも大きい)
ボケも少しグルグルしている。




レンズ固定式カメラ用の明るい45mmレンズは、デジタル相性が悪い傾向があり、このレンズも像面湾曲がある。被写体と背景が近いときは要注意だ。





レンズは完全なクリアーではないが、それほど悪くもないコンディションである。だが逆光にはかなり弱い。ゴースト、フレアーが盛大に出る。レンズコーティングの性能が低いのだろう、フードはあったほうがよさそうだ。






距離によって像面湾曲が気になるが、写りはいいと思う。
特徴はペトリらしい背景のボケで、2線ボケだがフレアでマイルドになっている。ボケているのに立体感が残っていて、ちょっと不思議な質感がある。これがペトリの特徴のあるボケだと思う。
開放だと少し甘い描写になるが、一つ絞るとしっかりする。一眼レフ用の55mm f1.8に比べるとシャープさもボケの迫力も少し落ちるが、クラシックな感じもあって悪くない。
やはりペトリはレンズは一流だ。











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